シルバーソーン(第2回/全2回) リアクション公開中! |
シナリオガイド闇の城『黒夢城』誕生。決戦の舞台へ
シナリオ名:シルバーソーン(第2回/全2回) / 担当マスター:
夜光ヤナギ
魔女モレクから毒矢によって狙われた東カナン領主バァル・ハダド(ばぁる・はだど)と南カナン領主シャムス・ニヌア(しゃむす・にぬあ)を庇って、自らが毒を受けてしまった、バァルの婚約者アナト=ユテ・アーンセトと、バァル直属の側近セテカ・タイフォン(せてか・たいふぉん)。二人の毒を解毒するためには、幻の薬草シルバーソーンが必要だった。 ◆ 「おやおや……お早いお帰りでしたねぇ」 まるで何かを祀るかのような祭壇にて、フードを被った魔女の影が囁くように言いました。影が振り返ると、それまで誰もいなかった空間に、いつの間にか一人の娘が立っています。 見るも麗しい娘でありながら、しかし―― 「少し想定外のことが起きたのでな」 彼女――南カナンの姫エンヘドゥ・ニヌア(えんへどぅ・にぬあ)は、冷徹な声音でそう答えました。 いえ、彼女はエンヘドゥではありません。その肉体はエンヘドゥそのものであるものの、その体を操る意思は彼女に憑依した奈落人アバドンのもの。 エンヘドゥからは想像も出来ぬほど冷たい表情で、アバドンは問いかけました。 「それで? そちらの経過はどうなっている?」 「順調ですよ……少なくとも、この時点で彼女たちが気づいたとしてももう遅いです。すでに回路は動き出しているのですから」 「ほう……」 アバドンは振り返ります。 影が言った回路と呼ばれるものは、この建物全てを指しているようでした。 よく見れば、壁に埋め込まれた管のようなものを走る、揺らめいた光があります。 それは、人間の魂とも言うべきものです。アバドンはそれを眺めて、愉快げに唇を歪めました。 「確かに、すでに動き始めているようだ。この分なら、《運命の輪》が完成するのも近いか」 「ええ……そうなれば、カナンの地は再び混沌に見舞われるでしょう。いかにイナンナと言えども……それを食い止めるのは至難の業ですよ」 影の言葉に、アバドンは満足そうです。 そんなとき、ふと影は思い出したように言いました。 「それにしても……今度はその姿ですか」 その姿というのは、むろん、エンヘドゥを指しています。 アバドンは自分の体を見回して、こちらもまた満足そうに頷きました。 「ああ、ニンフよりもはるかに使い勝手が良い。まるで誰かの器となるためにあるような体だ。それも……お前がこの娘の中に汚れを残しておいてくれたからだがな」 「それが私の役目ですので……」 影は恭しく頭を下げる。 その姿を見下ろしながら、アバドンは顔を歪めました。まるで、自分が余りにも強大な武器を持っているかのような、頼もしさと恐怖を感じる、複雑な表情。 彼女はそんな感情を確認するかのように、呟きました。 「心喰いの魔物……闇の化身……惨劇の芸術家……その異名のどれもが、実体のお前の前では霞んでしまう。私は恐ろしいぞ、貴様が」 「ひゃひゃ……」 喉を鳴らすような笑い声。 影の魔女――モートのその笑い声は、人の心の奥底に染みこむような笑い声でした。 ◆ 南カナン領家は騒然としていました。 なにせ、自領土の姫君であるエンヘドゥが敵の手に奪われただけではなく、その体さえも操られているということが発覚したのです。 自領に戻ったシャムスに報告されたのは、自分を守っていた近衛兵をエンヘドゥ自らが仕留め、どこかに消えたということ。過去にも同じような事があったため、いやな予感は抱いていましたが……その通りになるとは、シャムスも信じたくはありませんでした。 しかし、東カナンから受けた報せは予感の的中。 しかも、シルバーソーンは2つあるうちの1つしか手に入れることが出来なかったということ。セテカが自ら投与を拒んだことで、1つはアナトへと投与されることになったという話でした。そうなれば、セテカを救うためにももう1つのシルバーソーンを手に入れなくてはならない。 アバドンの行方はどこに……? と、南カナンが早急に調査と対応に追われていたそのときでした。 