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月夜に咲くは赤い花!?

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月夜に咲くは赤い花!?

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シナリオガイド

あなたの小指から赤い糸……どこへ伸びている?
シナリオ名:月夜に咲くは赤い花!? / 担当マスター: 望月 桜

 ――片思いの相手と、もしくは、両想いのパートナーと、その絆を確かめ合いたくはありませんか?
 我が月楼館では、そんな皆さんの願いを叶えるため、月に一度だけ特別な行事を行っております。
 それが『紅い糸の契り』です。
 皆様は、月楼館にある『片思いのブラッドルビー』をはめ込んだピンキーリングをご存知でしょうか?
 このリング、普段は「はめた人間が一番強く想っている相手を、赤い線で指し示す」魔法具なのですが、
 月に一度、真円となる月の光を受けたときだけ、そのリングの周囲にいるすべての人々の小指に『赤い光の糸』を浮かび上がらせるのです。
 魔法の赤い光が満ちるこのときだけは、あなたの気持ちだけではなく、あなたが思いを寄せるあの人の気持ちも、赤い線となって指し示されることでしょう。
 特に四月の満月は、ルビーの力が最も増す夜です。
 この『卯月の満月』の際には、月楼館の一周年記念式典も含めて、大々的なパーティを計画しております。
 長い間、予約を入れて順番待ちをしてくださった皆様。
 月光の中で一夜の夢を、どうぞお楽しみくださいませ。



 月楼館は、イルミンスールの森にひっそりと存在する、小さなホテルです。
 かつては、仲のよい夫婦が道楽で建てた『月見亭』という小さな宿屋で、森を抜けてザンスカールへ向かう旅人や、「天窓から見事な月が見える」といううわさを聞きつけた好事家が、細々と訪れるだけの場所でした。
 ですが去年、厨房で爆発事故が起こり、前のオーナーが亡くなってしまいました。妻は運よく外出していて難を逃れたのですが、その後まもなくして失踪してしまいます。
 経営者がいなくなった『月見亭』は、急遽地球から駆けつけた前オーナーの弟に引き継がれ『月楼館』と改名されました。新オーナーが『赤い糸の契り』という月一のイベントをはじめると、『片思いのブラッドルビー』がうわさを呼んで、満月の夜には三ヶ月前から予約しないと泊まれないほどの人気ホテルになりました。
 特に今月行われる『卯月の満月』は、この洋館が建てられてから五年目という記念すべき節目であり、さらに現オーナーがあとを継いだ『月楼館』の一周年記念でもあり、さらに、ブラッドルビーが最も力を増す日とあって、予約はあっという間に埋まってしまいました。
 そんな『卯月の満月』を間近に控えたある日、事件が起きたのです――……。



 卯月の満月を控えたその日、月楼館ではスタッフたちが、式典の準備に大忙しでした。
 広々としたロビーの中央には、防弾ガラスのケースに収められたブラッドルビーのピンキーリングが、真上にある天窓から降ってくる夕日を受けて、目の覚めるような真紅に光り輝いていました。
「兄さん夫婦がこの洋館を建ててから、もう五年か……」
 着々と進む式典の様子に目を向けながら、月楼館のオーナーは感慨深げに言いました。
「そうなんですか? よく覚えておられますね」
若いスタッフが荷物を運ぶ手を止めて、オーナーに言いました。
「忘れるわけがないだろう。この洋館は、兄さんとあの人が結婚した日に建てたんだから。忘れるはずない」
「普通、兄貴の結婚記念日なんかそんなにハッキリ覚えてるもんですかね?」
オーナーは若いスタッフを身振りで追い払うと、小さくため息をつきました。
「……そして、兄さんが亡くなって、僕があとを継いでから丁度一年……。あの人がいなくなってからも、丁度……」
 つぶやいて、オーナーは防弾ガラスのケースに目をやります。
 そこには、ガラスケースだけが、真っ赤な光を受けて真紅に輝いていました。
「……リングが、ない!?」
 オーナーは大声でスタッフをかき集め、リングの行方を誰か知らないかと聞きました。
 ――リングは、すぐに見つかりました。
 ロビーから二階へとあがる、真っ赤な絨毯を敷いた中央階段。その半ほどに、小柄な女性……ミラ・カーミラが立っていたのです。
 少女のようにしか見えないミラの、すらりと細い小指には、夕日よりもなお赤い『片思いのブラッドルビー』が輝いていました。
「……ッ!!」
 オーナーが言葉を失います。
 ミラは、ルビーに負けない真っ赤な瞳で、一度オーナーを見下ろすと、かすかに微笑みました。薄桃色の唇の端から、鋭く尖った牙がちらりと覗きます。
 やがてミラはくるりときびすを返すと、ぽてぽてと階段を昇ってゆきました。
「……つっ、捕まえろ! あの女を捕まえるんだ! 絶対に、月が満ちる前にあのリングを取り戻せーッ!!」
 オーナーの一声に答えて、30人を超えるスタッフたちが、いっせいに階段を駆け上がり始めました。



