空京大学

　プロ野球のシーズンオフには、恒例となっている幾つかのイベントがあります。
　ＳＰＢ（シャンバラプロ野球）でも例外なく、それら恒例イベントが待ち受けている訳ですが、球団によってはその様相は実に様々です。
　例えば、蒼空ワルキューレの場合――。

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　ワルキューレの四番打者馬場　正子（ばんば・しょうこ）は、蒼空学園校長であると同時に、ワルキューレの共同オーナーのひとりでもある山葉　涼司（やまは・りょうじ）に呼び出され、その巨体を校長室にずいっと押し込んできました。
　対する山葉オーナーはというと、執務デスク前で何冊ものパンフレットらしき冊子を広げ、そこに視線を落としながら、渋い表情でうんうんと唸っています。
　正子が妙な顔で上から覗き込むと、そこに広げられていたのは、仕出し料理のお品書きやら、宴会用の広告パンフレットの類ばかりでした。
「……わしを呼び出した理由は、これか」
　パンフレットの一冊を手に取って、正子はふんと鼻を鳴らしました。山葉オーナーはこの時初めて面を上げ、見上げるような巨躯を誇る正子のいかつい容貌に、至極真面目な視線を送ります。
「今度の球団納会なんだがよ、どこの料理を使おうかと悩んでんだよ。お前さん、料理研究部の長なんだから、こういうのは目利きが得意だろうと思ってな」
　確かに正子は、ワルキューレの四番打者であると同時に、料理研究部鉄人組の組長でもあります。泰山包丁義なる調理拳を操ることが出来るというのはさて置き、仮にも料理研究部の長たる者が、仕出し料理の目利き程度が出来ない筈もありません。
「いっておくが、未成年にアルコールは提供出来んぞ」
「分かってるよ……って、お前さんも未成年じゃねぇか」
　どう見ても未成年には見えない正子ですが、彼女は正真正銘の１８歳。もっといえば、間違い無く女性なのですが、そうは見えないのが家庭科室七不思議のひとつでした。
　それはともかく、正子は案外この手の話には融通が利く性格らしく、山葉オーナーからの要請にも嫌な顔ひとつ見せずに、大きく頷きます。
「良かろう。わしが徹底的に味見をして廻ってやる。その代わり、来季の契約には出来高１０パーセントを上乗せしてもらおう。本来の選手の仕事から逸脱した業務まで請け負うのだからな」
「ちゃっかりしてるぜ……ま、その辺は俺からナベツネさんに掛け合って、ＯＫ貰っとくよ」
　球団納会と同じく、契約更改もまた、プロ野球シーズンオフの恒例行事のひとつです。
　成績が良ければ、来季の契約にも大幅な上乗せが見込まれ、印鑑を押した選手がほくほく顔で更改後の会見に臨むシーンがテレビのスポーツニュース等でよく見られますが、逆に然程の活躍が出来なかった選手は減俸を食らって、残念な顔で肩を落とす姿がお茶の間に流されるのも、ひとつの風物詩といって良いでしょう。
　そんな契約更改が、蒼空ワルキューレのみならず、ツァンダ・ワイヴァーンズの選手達にも待ち受けているのです。
　果たしてこの秋、球団事務所の裏側で、彼らにはどんなドラマが待ち受けているのでしょう。

　　　　　＊　＊　＊

　来季から発足する新規球団では、移籍選手に対する契約更改は実施されますが、一年間の慰労を目的とする納会はありません。
　但し、既存・新規を問わず、どの球団も契約更改と同じく、必ず実施されるイベントがあります。
　それが、秋季キャンプです。
　春季キャンプとは異なり、シーズンが終わった直後のこの時期は、少々体をいじめても来季までの回復期間がたっぷり見込まれる為、相当にシゴいてシゴいてシゴき倒されるのが通例です。
　そして若手にとっては、この秋季キャンプでどれだけレベルアップ出来るかが、来季の活躍を占う上での最大のポイントになるでしょう。
　巨大戦力を誇るヴァイシャリー・ガルガンチュアでも、その法則には例外はありません。
　ゼネラル・マネージャーのサニー・ヅラーが辣腕を発揮して大物選手を大量に獲得したとはいっても、多くの若手選手にはまだまだ、伸び代が多く残されています。
　そういった活きの良い選手達をこの秋季キャンプでどこまで伸ばせるかが、必勝を期す球団の命運を左右するといっても過言ではありません。
「しかし……まさか俺達まで呼ばれるたぁな」
　ツァンダ・ワイヴァーンズから移籍したばかりの強打者アレックス・ペタジーニは、百合園女学院付属・第三グラウンド脇のクラブハウス内で、意外そうな面持ちで窓の外を眺めます。
　その傍らには、リーグ屈指のナックルボーラーサルバトーレ・ウェイクフィールドの姿もありました。
「ま、俺達はどっちかってぇと、若手のお手本になるのを期待されての召集だろう。下手に手は抜けないだろうさ」
　その時、クラブハウスの扉が、それこそ積年の恨みを全てぶつけたのかと思わせるような物凄い力が込められて、豪快に開け放たれました。
　姿を現したのは、タキシードに蝶ネクタイといういでたちで、特徴的な七三分けの前髪を、指先揃えた右掌でさっと払い上げるような仕草を見せる珍妙な中年男性でした。
「全国８０万のヅラ愛好者の皆様、こんばんは。窓辺のマーガレット、サニー・ヅラーでございます」
　あぁ来たよ、あの親父だよ――ペタジーニとウェイクフィールドの両名は、何故かどうしようも無い程の残念な気分に襲われました。
　この後、どちらかが『すんませんでした師匠』をいわされるのだろうなぁと思うと、やるせない思いが込み上げてきてしまうのです。
　そんなふたりの滅入った顔を見てもまるでお構い無しに、サニーさんはいつもの超ハイテンションなマンボダンスを繰り出しながら、秋季キャンプの要領を彼らに説明するのでありました。

