天御柱学院

　
「島が空京に接近している？　そんな馬鹿な話があるものか」
　最初は、誰もがそう考えました。
「それよりも、今は空京全体で起こったサイバーテロを収拾するのが先決だ」
　突然、空京全体の通信回線がダウンし、一切の電話やデータ通信が不可能になるというサイバーテロが起こり、空京の各施設は麻痺状態にありました。大小のホストや端末のコンピュータもほとんどが停止し、復旧まではそれらを利用するシステムは使用することができません。これによって、空京の防衛システムも一時停止してしまいました。
　そのため、目視による以外浮遊島が空京に接近してきていることに気づく者はおらず、また、それをレーダーなどで確認することもできなかったのです。すべてが後手に回り、事実に気づいたときは手遅れとなっていました。
　けれども、逸早くそれに気づいた者たちがいました。一連の事件を追っていたり、単純に冒険を楽しんでいて今回の事件に巻き込まれた学生たちです。
　
「こんな所にエンジンつけたりして。いったいこの島をどこに運ぼうってんだ？」
　今は噴射もおさまって静かになった巨大なスラスターを見あげてココ・カンパーニュ（ここ・かんぱーにゅ）が言いました。
「まずいですわあ、方向から考えると、この先は空京じゃないでしょうかあ」
　チャイ・セイロン（ちゃい・せいろん）が、他の学生たちと地図や気流のデータを照らし合わせながら言いました。
「なんとかして、島を止めないと……」
「全部壊すか♪」
　心配するアルディミアク・ミトゥナ（あるでぃみあく・みとぅな）とは対照的に、ココ・カンパーニュがあっけらかんと言いましたが、問題はそんなに単純じゃないと周りからたしなめられました。
　浮遊島にやってきていた他の学生たちも、異変に気づいてそれぞれの居場所で動き始めました。
　一方の空京でも、その場にいた学生たちが独自に犯人の手がかりを追っています。通信回線を押さえられて無効化されているようですが、末端の敵を個別に潰しても意味がありません。浮遊島を呼び寄せているだろう施設をなんとかすると同時に、近づいてくる浮遊島を迎撃しないといけません。
　
「やあ、みんな一気に動き始めましたね。楽しみです」
　まるで他人事のように、今回の事件を企んだジェイドは倉庫の中でくつろいでいます。
「さて、事態がどう転ぶか、みなさんのお手なみを拝見するとしましょう」
　ジェイドは、そう実に楽しそうに言いました。

　ゴチメイ隊が行くのジェイド編の最終話です。
　前回参加の方は、前回の位置からスタートとなります。新規の方は、好きな場所からスタートできます。
　浮遊島は、倉庫街の鉄塔からのマイクロウエーブとレーザーガイドを、浮遊島中央の鉄塔で受信して、進路をシャンバラ宮殿に定めています。現在は、本来の気流のコースを外れて、空京へ向かう気流に乗っている状態です。
　浮遊島は長径１．５キロの長球を横にして縦に潰したような形をしています。まあ、角の丸い石鹸か、空気の抜けたラグビーボールみたいな形を想像してもらえばいいかと。
　エンジンは、メインは機晶石を利用したロケットエンジンです。島の左右には、地球製のジェットエンジンが方向転換用のスラスターとして設置されています。
　コントロールは、地下にある制御室と、各エンジンに隣接している制御装置で行われています。それぞれには、メイドロボとメカ小ババ様と魔導球が防衛装置として稼働しています。
　制御室は、おそらくは、過去の研究施設か、資源採掘用の洞窟を改造して再利用したものです。
　浮遊島が直撃すれば、シャンバラ宮殿は倒壊し、落下する建物によって空京は壊滅、衝撃で地下の天沼矛も連鎖崩壊するでしょう。軌道エレベーター級の建物の崩壊は海京の直接破壊、津波による各沿岸地域の水没を招きます。単に壊れるだけではすみません。かすめただけでも空京をごっそりと削り取ることは可能です。
　西シャンバラのことだからといっても、空京の壊滅はシャンバラへの地球からの流通の停止を意味します。地球製の部品も手に入らなくなるため、東シャンバラでも機械関係の生産はすべて止まります。些細なチップ一つでも地球に依存していれば、製品を作ることはできません。かなりゆゆしき問題です。
　通信・コンピュータ網がトロイの木馬と、メカ小ババ様とメイドロボによって妨害されていますので、大規模な迎撃態勢を取ることができません。携帯電話も使用不可ですから、パートナー間の通信しか連絡を取る方法はありません。
　天沼矛も停止していますので、イコンの使用も不可能です。
　この状態では、浮遊島の破壊は不可能でしょう。地上への撃墜も、そんなことをすればまず海京は津波で全滅です。
　以上から、浮遊島の進路を変更させるのが得策ですが、その方向や方法によって結果はかなり違ってきます。なお、その手段は何種類も用意されていますが、それぞれの方法によって、必要とされる条件も変わってきます。頑張って被害を最小限に抑えてください。

・空京を守る

・浮遊島を空京にぶつける

・浮遊島を止める

・島を回避させる

・避難誘導する