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【黒史病】記憶螺旋の巫女たち

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【黒史病】記憶螺旋の巫女たち

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シナリオガイド

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シナリオ名:【黒史病】記憶螺旋の巫女たち / 担当マスター: 有沢楓花



■ご注意■
 このシナリオはPCやNPCだと思い込んでいる一般人でプレイするシナリオです。
 マスターコメントをご覧の上、ご参加ください。



本当に、本当に突然に。
視界に入った瞬間、僕の目は君に惹きつけられた。
だって、見えた──ううん、「思い出した」んだ。

ただのクラスメイトの君の、おはようの挨拶の向こうには、満面の笑顔の、ローブをまとった君がいて。
僕はかつて君の従者で、僕は君を愛し、それを口にできずにいた。
君はけれど彼を愛し、部族を裏切って彼と共に逃げ。
君が持って行った部族の宝を、僕は君の亡骸と共に取り返した。
この手を、血に染めて。
そして最後には、握った剣を、今度は自身に突き立ててひとつになって。

でも。
今、僕は君と同じ女性になって、この百合園で出会った。

──蘇る「前世」の記憶。今、僕は君に何を想う──?






 ──地球、新百合ヶ丘、百合園女学院。
「今後ともよろしくお願いいたしますわね。それでは、失礼いたしますわ」
 校門でにこやかに挨拶をし、アナスタシア・ヤグディン(あなすたしあ・やぐでぃん)は踵を返します。
 スーツケースを転がしながら向かう先は、新百合ヶ丘駅です。
 パラミタ校の新生徒会長として、アナスタシアは丁度、百合園本校の挨拶兼視察を終えたところでした。
「村上さんは、もともとこちらに通われていたんですのよね? 懐かしいのではなくて?」
 アナスタシアは、隣を歩く百合園の生徒達の一人──生徒会会計の村上 琴理(むらかみ・ことり)に問いかけます。
「そうですね。普通の学生だった頃を思い出します」
「ではもっと『普通の学生』らしいイベントが必要ですかしらね。契約者の方たちだって体育祭や文化祭を楽しみたいでしょうし。
 そうそう、文化祭……といえば、似ているものですと、過日の万博は大変興味深いものでしたわね。お土産もいただいて……あら?」
「どうかしたんですか?」
「忘れ物をしたみたいですわ。先に駅で待っていて下さる?」
「道分かりますか? 私も一緒に行きましょうか」
 琴理は言ってから、尋ねたことを後悔しました。
「貴方の手助けは要りませんわよ。会長たるもの、これくらいできないでどうしますの?」
 新百合どころか日本、いや地球を訪れたのも初めての──それも生粋のお嬢様が、道に迷わないわけがないのです。同時に、彼女が強がるのも想定内でした。
「いいですか、ここをまっすぐ行って次の角を右に曲がって、三つ目を左に行って、すぐですから」
「お節介は結構ですわよ。では、駅でお会いしましょう」
 颯爽と歩き出すアナスタシアが角を曲がるのを見送って。
 琴理は他の生徒に駅まで行くように告げてから、彼女は、こっそりと後を付いていくことにしました。
 無事アナスタシアが百合園に入り、校門から出てくるのを見える位置で、電柱に姿を隠します。
「……これじゃ不審者みたい……何で母校でこんな真似を……」
 ですが。その日……いくら待てどもアナスタシアは出てきませんでした。駅で待つ生徒に尋ねても、まだ来ていないとのこと。
 学校に戻って、校内を迷っていないか聞いてみれば、既に校門を出たとのこと。そう、正門ではなく、裏門を通る姿を見た生徒がいたのです。
 途方に暮れそうになる琴理の耳に、その時携帯の着信音が届きました。



 一方、アナスタシア。
(物事は表面だけで作られていませんわ。裏口を見るのも勉強、ですわよね。それに……壁伝いに行けば迷わないですわ)
 彼女は考え事をしながら裏門を出たところで、突如話しかけられました。
「──遂に見つけたわ、ユーフォルビア」
 アナスタシアは一度はその声を無視しました。何故なら、自分が呼ばれているとは夢にも思わなかったからです。
 けれど彼女は──百合園の制服を着た、髪の長い少女はアナスタシアの前に回り込んで立ちふさがったのです。