　本シナリオガイドをお読みくださり、ありがとうございます。

　またもやＳＰＢシーズンオフのお話です。
　今回は球団納会（ワルキューレ、ワイヴァーンズのみ）、契約更改、そして秋季キャンプという三つのイベントを取り扱いますので、どのイベントに顔を出すかを明記してアクションをかけて頂ければ幸いです。

　まず球団納会ですが、これはもう、ただのパーティーです。飲むなり食べるなり騒ぐなりして、日頃の鬱憤……いやいや、思いのたけを吐露して頂ければと思います。
　次に契約更改ですが、これは単純に雰囲気を体験して頂くだけとなります。実際の報酬はノーマルシナリオに適用される額が参加者全員にシステム上で支払われますので、プロ野球の悲喜こもごもな展開をアクションとして考えて頂ければと思います。
　最後に秋季キャンプですが、今回はいつもの『普通の野球』に拘るつもりはありません。あくまで練習ですので、コントラクターとしてのスキルを存分に発揮して練習に応用して頂いても、全く問題ございません。血反吐を吐くぐらいの勢いで練習に没頭して頂ければと思います。

　そして今回、選手として本シナリオに参加頂ける方々は、自動的に秋季キャンプを全うしたという扱いに致します。
　通常であれば、参加する度に配布されるスキルポイントは１シナリオ当たり５ポイントですが、今回は徹底的にシゴいたという扱いで、選手おひとり様当たり、１５ポイントずつ割り振られます。
　どういったスキルがあるのかを改めておさらいしますので、どこにどう割り振るかじっくりお考え頂き、来季に向けてのレベルアップを図って頂ければ宜しいかと。

――　ＳＰＢローカルルール（選手用）　――
１．ＳＰＢ所属選手は、ポジション毎の個人パラメータを持ちます。
２．ＳＰＢシナリオに参加すると、所有する個人パラメータのうち、※マークのついた
　　項目は全て１ずつ上昇します。
　　※のついていないパラメータは下記３．のスキルポイントで意図的に伸ばさないと、値は増えません。
　　球種は１ポイント＝１球種となります。
　　既にトライアウトのリアクション中で描写された球種は、あくまでもアマチュアレベルであり、
　　プロ相手に通用するレベルに磨きをかける為には、この球種パラメータで１球種ずつ習得していく
　　必要があります。勿論、直球（ストレート）の習得にも１ポイントが必要です。
３．ＳＰＢシナリオ参加時に、各ＭＣ／ＬＣはスキルポイントを５点与えられます。
　　（今回は例外的に１５点です）
　　このスキルポイントを好きなパラメータに割り振る事が出来ます。
　　ひとつのパラメータに集中させても良いし、複数のパラメータに割り振っても結構です。

個人パラメータ（／で区切られたものは、ポイント使用時も含め、どれかひとつだけが伸びます）
■野手
・打撃（バットコントロール：引っ張り／センター返し／おっつけ）
・打撃（犠打）
・打撃（選球眼）※
・打撃（長打力）
・守備（一塁／二塁／三塁／遊撃）※
　　自動的に成長するのは、トライアウト時及び個別入団テスト時の宣言守備位置、もしくはチーム事情で
　　コンバートされた守備位置。
・守備（左翼／中堅／右翼）※
　　自動的に成長するのは、トライアウト時及び個別入団テスト時の宣言守備位置、もしくはチーム事情で
　　コンバートされた守備位置。
・走塁　※
・盗塁
・肩強度

■捕手
・打撃（バットコントロール：引っ張り／センター返し／おっつけ）※
・打撃（犠打）※
・打撃（選球眼）※
・打撃（長打力）
・守備（捕手）※
・守備（一塁／二塁／三塁／遊撃）
・守備（左翼／中堅／右翼）
・走塁
・盗塁
・肩強度
・リード（投手中心／相手打者中心／状況判断）

■投手
・肩強度
・球種
・球速
・球威　※
・クイックモーション
・守備（投手）※
・スタミナ
・打撃（バットコントロール）
・打撃（犠打）
・打撃（選球眼）※
・打撃（長打力）
・走塁
・盗塁
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　それでは、ご参加を検討頂ける皆様からの、今回もサニーさんに負けないぐらいハイテンションなアクションをお待ちしております。

・契約更改に選手・球団スタッフとして臨む。

・球団納会に参加する。

・秋季キャンプに参加する。