シルバーソーン(第1回/全2回) リアクション公開中! |
シナリオガイド戦艦島――それはいにしえより息を吹き返した運命の場所。
シナリオ名:シルバーソーン(第1回/全2回) / 担当マスター:
寺岡 志乃
晴れ渡った冬のある日、金の縁取りの入った1通の招待状がカナン領主、シャンバラの各校へ届きました。 * * * 東カナン領主の結婚式は、少し風変わりなものでした。列席する者たちは皆、軍服による礼装、帯剣をしています。そして花婿である領主自身、まとっているのは軍服でした。戦争のさなか、兵たちの見守るなかで式を行った始祖から受け継ぐ伝統だということです。 エンヘドゥの歯噛みする姿が目に見えるようです。周囲の者たちに視線を走らせ、シャムスは内心ほっとしていました。顔には決して出しませんでしたが。 大勢の人々が見守る中、式はつつがなく進行し、2人は祭壇に立つ女神イナンナから祝福を授かりました。手に手を重ね、至福のときも苦難のときもともに歩むと誓います。左右に並んだ12騎士や将軍たちが槍の穂先を交互に重ねて作ったアーチをくぐり、満場の拍手の中、礼拝堂を出ようとしたとき。それは現れたのでした。 『イナンナ!! バァル!! シャムス!!』 扉を破壊して飛び込んできた暴風が、礼拝堂じゅうを吹き荒れました。風は唖然となった人々を容赦なく翻弄し、床へたたきつけます。暴風の中央にいたのは、金の瞳を持つ黒き闇――。 「おまえは、モレク!」 イナンナは糾弾するようにその名を呼びました。白き輝きに包まれた彼女の周りだけは、風は穏やかな微風となっています。 『アバドン様ばかりか、よくもバルバトス様を……。許さない……おまえたちだけは、絶対に許すものか……!』 その声は怒りばかりでなく、苦しみにも震えていました。もはやかつての人型をとれないでいることからも、彼が最後の力をかき集めて復讐に現れたことが分かります。どこか人知れぬ地で力を蓄えれば、再びあのときの姿で復活することも可能だったでしょうに……それよりも復讐を選んだ彼の怨嗟は、すさまじいものでした。 『受けとるがいい!!』 モレクの闇から影のような矢が撃ち出されました。それはイナンナの清らかな輝きに触れた一瞬で霧と化し、散じます。けれど、ほかの者たちはそうはいきませんでした。 「危ない、バァルさま!」 アナトが身を投げ出してバァルをかばい、矢に貫かれました。 となりのシャムスをかばったセテカ・タイフォン(せてか・たいふぉん)もまた……。 わずかに遅れて、シャムスの放ったティファレトの矢がモレクの眉間を射抜きます。 『ギャアアアァァァーーーーッ!!』 世界樹セフィロトの光輝を受けて、モレクは瞬時に散りました。今度こそ、彼はこの世界から完全に消滅したのでした。 「それで、2人の容態は?」 バァルからの切迫した問いに、薬師は答えました。 「混濁していますが、意識はかろうじてあります。痛みはさほど感じていないようです。ただ発熱がひどく、痺れが強くて動くことはできません」 間もなく矢に塗られていた毒が判明しました。リュパスという名のその毒は遅行性で、幻覚と高熱、徐々に激しくなる痛みに苦しみ抜いたあげく死に至るというものでした。 毒の種類が分かったのであれば解毒の方法も分かったはず。けれど薬師たちは毒の名前を知った瞬間から青ざめたまま、固い表情をしてうつむき、バァルと決して目を合わせようとしません。 「治療法は? 解毒剤があるのだろう!?」 その問いに薬師たちはそろって力なく首を横に振りました。薬師長が持ち込んでいた本の1冊をとり上げ、とあるページを開いて見せます。 「この毒の治療にはこちらのシルバーソーンというイラクサが必要なのですが……この草は、はるか昔に失われてしまいました……今はもう、どこにもないのです……」 「個人差がありますが……おそらくもってあと5日……。ご婦人のアナトさまは、もう少し短いやもしれません……」 「そんなばかな!!」 愕然となるバァルの背後、シャムスはきびすを返しました。 「シャムス殿?」 「南カナンへ戻る。向こうで何か有効な手立てが見つかるかもしれない」 「……頼む」 アナトとセテカが運び込まれた部屋の前。一体どんな顔をして彼らにこのことを告げればいいのか……苦悩するバァルの元へ、彼の護衛を務める騎士の1人がおそるおそる近付いてきました。 「バァル様……あのぅ……」 「どうした」 騎士は自信なさげに、おぼつかない声でたどたどしく告げました。先ほど薬師が見せたあの草の絵を見た覚えがある気がする、と。 「なんだと!?」 「あ、いえ……あのっ……その……多分、です。もう大分前なので、確証はないのですが…」 「どこだ! さっさと言え!」 「せ、戦艦島です! あそこを商業施設として修復する際に封鎖した地下で、あの草の描かれたラベルが貼られたボトルを見ましたっ!」 「戦艦島……そこにシルバーソーンが」 「だ、駄目です、バァル様!」 さっそく向かおうとしたバァルを、騎士はあわてて引き止めました。 「あそこは先日モンスターの襲撃にあって、その巣窟となってしまっているんです! だれも近付けません!」 「――そうか…。だがそれでも、行かなくては」 バァルは閉じられたドアに目を向け、より一層その意思を固めます。 今この瞬間にも毒に蝕まれている2人の命を助けるため。己の命にも等しい、かけがえのない2人のために。 本当にあるかどうかも分からない、騎士が見たというシルバーソーンの描かれたラベルのボトルを求め、バァルはモンスターの巣窟と化した戦艦島へ行くことを決意したのでした。 * * * そして今ここにもう1人、それを知る者が……。 「――よし。モレクはちゃんと己の役目を果たしたわけだな。やつらにそうと気付かれることなく」 塔の最上階にて使い魔より報告を受けたその者は、ククッとのどを震わせます。 「さあ、お膳立てはしてやった。来るがいい、東カナン領主それにシャンバラのコントラクターども。再戦といこうじゃないか」 フードを下ろし、長い髪を夕方の風になびかせ――酷薄な光を宿した目で、彼はアガデの方角を見つめていました。その口元に三日月の嗤いを刷いて……。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
こんにちは、または初めまして、寺岡 志乃といいます。 ▼サンプルアクション ・モンスターと戦う ・アナト、セテカを治療する ・戦艦島を商業施設に戻す ・手に入れた薬を売る ・「彼」の側につく ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2012年03月12日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2012年03月13日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2012年03月17日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2012年04月04日 |
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