 居並んだスタッフたちを前にして、オーナーは疲れた顔でため息をつきました。
 スタッフたちも、一様に疲れた顔をしています。中には頭にこぶを作ったり、顔にあざがあったりと、怪我をしている者もいます。
「どうしてこれだけの人数がいて、あんな小柄な女性一人捕まえられないんだ……」
 オーナーの声に、スタッフの一人が答えます。
「それが……あの女、見取り図にもないような隠し通路をすべて熟知しているばかりか、どうにか追いつきそうなところまで近づくと、決まって、あらかじめ仕組まれていたかのように床板が抜けたり、壁が崩れたりするんです……」
 大の大人が三十人がかりで追いかけても、ぽてぽてと歩いて逃げるだけのミラに触れることさえできないのでした。
「当たり前だろう、なんせあの女性は、この洋館を建てた……」
 言いかけて、オーナーはかぶりを振りました。
「とにかく、今日は式典当日だ。何年も前から予約していたお客さんたちを裏切るわけには行かない。お客は予定通りに入れるぞ!」
「それじゃあ、リングのほうはどうするんです!?」
「あいつは日光が苦手だ。夕方を過ぎるまでどこかに隠れているだろう! そのうちにお客を入れて、夕方を過ぎたらお客をダンスホールに押し込んで、しかる後に奴を捕らえる!」
「どうやってですか!? わたしたちが一晩かけても捕まえられなかったのに!?」
「大丈夫だ。荒事に慣れた連中を、リング奪還に当たらせる。式典までに奪還が間に合えばいい!」
「警察ですか!? 軍隊ですか!?」
「そんな物々しい連中を招き入れたら、お客が何事かと騒ぎ出すだろうが! もっとお客の目に優しく、適度に実力があり、かつ、大人よりも単純かつ安価な動機で動いてくれそうな連中だよ……」
 オーナーは小ずるく笑いました。



 ――パラミタのすべての学園の皆さんへ。
 皆さんには、胸の内を知りたい想い人はいませんか?
 わが『月楼館』には、強く想っている人同士を赤い光の線でつなぐ『赤い糸の契り』という行事があります。
 本来、それに参加するためには、何ヶ月も前に予約して、順番を待たなくてはならないのですが……。
 今回、学生の皆様には特別に、飛び入りでこの企画に参加できる枠をご用意いたしました。
 その代わり……といっては何ですが、ある人物が現在、赤い糸を発生させるピンキーリングを奪って、ホテルの中に隠れているのです。
 皆さんには、その人物を見つけ出し、ピンキーリングを取り返していただきたいのです。
 もちろん、協力してくださった方ならば、リングを取り戻せなかった方でも、全員行事に参加していただけます。
 この機を逃せば、予約をしても数年先まで体験できない、貴重な機会です。
 どうか、皆さんのご参加とご協力を、お願いしたく存じます。

『卯月の満月』当日の朝、飛び込みでバラ撒かれたそのチラシを見て、生徒たちは口々に言います。
「最近心が離れ気味なパートナーと、気持ちを確かめあいたいな……」
「あの人の想い人がわかる……? こ、怖い……けど……っ。気になる!」
「想い人を指し示すブラッドルビーだって!? そりゃあ高く売れそうだぜ! ヒャッハー!!」