シャムスのもとに兵の報せが届いたのは。 「城が現れただと……っ!?」 「は、は……っ!」 南カナン領家の居城で、シャムス・ニヌアの耳に届いたのはそんな報せでした。報せを届けた兵士はひざまずき、深く頭を下げます。そしてその口から、更なる報せを続けたのでした。 「し、城からはさらに色濃き瘴気が広がっているという報告。しかも、近辺の町や村が次々と《影》に襲われている模様です。現在、《漆黒の翼》をはじめとして我が軍の兵と助力を申し出た契約者たちを向かわせていますが……なにぶん、数が多く……」 「いったい、なにが……」 戸惑いを隠せないシャムス。 そんな彼女に静かに進言したのは、その半生を領家に仕えてきた老執事のロベルダでした。 「これが……真の目的だった……ということでしょうか」 「真の目的……?」 シャムスは訝しげに眉をひそめました。 「そうか……そういうことか……」 やがて彼女は合点がいったようにロベルダと目を合わせます。 契約者、部下の兵士たち、側近役……戸惑いだけを顔に浮かべる彼らに、シャムスは言ったのでした。 「全ては布石……だ」 「布石……?」 南カナンの精鋭騎士団、《漆黒の翼》の騎士団長であるアムドが声を漏らしました。 シャムスはそれに頷き、話を続けます。 「奴らの真の目的はあの城を誕生させること。オレたちに放った毒矢も、シルバーソーンを奪取しようとしたのも、そのために影で動いていたモートの動きを悟らせないためだ……!」 「し、しかし……あれはバァル様をおびき出すための囮だったのでは……」 仲間たちの中の困惑の声。 「それも目的のひとつだったのだろう。仮に成功すればそれで良し。そうでなくとも、時間稼ぎと注意を引きつける目的は果たされる。なにせオレたちは、アナトとセテカ、二人を救おうと躍起になるからな」 「そんな……」 「ある意味では、アナトとセテカの二人に毒を与えたことで、オレが自領に戻るであろうことも想定の内だったのかもしれん。そうなることで東カナンに残る兵力は分散され、オレはエンヘドゥとは入れ違いで自領に戻ることになる。アバドンからすれば、東カナンで身動きが取れやすくなるということだ」 シャムスの語るそれらの推測に、仲間たちは愕然となりました。 「全ては布石……オレたちは、奴らの手の中で踊らされていたということだ」 悔しさを滲ませる声で唇を噛みしめたシャムス。 と――不気味な声が聞こえたのは、そのときでした。 『ご名答……といったところですかねぇ』 「……ッ!」 ハッとなって声に振り返ったシャムスたちの目の前に、いつの間にか幻影がありました。 それは、かつて対峙した魔女の姿を表した幻影。 薄汚いフードを被ったそいつを、シャムスは見開いた瞳で見つめました。 「貴様……モート……ッ!」 『ご無沙汰しています、皆さん』 モートは嫌みなまでに丁寧な言葉でそう告げました。 「この狡猾な手口……やはり……貴様も絡んでいたか」 『ひゃひゃ……そう恐い顔で睨まないでください。今回の私は答え合わせと単なる言伝役。招待状を送りに来た使者なのですから』 「招待状だと……?」 『ええ……あの城への、招待状です』 城――というのは、兵士が報告した突如出現した城のことを言っているのでしょう。 『あの城の名は黒夢城(クロム城)と言います。私がアバドン様より授かった秘術を元に時間をかけて生み出した、闇の城ですよ』 「秘術だと……ッ」 『カナンを襲っている《影》――私が作り出したシャドーたちは、その身に倒した人間の魂を吸収し、黒夢城へと転送させるのです。シャドーはいわば黒夢城のパイプそのもの。そうして魂が集まれば集まるほど、黒夢城は完成に近づいていく』 モートの言葉に、シャムスたちは息を呑むしかありませんでした。 『そうですねぇ……もって1日というところでしょうか。そして黒夢城が完成した暁には、カナンの地を無数の闇と魔物たちが覆うでしょう。混沌の時代が再び訪れるのです。黒夢城はそのための門――混沌の入口なのですよ』 シャムスたちの脳裏によみがえるのは、ネルガルが征服王として君臨していた時のことでした。 