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胸に響くはきみの歌声(第1回/全2回)

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胸に響くはきみの歌声(第1回/全2回)

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狙われた歌姫を守って古代遺跡ダフマへ!
シナリオ名:胸に響くはきみの歌声(第1回/全2回) / 担当マスター: 寺岡 志乃

アストーを助けてください!」

 突然蒼空学園に現れた少女は切迫した声でそう切り出しました。
「藪から棒だな」
 迎え入れた蒼空学園理事長馬場 正子(ばんば・しょうこ)はもう慣れたもので、苦笑しつつ、しかし深刻そうな響きを少女の声や雰囲気に感じ取り、背を正します。
「も、申し訳ありません……ですが……」
 少女は目深にかぶったフードの下で恐縮そうにあごを引きました。
「まあ、落ち着け。まずは貴殿の名前からうかがおう。そしてゆっくり事情を説明してもらおうか」
「わたし……わたしの名前など、どうでもいいのです! それより、どうか一刻も早くアストーを!」
 内心ため息をついた正子の前、少女が話し始めたのは、昨夜起きた、とある歌姫の誘拐事件でした。

 彼女の言うアストーは、最近シャンバラでもうわさになっている歌姫です。
 もともとは考古学者たちが発掘調査をしていた古代遺跡から発見されたデータチップに入っていた曲だったのですが、それを再現したところカルト的な人気が生まれたことからさらに科学者たちによってそれを歌う機晶姫として開発されたのが「アストー」です。
 とてもめずらしい七色の光をはじく銀色の髪、スミレの瞳、ミルクのような肌。たおやかな容姿をしたアストーは類いまれな歌声とともに人気を博し、2曲目、3曲目とヒットを飛ばしてファンをじわじわと増やし、ついにツァンダでコンサートを開くまでになったのでした。

「ですが、コンサートの開催が決まった直後から、脅迫が来始めたのです。コンサートを中止して、アストーを解体しろ。さもなくば実力行使に出る、と。
 相手は【Saoshyant】と名乗りました」
「ほう。その名は小耳にはさんだ覚えがあるな。たしかシャンバラの失われた時代を神聖化するカルト組織だったか」
「は、はい。崇拝しなくてはならない神聖な古代からの贈り物を売り物にした科学者たちは万死にあたる、奈落の業火に焼かれて果てるがいい、と……。そしてアストーは、魔物の手先、魔物の用いる武器だと罵っていました……」

『人気が出て、大勢の者に知られるようになれば、なかには変なやからも出てくる』
『こんなものはただのこけおどしだ。弱小カルト組織などに何ができる』
 科学者たちはそろって本気にしませんでした。
 しかしコンサートの準備を進めているうちに、7体の「アストー」が襲われ、破壊されてしまったのです。

「なんとまあ。ではやつらは本気であったというのだな!」
「はい……。
 ですが、それでも彼らは心配していなかったのです。アストーはまだ何十体もあるからと……」
 少女はうつむいたまま、唾を飲み込み飲み込み、言いづらそうに語尾を揺らして話しました。

 そしてコンサート当日。つまり昨夜ですが、まさかと思っていた事態が起きました。
 コンサート会場に数人の覆面の賊が乱入し、銃を乱射したのです。
 ほとんどは威嚇で、空を狙ったものでした。混乱に乗じてステージ上のアストーを狙うつもりだったのでしょう。準備中にいくら破壊しても無駄と悟った彼らは、大勢の者たちが見ている前でアストーの破壊=死の効果を狙ったのです。
 しかしそのとき、だれもが驚くことが起きました。

「白いコートと頭に何か機械をつけた男性がいきなりステージに飛び乗ってきて、アストーをさらって行ったんです」
「むう。それは賊どもの仲間か?」
 正子のつぶやきに、少女は頭を振りました。
「分かりません。最初はみんな、アストーを安全な場所へ避難させてくれたのだと考えました。でも賊が消えたあとになっても、アストーもその男性の姿もどこにもなくて……」
 少女は唾を飲み込み、ついに意を決したように少しだけ頭を上げ、フードの暗がりのなかから正子を見つめました。
「そのときわたしは舞台袖にいたんです。それで、あの、その人のコートの下が見えて……。
 その人、蒼空学園の制服を着ていました!」
「なんと!?」
 絶句してしまった正子の前、反対に少女は勢いがついたのかさらに饒舌になって言葉を重ねます。
「アストーは戻らないつもりだと……きっとあの遺跡へ向かっているのだと言って、科学者たちは追跡者を雇いました。でも、彼らが取り戻したがっているのはアストーじゃなくて、コンサートで披露するはずだった、アストーのなかに入ったままのマスターデータチップなんです! アストーはまだ、何体もいるから……。
 お願いです、コントラクターのお力で、アストー01を助けてください!!