「ユーフォルビア、宮廷魔術師の使命を忘れたの? 一緒に復活した魔王と戦いましょう!!」

 目が合いました。彼女は、うつろな目をしていました。
「私は歌巫女のヤリスカ。共に蒼角殿で巫女王にお仕えしていたわね」
「……? 私はそんな名前ではありませんわ」
 否定するアナスタシアに、ヤリスカと名乗った少女はすいっと近づきます。
「私も最初はそう思ったわ。信じられないのも無理ないわ。
 でも今私たち王国の戦乱を駆け抜けた者は確実に共鳴して──『前世の記憶』と力に目覚めているのよ。私はあなたと同じものを感じるの」

「そんなこと私は感じていませんわ」
「このままじゃ危険なの! 王国の戦乱を駆け抜けた者って言ったでしょう。王国側だけじゃない、魔王軍だって、いえ、魔王の目覚め──魔王軍の復活を感じ取ったからこそ、巫女王や騎士、魔術師らが、魔王に封じられていた記憶を何とか目覚めさせつつあるんだわ」
 一歩下がるアナスタシア。身の危険を何となく感じましたが、ヤリスカ(仮)がアナスタシアの腕を掴みました。なお、(仮)なのは、彼女がどこからどう見ても日本人だからです。
 その時、毅然とした声が割って入りました。
「やめろ」
 ほっとしかけるアナスタシアでしたが──制した方。ヤリスカの脇から現れた、こちらもどこからどう見ても日本人のショートカットの少女も、また変なことを口走りました。

「やめろヤリスカ。彼女はまだ、記憶が完全ではないんだ。もしかしたら僕のせいかも……いや、思い出したら僕を恨むだろうな」
「そんなことないわ。あなたは蒼角殿を守るという、ブレイドの使命を果たしただけ。ユーフォルビアだって最期には許してくれたのでしょう?
 そもそも、彼女が魔族などにたぶらかされて秘宝を持ち出さなければこんなことには……」


 アナスタシアは二人が言い合い、腕を掴む力が緩んだところを振り払い、踵を返して逃げ出しました。
「あっ!」「待て!」
(……何が起こっているのか分かりませんけれど、身の危険を感じますわ!)
 走って逃げ出したアナスタシアでしたが、正門の方に行こうとして、再び少年に立ちふさがられました。
 しかも今度は見るからに怪しげな、木の杖──100円くらいで買える工作用の木材──を振りかざし、ローブ──ぺらぺらの布を適当に縫い合わせた何か──を着ています。

「見付けたぞ夜の魔術師ユーフォルビア。そなたは巫女王には渡さぬ。そなたの抱える魔術ごと、再び魔王様の、我らが軍門に下って貰おう!」

「な、なんですのあの方たちは……!」
 アナスタシアは方向を急転換し、見知らぬ路地へと入っていきました。
 待ってユーフォルビア、魔術師を逃がすな、そんな声を背後に鬼ごっこを続け……。
「は、はぁ。こ、ここなら安全ですわ……」
 そこは人気のない裏路地でした。彼女は雑居ビルに飛び込んで扉を閉め、鍵をかけました。
「こうなっては仕方ありませんわ。む、村上さんに……」
 携帯電話を取り出して、震える指でボタンを押します。
「──もしもし、村上さん? 私ですわ。あの、今突然変な名前で、ユーフォルビアとか呼ばれて……あの、変な人たちに追われて、隠れてますの」
『今どこにいるんですか?』
「分かりませんわ。だってとにかく逃げたかったですし……そもそも初めて来たのに、分かると思いまして?」
「何で偉そうなんですか。いいですか、外に出て建物や、番地の表示を見てください。今から迎えに……」
「──あっ」
『どうしたんですか!?』
「足音が外でしますわ。それにバッテリーが切れそうですわ。後はメールしますわね」
 バタバタという足音と、聞き覚えのある声が薄い扉ごしにします。
 アナスタシアは携帯を切ると薄暗い中光が漏れないように抱え込むと、息をひそめて暗闇へじりじりと移動しました。
 そして──鈍い感触。
「あっ」
 アナスタシアの脚は誰かにぶつかりました。
 年の頃なら十歳くらいでしょうか。それは長い黒髪の、黒ずくめの少女です。
(……地球ではない、パラミタの住人みたいですけど……どこかで見たかしら……? もしかしたらこの方も被害者なのではないかしら?)
 彼女は暗がりで一人うずくまって、細い光を頼りに、一冊の分厚い本をもくもくと読んでいました。
「あの……」
 アナスタシアは勇気を出して彼女に話しかけました。




