その昔、金葡萄杯という武術大会が存在していました。
シャンバラに住む腕に自信のある者たちが集う大会です。
大会で優勝したものは、機晶石の輝きを秘めた果実を手にし、己の武勇を示したといいます。
その果実は黄金の煌きを持ち、見る者を魅了しました。
金の葡萄……ヒラニプラの南にある小さな村、ディフィアで、それは見つけられました。
機晶石を発掘するのに都合がよい土地柄でたまたま作られていた葡萄に、機晶石の輝きが移ったのではないかといわれています。
数十年に一度、その葡萄が見つけられるとその武術大会は行われ、その果実は優勝者の手に渡ったそうです。
ただ、その果実がどのようなものであるかは、優勝者しか知らず……また、それを研究目的のためだけに得ようとした者はいなかったのです。
シャンバラ大陸が日本と交流が開始されてから10年。先日その葡萄が実りました。
このことは、村から多くの町へ噂として広がりました。今回も金葡萄杯を執り行うという知らせと共に。
各学校はその葡萄の正体知りたさに、学校の生徒たちにこの武術大会で己の武を示すことを勧めました。
優勝者はその葡萄を各学校に持ち帰り、その学校の名誉として捧げる事が参加条件となっています。
そして、これを守らぬ生徒は厳罰に処す、理由を問うべからず……とまで書かれた誓約書にサインさせられました。
ディフィア村では、久しぶりの武術大会に大賑わいです。参加者だけではなく、大会開催中は観光客も訪れるであろうことから、アルバイトを多く募集しています。
不穏な影も付きまとっています。
鏖殺寺院、校舎を持たぬ波羅蜜多実業高校の生徒達もその金葡萄をねらっています。
そして、金葡萄と同じく黄金の煌きを持つ機晶姫……ルーノ・アレエは、この葡萄にとても興味を抱いたようです。
彼女は金の輝きを持つ特殊な機晶石を持つ機晶姫。
体の核となっている機晶石と、この金の葡萄は共通点があります。
《金色に輝く》という、その一点のみではありますが、ルーノ・アレエは気になって仕方がありません。
自分の出生と、この葡萄に何か関わりがあるのではないか……そう感じた彼女は、自らもこの武術大会に参加することにしました。
栄光を手にするのは、一体誰なのでしょうか?