 少女は必死に頭を下げました。
 ぱさりと音をたて、フードの下からこぼれ出たのは七色の光をはじく銀色の髪――少女もまた「アストー」だったのでした。


※               ※               ※


 そのころ。ツァンダ郊外のとある廃ビルの一角で、蒼空学園の生徒――松原 タケシ(まつばら・たけし)は崩れかけた壁に背中を預け、荒い息を吐き出していました。
「あの……大丈夫、ですか……?」
 傍らからアストー01がおそるおそる声をかけます。
「大丈夫だ。肉体を酷使したことによる疲労だ。人間の体というのを忘れていたわけではないが、あの包囲を抜けるにはしかたなかった」
 もちろんそれだけではありませんでした。体で隠れた方の右腕にはアストー01を連れて逃げる際に撃ち抜かれた傷があり、相当量出血しています。
 しかし少年は痛みのようなものは一切見せず、めずらしい、ほのかに赤く発光する機械の両目で無表情にアストー01を見つめました。
 アストー01は少年の返答の意味が分からないといったとまどいの表情で彼を見返しており、その手は己を抱くように体に回っています。
「寒いのか?」
 アストー01はステージ衣装のままでした。外からわずかに差し込んでいる外灯の明かりが彼女のひざから下を照らしており、銀の髪と対照的な濃いワインレッドが上品な光沢を出しています。しかし、それはスパンコールのついたキャミソールタイプのイブニングドレスで、肩はむき出し。胸元にシフォンでドレープがあり、背中に回った部分が人魚の尾ヒレのようなフリルとなっていて多少布はありますが、それでも本格的な冬を間近に控えた11月にこの格好は、見る者にぞくりとした寒さを感じさせるに十分です。
 少年が返答を待っていることに気づき、アストー01は首を振りました。
「わたしは作り物ですから。そういった心配は無用です」
「そうか」
「あの……あなたこそ……本当に大丈夫なんですか?」
 息が元に戻らず、冷たい汗が流れているのを見て、おずおずと訊きます。
「問題ない。今は休息が必要だが、きみの話してくれた遺跡までは持つだろう。
 戻りたいんだろう?」
「……はい。すみません。お願いします。どうかあそこへわたしを連れて行ってください」
 答えつつ、アストー01は無意識のうち、自分の胸元に手をあてていました。マスターデータチップがある場所です。
「うまく言えませんが……わたしのなかの【Astres】が言っているんです。あそこに……ダフマに戻りたいって」
 それはこのマスターデータチップを入れるたび、もう何度も口にしてきた言葉でした。ほかのデータチップでは起こり得ない感覚です。しかし科学者たちは一笑に伏して、だれも真面目にとりあってはくれませんでした。
 今度もまた、そうなるのだろう――そう思い、あきらめ半分の思いで目を戻したアストー01を待っていたのは、ほんのわずかだけれども穏やかな表情へと変化した少年の顔でした。
 アストー01はなぜかとても気恥ずかしくなって、赤らんだほおを隠すようにうつむきます。
「あ、あの……あなたの、お名前は……?」
ルドラ
 ……歌ってくれ」
 少年は再び壁に頭を預け、ため息のように息を吐き出すとそう言いました。
「えっ?」
「歌を……あのとき、きみが歌おうとしていた、歌……」
 アストー01はいぶかしみ、とまどいつつも、彼の望んだ歌を歌います。
 彼は壊されそうになった自分を助け、遺跡へ連れて行ってくれると約束してくれた人。その礼を返そうにも、歌うために造られた機晶姫である自分は、歌う以外にできることなどないのだから……。
 胸のマスターデータチップを作動させ、歌っていたアストー01でしたが、やがて歌はぷつっと唐突に途切れて終わりました。
「あの、すみません。この歌……【Astres】は、ここまでしか復元できてないんです……。でも、ダフマへ行けば、きっと残りも……」
 恐縮そうに肩をすくめ、おそるおそる少年に目を向けると、少年はいつの間にか眠ってしまっていました。
 寝苦しそうなのを見て、アストー01は少年の肩を引っ張って自分のひざへ彼の頭を乗せました。ヘッドギア型の機械をはずすと、その下のこめかみの所には打撲痕があって、黒いあざが広がっています。
「…………」
 自分をあそこから連れ出すために負った傷だと思うと、申し訳ない気持ちで胸がいっぱいになって。
 そっと髪を払い、アストー01は再び歌を歌い始めました。今度は子守歌のように小さく、ささやくように。
「…………アンリ……」
 機晶姫の耳でなければ聞こえないほど小さなつぶやきがして。少年の目じりを伝った涙が1粒、アストー01のひざに落ちてそこを濡らしたのでした……。

担当マスターより

▼担当マスター

寺岡 志乃

▼マスターコメント

 こんにちは、またははじめまして。寺岡志乃といいます。
 このシナリオは扱い的には「Perfect DIVA」全3話の番外編となりますが、本編を全く知らなくても問題なくご参加いただけますので、よろしくお願いいたします。


●目 的
 科学者が雇った追跡者やカルト組織【Saoshyant】の放った殺し屋たちからアストー01を守り、シャンバラ大荒野にある古代遺跡ダフマへ向かいます。


●古代遺跡ダフマについて
 数カ月前、シャンバラ大荒野で地中から発掘された古代遺跡です。
 今回の目的地となります。


●NPCについて
松原タケシ
 蒼空学園生徒です。前作で両目をえぐり取られ、敵に義眼をはめ込まれて以後体を乗っ取られて操られました。
 今回もルドラに操られています。右腕を負傷しており、このままでは危険な状態にあります。