 結局その日の夕方になるまで、アナスタシアの姿は見当たりませんでした。
「……そうか、それは困った、ね」
 宿泊していたホテルのロビーで、生徒と共に琴理の報告を受けた桜井静香(さくらい・しずか)は、フェルナン・シャントルイユ(ふぇるなん・しゃんとるいゆ)の顔を見上げました。
「僕も探しに行きたいけど、みんなを置いていくわけには……」
 百合園を訪れた生徒は他にもいました。校長としては全員の安全を確保する必要があります。
「校長はここでお待ちください」
「うん、ごめんね。……契約者だったら、バッテリーが切れても、パートナーと通話できるんだけどね……。
 そうだ、そういえば以前似たような事件があったよね」
「黒史病ですね」
「あの時の原因の女の子……なんだけど。昨日出発前、司書さんから、『今朝からいなくなってる』って報告を受けてたんだ」
「確か、最近は図書室で本を読むか眠るかで、大人しかった……と彼女から聞いています。……この前様子を見に行った時も、いわゆるライトノベルを読んでいたと」
 まさか。
 今度はフェルナンは、琴理と顔を見合わせました。
「──荷物に紛れて着いてきたり、とか」
 静香は頷きました。
「可能性があるよね。僕はここでアナスタシアさんを待ってみて、連絡役をするよ。百合園本校にもこまめに、彼女のことを確認してみる。
 村上さんは、協力してくれる生徒と一緒に、アナスタシアさんと黒歴史小説さんを探して。
 フェルナンさんは──ごめんね。ヴェネツィアに建築、見に行く予定だったんだよね」
「気になさらないでください。私も被害が広がらないようにお手伝いします。
 以前の事件以来、黒歴史、というものに詳しくなったのですが──おそらくですが、作品の登場人物になりきって、無関係な人物を仲間だと想定するタイプの妄想だと思われます」
「となると、『ユーフォルビア』という名前が手がかりになるかもしれませんね。私も会長から連絡があり次第、皆さんにご報告します」


担当マスターより

▼担当マスター

有沢楓花

▼マスターコメント

 こんにちは、お久しぶりです、有沢です。
 こちらは特殊なシナリオとなっています。

 このシナリオでアクションをかけて動くキャラクターは、皆さんのPCではなく、黒史病にかかって、
【自分を前世の戦士だと思い込んでいる一般人NPC】です。


 『破滅へと至る病!?』の続編シナリオになっていますが、この件に中心的に関わる人物は、過去「黒ずくめの少女」だけです。
 彼女は魔導書です。「誰かの書いた妄想小説が何かのアクシデントで捨てられて」しまったものの、今年になって地球との影響で復活し、彷徨っていました。
 目覚めたばかりで自我が薄い彼女は、その時も新百合ヶ丘で一般人を「黒史病」という魔法にかけ、人が無意識の設定を用いて活動する、その空想の力を自分の中に取り込み、書き込むことで自我を作っていました。
 生徒達によって保護され百合園の図書室に保管されていた彼女ですが、所蔵されているライトノベルに触発され、また視察の生徒の荷物に混じって着いてきてしまいました。
 彼女に悪気はありませんが、まだ未熟なため、無意識にその力が発動してしまっています。
 今回の妄想は、彼女が今まさに読んでいる作品の世界です。
 百合園本校にいた生徒や、近くを通りがかった一般人は皆、
「過去、巫女王の治める王国と、魔王の治める帝国が争った。互いに相打ちのようになってどちらの国も滅びた。だが巫女王が命を懸けた魔王の封印が時を超えて解けつつある。
 同時に転生していた王国の住民に、互いの記憶と能力が戻りつつある」
 という妄想を共有しています。
 そして互いの陣営を今度こそ滅ぼしたり封印するため、百合園女学院周辺で闘います。