いや、あるいは……それよりも恐ろしい時代が訪れるのかもしれません。 「それを止めるためには黒夢城にいる貴様らを倒すしかないということか……」 『その通りです。ちなみにエンヘドゥさんの体も私たちの手の中にあります。彼女を取り戻すためにも、ね。私たちを倒せば、エンヘドゥさんは無事、お返しいたしますとも』 「……それがまた罠でないという可能性はどこにある。貴様のその言葉を信じろと?」 『ひゃひゃ……信じたくはなくても、信じざるをえない……違いますか?』 「…………」 悔しいが、その通りでした。 いずれにせよ、黒夢城には乗り込む必要がある。それに、モートの言うことが真実ならば、魂の供給と巡回を止めるためにも、各地のシャドーを食い止める必要も。 『エンヘドゥさんを利用させていただいたことはこちらも痛み入ります。本当に……』 そうは言いつつも、嘲りの声音に乗せてモートは言いました。 「エンヘドゥを利用したのも……貴様の策略か……?」 『いえいえ……エンヘドゥさんの中にある汚れはそうそう消えるものではないのですよ。それこそ一生……ね。私が彼女を操っていたときの後遺症のようなものです。傷跡とも言いますがね。人の体に痣が残るように、闇の痣もまた、彼女の中には残り続けるのです。今回はそれが影響したということですねぇ。まあ安心してください。普段は何も影響のないものです。……アバドン様のような方がいらっしゃらない限りはね』 どこか愉快げなモートの声に、自然とシャムスの顔は険しくなります。 『そうそう。もう1つのシルバーソーンはアバドン様が持ってらっしゃいますので、そちらもあしからず。では……』 モートの幻影はそう言い残すと、あまりにもあっけなくその場から消え去りました。 それまで奴が放っていた闇の気配がなくなり、静寂が戻ってくる室内。 「シャムス様……」 アムドが判断を問いかける呼びかけに、シャムスははっきりと答えました。 「黒夢城に乗り込む」 「しかし、奴の言うことです。信用して大丈夫なのですか?」 「……分からん。だが、少なくとも奴の言う通り、オレたちがそうせざるえない状況にいるのは確かだ。セテカの毒を治すため、黒夢城で行われている秘術を止めるため、エンヘドゥを救うため、そして……奴らという存在を滅するためにな」 それが分かっているからこそ、モートの言葉が余計に心をえぐります。 しかし、シャムスは恐れませんでした。 「オレたちを試そうとしているのか……あるいはただいたぶるのを楽しんでいるのかは分からんが、行くしかないだろう」 彼女が振り返って見渡したのは、仲間たちの顔です。 そこには頼もしき契約者たちもいます。彼らが頷いたのを見て取って、シャムスは告げました。 「アムド……それに一部の部隊を率いて、オレは黒夢城に乗り込む。残りの者は各地の《影》を食い止めることに当たれ。《影》はいずれこのニヌアの地にも襲いかかってくるだろう。そのときはロベルダとともにこの地を守ることも頼む」 告げられた指揮官たちが頷き、ロベルダも忠誠の意を示します。 「……行くぞ!」 決戦準備へと、シャムスたちは動き出しました。 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。 ▼サンプルアクション ・シャムスと一緒に黒夢城へ ・各地の村や町を守る ・モンスターと戦う ・黒夢城に乗り込む ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2012年05月08日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2012年05月09日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2012年05月13日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2012年05月29日 |
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