ルドラ
 本体はタケシの両眼(義眼)で、5000年前に生きた天才科学者アンリの設計した人工知能です。
 アンリはもしもの場合を考えてルドラという人格を複数個所に焼きつけていました。
 前作でバックアップは破壊され、初期化されていますから孤独に狂う前の本来のルドラであり、前作のルドラとは別人です
 強力な真空波、エネルギー弾を放ち、カタクリズム、バリアを使用します。
 このバリアは魔法・物理両方に効果があり厚さを自在に変えることが可能で、小さくなればなるほど強力な攻撃を受け止めます。
 全身を覆う状態が最も薄い状態ですが、それでも中距離からの片手銃の弾丸は貫通しません。
 また常に張り続けることはできず、エネルギー弾や真空波による攻撃の際は解除します。
 彼自身何か思惑があるようですが、それを邪魔されない限りコントラクターと敵対する気はないようです。

アストー01
 古代遺跡から発掘されたマスターデータチップに入っていた曲を歌うために造られた機晶姫(汎用型)です。
 歌うことに特化しており、それ以外はなんら人間と変わらない能力値です。そのため機晶姫としての自分に引け目を感じています。
 それが自信のなさにつながり、他人とは一歩引いた接し方になっており、「すみません」が口癖となっています。
 ダフマへ行くこと以外は基本的に消極的です。外見は、なぜかアストレースにそっくりで……?

追跡者
 科学者に雇われて、アストー01とタケシを追跡しています。賞金稼ぎを生業としており、この業界ではそこそこ有名。
JJ シャンバラ人の女性。シングルアクションのリボルバー拳銃を使用。接近戦ではナイフも使います。格闘もそれなりにできます。
 無口で不愛想。よく奇妙な独り言をつぶやいています。実利主義。仕事に対して真面目に取り組んでいる、融通の利かない女性。
 機晶姫があまり好きではないようです。
クイン・E 魔女の男。炎熱系と氷結系の魔法を使います。情報収集に長けていて、明るい楽観主義者。やるときはやる男を自負してます。
 女好きですが、JJはあくまでパートナー。公私を切り分けており、仕事に対しては真面目です。
パルジファル 赤い刀身を持つ狼型ギフトです。かつてJJに助けられたことから恩義を感じて行動をともにしており、彼女に忠実です。武器化はしません。

アエーシュマ
 カルト組織【Saoshyant】の聖戦士(ベラトーレス)の1人です。過去古代遺跡から発掘されたさまざまな聖遺物(と彼らは称しています)を埋めこれまれた強化人間で、遠・中距離の弾丸は弾きます。砲撃にもある程度耐えれる頑強なボディです。
 魔法をほぼ無効化する装置を体内に埋め込まれており、魔法はほとんど効果ありません。8割減となります。
 彼をリーダーとした、十数名の剣や銃で武装した強化人間(汎用型)がアストー01を破壊すべく追っています。

科学者たち
 古代遺跡ダフマから発掘されたデータチップに入っていた音楽を復元し、Divasという音楽会社を創ってアストーを売り出しています。アストーのことを単なる「歌う機械」としか考えておらず、データを取り、いずれは別の歌姫も製造して売り出していくつもりでいます。
 今回マスターデータチップの回収を追跡者たちに依頼しました。アストー01が拒否した場合、破壊許可を出しています。

【Saoshyant(サオシュヤント)】
 通称SAO。5000年前に失われた古王国シャンバラを神聖視する者たちの集まりです。
 復興させようというのではなく、決して触れてはならないもの、不可侵な存在として崇めています。
 それを売り物としたDivasや科学者たちを敵視しており、小規模ながらビラ撒きやデモ行進等を行ったりしてきています。
 その裏でサンクトゥスと名乗る一部の者たちが過激なテロ活動をしており、彼らは聖遺物を用いてベラトーレスを造り、暗殺者としています。

アンリ
 ルドラの創造主です。5000年前、人工的な国家神【アストレース】を作る研究をしていました。
 娘のように思っていたアストレースが脳手術で廃人と化したあと、仲間の科学者全員を殺害し、消息不明になりました。


●特別ルール
 前作でドルグワントとして目覚めたLCは、自分のなかに眠るドルグワントの結晶によってルドラやマスターデータチップと共鳴することができます。それにより、ルドラやアストー01の現在位置をおおまかに把握できます。これは当時の記憶を失っていても、第六感的な感覚として感じることができます。
 なお、今回はドルグワント化することはありません。そのためドルグワントとしての力を使うことはできません。あくまで2人を探知できる不思議な感覚としてアクションをしてください。



 それでは、皆さんの個性あふれるアクションをお待ちしております。

▼サンプルアクション

・組織の者と接触する

・追跡者と接触する

・アストー01たちと接触する

・科学者たちと接触する

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2013年11月14日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2013年11月15日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2013年11月19日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2013年12月09日


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