アトラスの傷痕、そこはかつて古代シャンバラ王国の首都があったと言われている場所です。現在は火山であり、周囲は砂漠で、近づく者などほとんどいません。
そんな砂漠を一人歩く者がいました。漆黒の髪をなびかせ、眼鏡の奥に見える瞳は澄んだ緑色であり、理知的な雰囲気を漂わせた青年です。彼はリヴァルト・ノーツ、自らを「真理の探究者」と自称する学生です。
(さて、何もないからこそ何かがあるかもしれないと期待したくなるものです)
一人心の中で呟き、彼は砂漠を横断しようとします。その時、
「な、足が、引き込まれる……!!」
流砂が起こり、それに呑み込まれてしまいます。
(こんなところで死ぬとは、あっけねーな、俺)
こうなってしまっては仕方ない、と半ば生を諦め目を閉じました。しかし、彼は生きていました。
「ん、ここは……」
目が覚めると、そこは何やら建物の内部のようでした。かなり古く、傷んでいる箇所も多い事から、遺跡であると彼は判断しました。
(ははあ、これは半分幸運、半分不運といったところでしょうか。出口を探すついで、調べていきますか)
その際に分かった事がいくつかあります。
・建物の規模はかなり大きく、何階層かになっている。
・古文書のようなものが散らばっており、棚もあることから、図書館もしくは図書室だと思われる。
・そのスペースだけで三階分はあり、通れなくなっている部屋などもある事から、単なる図書館の遺跡というわけではなさそうである
探索を進める中、彼はある隠し扉に入ってしまいます。それも真理のため、と楽観視するものの、次第に張りつめた空気になってきました。
(なんです、ここは?)
目の前にあったのはとても古く、それでいて厳重に封印が施された扉でした。彼がそれに触れようとすると、
「うわっ!」
扉が光り、それが静かに開いていこうとします。
しかし、彼の記憶はそこで途切れてしまいました。
「ん……あれ?」
気付いた時には自分の部屋のベッドでした。どうやって帰ってきたか、まったく覚えていません、それどころか、昨日の記憶があやふやになっていました。
覚えているのは、砂漠で遺跡に迷い込んだということだった。
その事を報告しましたが、最初は皆訝しんでいました。しかし、完全にデタラメだとも考えてはいませんでした。
調査団が派遣され、砂漠は徹底的な調査がなされました。
「なんだ、何もないじゃないか」
調査員の一人が呟いた時、それは現れました。
「窓だ、窓のようなものがあるぞ!」
小さいながらも入口が見つかりました。しかし、放っておくと、そのまままた砂に埋もれてしまいそうでした。
そこで、その入口が塞がらないように、砂をせき止めました。
数日後、学生の有志による調査団がこの遺跡に到着しました。リヴァルトの姿もあります。
今度はこの遺跡の内部調査です。果たして、何が出てくるのでしょうか?