「アメリア、ちゃんと全員に『クチバシ走り亀ラ』は行き届いてるんだろうね」
イルミンスール魔法学校、魔術科学専攻ベルバトス・ノーム教諭は助手のアリシア・ルードに問いかけました。アリシアは資料を片手に歩み寄ります。
「はい。スタートと同時に尾行を開始させましたが、現在まで通信の途絶えた亀はおらず、映像も鮮明です。マイクに発した音声がクチバシスピーカーから届きます」
そうかぃ、それじゃあ、とだけ言ってから、ノーム教諭はマイクに向かい語り始めました。
「参加している生徒諸君、『後半の追加ルール』を説明するからね、聞きたまぇよ。
君たちが今までに獲得したポイントだが、本陣の四方に設置した『二本のポール』の間を通過したものしかポイントは認めない事にした。と言っても初めから決まっていた事なんだけどね、くっくっくっ」
ノーム教諭に続いてアリシアもマイクを手に取ります。
「ポールは幅は10メートル、高さ10メートルです。体が完全に通った場合のみ通過したとみなします。通過した方にのみポイントを認めますので、分け合うなどの処置はポールを通る前に済ませるようにして下さい。
ただし、各ポールエリアにはチーム「絵柄兵」を配置しましたので、彼らのラインを突破して頂く必要があります。
南側……「ハートのキング」「ムーンのキング」「サニーのジャック」
北側……「ダイヤのキング」「ムーンのジャック」「サニーのキング」
西側……「クラブのキング」「ムーンのクイーン」「サニーのクイーン」
東側は関所ゲートとし、各マークの(1)(2)(3)を破棄する事を条件に通過する事を認めます。
トランプ兵には『討伐されたトランプを狙い襲う』という本能を加えますので、逃げるだけだった数字兵も素早く襲いかかってくる事が予想されます、ご注意下さい」
「後半はトランプ兵を追加するよ♪柄はサニーとムーンの計26枚。
強さは既存のトランプ兵たちと同じだが、ムーンにはアサルトカービンを、サニーには空飛ぶ箒を装備させた。時間は残り一時間弱、途中参加の諸君も存分に楽しめるだろぅねぇ、くっくっくっく」
「最後は称号についてです。今回、獲得ポイントの上位1割には『ノーム教諭の特選隊』、下位2割には『ノーム教諭のモルモット』の称号を強制的にプレゼント致します」
強制的に、という言葉にノーム教諭は笑みを深めましたが、マイクを置いて離れようと一歩を歩んだ、その時に思い出したようです。振り向いて続けました。
「そぅそぅ、ジョーカーには全てのトランプ兵の能力を備えさせた、武器も持たせた。前半に戦った者なら強さは分かるよねぇ。得点は……50点としようか」
アリシアが何か言いたそうだったが、ノーム教諭は気にせずに続けながらに両手を広げました。
「それでは諸君、検討を祈るよ。後半戦のスタートだ」