 そして『卯月の満月』当日、日が落ち始めて、天窓から真っ赤な夕日が降り注ぎ始めた頃。
 パラミタのさまざまな学園の生徒たちが、月楼館へと集まってくるのでした。



 薄暗く狭い屋根裏を、ミラがぽてぽてと歩いていました。
 小指にはめられたピンキーリングからは、暗闇でなければ視認できないほどのかすかな光が、真上に向かって、ぼんやりと伸びていました。
 ミラは、無感情な赤い瞳に悲しげな色をふとにじませながら、光の差す先を目指して歩いてゆきます。
 上の階へ。また上の階へ……。
「もう一年……。一年も、探し回っているのですよ……?」
 ミラの震える声が、闇に溶けてゆきます。
「あなたが残したこの指輪なら、あなたの居場所を教えてくださいますよね……? 死んでなんて、いませんよね……? ずっと一緒にいてくれるって、約束いたしましたよね……? ねえ、あなた……」
 ミラの問いに答えはなく。ただ、薄ぼんやりと途切れた光が、暗い天井を指していました。

担当マスターより

▼担当マスター

望月 桜

▼マスターコメント

 オーナーやスタッフたちと協力してミラを捕まえ、リングを取り戻し、無事『赤い糸の契り』を成功させて想い人の気持ちを確かめましょう!
 と、言いたいところですが、逆にミラの味方について、リングをちょっぴり貸してもらうのもアリかもしれませんね。片思いの相手にこっそりはめて、気持ちを確かめてやりましょう。
 はたまた、リングを奪い返して、オーナーに返さず持って行ってしまうのもアリかもしれません。だってそんな不思議な宝石、高く売れそうじゃないですか?
 もしくは、せっかくこんなに月の綺麗な夜に、ロマンチックな森の中の洋館へ来られたのですから、もうすでに心の通じ合った相手と、騒動そっちのけでお月見したっていいかもしれません。
 このシナリオに、成功アクションも失敗アクションもございません。好きに遊んでくださるといいと思います。
 アクションを書くときの参考として……アクションそのものの合理性より『キャラクターらしさ』を意識して書いていただいたほうが、うまく遊べると思います。それと、このシナリオでは、アクションと同じくらい、自由設定も重視いたします。
 ただし、月楼館を離れてどこかへ行ってしまうのはNGですので、ご了承ください。
 それでは、赤い花咲く一夜の夢を、お楽しみくださいませ。

月楼館 各階案内
地下
 食糧倉庫やワインセラーなどがあります。
 日の光は一切差し込まないようになっております。
 どちらも、前オーナーの妻が私室として使っていたため、空調や照明が完備されています。
一階
 正面玄関を入ると、受付を備えたロビーが広がります。
 ロビーを中心として、前オーナーの私室(現在は物置)、現オーナーの私室、スタッフルームや厨房など、ホテルの運営にかかわる部屋がすべてここにあります。
 月楼館はロビーを中心にして吹き抜けになっており、ロビーから頭上を仰げば、丸い天窓から空が仰げます。
二階
 ロビーから伸びる中央階段を上ると、二階です。
 中央階段を昇ってすぐ正面には、大きなダンスホールがあります。
 『卯月の満月』の日の夕方からは、ここではパーティが開かれており、宿泊客たちはみんなここにいます。
 二階にはダンスホールのほかに、東西に廊下が伸びていて、15ずつ、計30の客室があります。
 廊下の端からはバルコニーに出られます。バルコニーから伸びる階段で、天窓の上面あたりに位置する屋上に登ることもできます。
三階
 天窓の周囲をぐるりと囲んだ廊下と、六つの客室があります。
 この三階の客室は月楼館でもっとも見晴らしがよく、ロマンチックな場所で、窓からは遠くに輝く街の明かりや、夜空に満ちる満天の星が見渡せます。
 普段は一番人気の部屋ですが、「紅い糸の契り」がある満月の夜だけは、ロビーから遠いために不人気の部屋となります。
「卯月の満月」である今日も、この客室には誰も泊まっていません。
屋上
 丁度、天窓の上面あたりに位置する屋上です。
 ちょっとした展望台になっていて、満天の星空と月を、手が届きそうなほど近くで見上げることができます。
 三階から行くことはできないので、屋上へ行くためには二階のバルコニーから昇ります。
 天体望遠鏡がひとつ据え付けてあるのは、前オーナー夫婦が二人で月見をしていた名残です。

▼サンプルアクション

・ミラを追いかけて、ピンキーリングを取り戻す!

・ミラから、何でこんなことをするのか話を聞いてみる。

・騒動なんかそっちのけで、パートナーといちゃつく。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2010年04月10日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2010年04月11日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2010年04月15日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2010年04月30日


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