 百合園の生徒会長であるアナスタシアは何故かその登場人物の一人に「認定」されてしまい、追われています。何とか隠れ助けを求めましたが、場所は不明。携帯のバッテリーは切れかけており、数回送受信ができる程度です。
 作品のタイトルは『infinity 〜記憶螺旋の巫女たち〜』で、十数巻出版されています。
 これは琴理や生徒達がネットで辺りを付けて突き止め、静香たち契約者生徒側の共有情報です。内容についてはおおまかなところは(wikiが作られており)把握していることになります。また各巻一冊ずつ、フェルナンが近所の書店から購入してきて、静香の手元にあります。
 が、作品は妄想力によって所々ゆがめられています。またこの「なりきり」「前世」妄想については『作品を登場人物たちがなぞろうとする』危険があります。
 ただし、魔導書を確保した時点で、彼女と顔見知りの琴理や静香が彼女の力を抑えることができ、妄想にかかっている人物は黒史病から目覚めます。


 このシナリオでの皆さんの目的は、
 1)黒歴史病にかかり、どちらかの陣営に属し、前世の因縁の決戦に参加することです。
 どうしてもという場合は、
 2)NPC(一般人)ではなく皆さんのPCそのまま(契約者)で、琴理と共にアナスタシアと黒い少女を探したりすることができます。


【黒史病にかかっている場合】
 全員、同じライトノベルを読んでいます。内心、パラミタや契約者の噂を聞いて憧れているのが共通点です。
 基本的には百合園本校の生徒か、そうでない場合は年齢に応じて、地域の生徒児童や周辺住民になります。簡単に設定など書いて頂ければ幸いです。

・不思議な能力を行使する「転生者」になれます(注:なった気がするだけです)。口調・能力などは基本的には、PCのデータに準拠します。
  スキルや装備は、PCのものを「使える(持っている)気がする」として使用可能です。
 ・巫女王の王国か、魔族の帝国に属するかをお選びください。種族は自由です。

・必殺技を設定できる
  必殺技にはそれっぽい名前と効果をお考えください。ない場合はこちらで適当に考えてしまいます。使わなくても勿論オッケーです。
  例)風を操る天使。必殺技は風の刃で敵を縦横無尽に切り刻む<突刃風牙(トッカータとフーガ)>
 ・必殺技や能力・設定などは、オリジナルをお願いします(エターナルフォース(略)など既に存在するものは、別のものに差し替えさせていただきます)。
  必殺技の効果は甚大で、中二度が高いほど強くなります。でも、必殺技は、同じ病気にかかった人同士にしか効果がありません(つまり、お互いに、効果がある「気がするだけ」です)。
 ・ただし、高いところから飛び降りたりすると、一般人の為「本当に」痛い思いをすることになります。
・自分の前世の生まれ、何があったか、挨拶掲示板でダイスの右側で決定します。又は、任意に一つ選択できます。
 決定しない、という選択もあります。その場合、過去の記憶はおぼろげで覚えていないことになります。
 1)〇〇を殺した/殺された(したかされたか、はお選びください。以下同じです)
 2)〇〇を封印した/封印された
 3)〇〇を裏切った/裏切られた
 4)〇〇を庇った/庇われた
 5)〇〇を愛していた/愛されていた
 6)〇〇を憎んでいた/憎まれていた
 ※この○○には、他のPLさんの名前が入ります。過去の記憶を選んだ方の中から設定を拝見してこちらで組み合わせます。

【『infinity 〜記憶螺旋の巫女たち〜』内容について】
・日本でそこそこ売れているライトノベルです。現代日本を舞台に、能力者たちがバトルする内容になっています。
・主要登場人物には前世の因縁があり、前世はライトファンタジーの世界となっています。
・作られるNPC設定は、ある程度自由に作成していただいて大丈夫です。


 皆さんの楽しいアクションをお待ちしています。

▼サンプルアクション

・巫女王をお守りする

・俺は魔王だったかもしれない

・アナスタシアを助ける

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2012年01月02日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2012年01月03日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2012年01月07日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2012年01月23日


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