天御柱学院

　
　――ヒラニプラ。幾つかある機晶姫修理工房の１つ――

「動いた？　脚が？」
　モーナ・グラフトンは固定電話の受話器に向かっていました。会話の相手は、ファーシー・ラドレクト（ふぁーしー・らどれくと）。ファーシーとは、ほぼ全壊に近い状態だった機体を修理し、銅板から機晶石に魂（データ）を移して以来の付き合いです。
『うん、そう。一瞬だったけど。それにね、脚をなおす方法を知ってるっていう手紙を貰ってね、あと、それに役立つかもしれない機械が……』
「脚が治る？　機械？」
　突拍子の無い話に、モーナは驚くばかりです。
「ちょっと待って、落ち着いて順番に話をして。一体、何があったのかな」
　その問いかけに、ファーシーは１つずつ話をしていきました。空京の街で、銃声に悲鳴を上げた瞬間に脚がぴょこんと動いた事。デパートで剣の花嫁に起きた事件。その原因となったバズーカがエネルギーを補填する一助になるかもしれないという事。そして、手紙とアクア・ベリルについても。
「…………」
　話を聞いて、モーナは考えます。ぴょこんと動いたという事は、脚の筋肉、神経を司る部分にエネルギーが通り始めたという事だろうか、と。ファーシーは『魂が捩れている』と言われ、何かされた後に動いたと言いました。
（あたしが、エネルギーの流れを把握しきれていなかった……？　いや違う。捩れていたのが魂だというなら、データは兎も角見逃したとしても不思議じゃないよ。それにしても、デパートって……）
「ファーシー、そんなに歩きたい？　急がなくても、必ずあなたは……」
『ううん、急いでないよ。みんなに、やれる事は一杯あるって教わったから。そんなに変わらないって、言ってもらえたから。今は、アクアさんに会いたいという気持ちが強いの。友達……だから、会って確認して、本人だったら再会を喜びたい』
「そう……」
　モーナはその答えを聞き、先程の情報を改めて脳内でまとめ、最後に、工房内を見渡しました。修理待ちで眠っている機体が、１体２体３体４体……
（ああーー、いいや、もう）
　そう結論付けた彼女は、ファーシーに言いました。
「そのバズーカ、うちに届けてくれる？　あと、出発は明後日に出来ないかな」
『？　いいけど、まだ祠だし今日はここに泊まるつもりだし……』
「そう、でも明日、帰ったら１度ゆっくり休みなさい。主治医からの命令ってね。……そうそう、そこにラスはいる？　いたら、ちょっと代わってほしいんだけど」
『うん。なんで？　珍しいね』
　電話の相手が交代するのを待つ間、モーナはテレビを注視していました。ニュースが流れています。
『……何だよ』
　ラス・リージュン（らす・りーじゅん）の声が聞こえると、彼女は喋る調子はいつものままに、彼に言いました。
「空京デパートでのテロの犯人、亡くなったみたいだよ。容疑者死亡のまま書類送検の見込み――ってニュースで言ってる」
『……それ、本当か？　２人共？』
　険の篭もったその声色を不思議に思いつつ、モーナは続けます。
「もう１人いるの？　報道されているのは山田　太郎って男だけ。この事を知ったら、ファーシーがどんな行動を取るか判らない。だから、ツァンダに戻ってから伝えてほしいんだよ。それからゆっくりと考えてほしい……頼めるかな」
『…………わかった。でも……』
　ラスは暫く黙ってから、了承し、そして――
『俺が暴走する、とは考えないんだな』
　それだけ言って、電話を切りました。

　　　　　　　　　　　◇◇◇◇◇◇

「……？」
　モーナは受話器を眺め、それからまた別の番号に電話を掛けました。
「……機晶姫修理工房のモーナ・グラフトンです。お預かりしている機晶姫ですが、納品日を数日遅らせて頂けないでしょうか。どうしても工房を離れなければいけなくて……。あたしの顧客について、機晶姫の先達であるライナスさんに話を聞ければと。顧客の名前ですか？　概要？　それは、個人情報ですから……」
　そこで彼女はふと考えます。これは、協力者を募る良いきっかけなのかもしれません。
「名前は、ファーシー・ラドレクト。あたしと同行する人達を募ってください。それと、彼女のキマクへの旅路に同行する人も。何かあった時に状態を把握しておきたいので。これから、各学園にも依頼を出します」

　　　　　　　　　　　◇◇◇◇◇◇

　――空京の街――

「……どうしたの？　こわい顔して」
　電話を切って、無言になってしまったラスに、ファーシーは首を傾げます。声を掛けられ、はっと気付いたように彼は表情を和らげました。
「別に、なんでもねーよ」
「嘘！　何かあるでしょ。モーナさんに何を言われたの！？　吐きなさい！　吐かないとそのオイレ、みんなで壊しちゃうわよ！」
「げ、ふざけんな……！　帰ったら言う、言うって……！」
（結果的に）新しく手に入れた小型飛空挺オイレを慌てて守るようにしてから、彼はふと真顔になります。戻ってきて、うつらうつらしているピノ・リージュン（ぴの・りーじゅん）を親指で指し示しました。
「……こいつ、ちょっと預かってもらえるか？　用事思い出した」
「ピノちゃんを？　………………ピノちゃんを？」
　ファーシーはびっくりしてしばし絶句し、それからもう１度聞きました。ラスがピノと自ら離れたがるなんて信じられない、という感じです。直後、ピノが元気になって言いました。
「イヤだよ、あたしも行くよ！　お兄ちゃん子供だから、何しでかすかわかんないもん！　絶対に行くよ！」
「子供って……わかったよ」
「ねえ、本当に教えてくれるんでしょうね！」
「……多分な」
　ファーシーにそう答えてピノと共にオイレに乗って飛び立つと、ラスは救急センターに電話を掛けました。先程ファーシーから聞いて、剣の花嫁事件の犯人の容姿は知っています。
「……今日、どこかに獣人の救急患者を収容しませんでしたか？　赤茶色の髪をした、両脚に怪我をした獣人です。ええ、知り合いです。街ではぐれてしまって……」

　１人が捕まり死んだというのなら、１人は倒れて収容された可能性が高い。そう思ったのだが、彼は忘れていました。
　チェリー・メーヴィスが山田　太郎と一緒にデパートの監視カメラに映っているという事を――

　……誰だよラスがいじられキャラに戻るって言ったの……。
　私だ。……だって勝手に動くんだもんよこいつ！
　ということで、「魂の器・第１章」です。「銅板娘の５日間」並みに時系列解りにくいと思うので説明です。合わせて、ＰＣ情報、それぞれのスタート地点も説明させていただきます。
　もちろん、途中参加も歓迎させていただきます。

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１、ストーリー開始・空京の街
前回と同日の話になります。
ラスはチェリーと接触することにしたようです。さて、何をやらかすつもりなのでしょうか。
舞台は夜。空京の街と病院になります。場合によっては「ホレグスリと魂の輪舞曲」で出てきた警部と部下のボケとツッコミが出張ってくるかもしれません。

ここでは、マスターページに乗せているチェリー達とアクアの関係が正式に「ＰＣ情報」になります。それを知った皆様がどういった行動を起こすのかは自由です。

・前回、祠に向かったと確認、判定をした方々（主に喫茶店組、祠組全員、デパート、空京で「ファーシーに協力する・一緒にいる」と発言し合流した方々）は、祠スタートでラスを追いかける形になります。動機はそれぞれ自由で構いません。

・前回、デパートでチェリーを目撃している方
現在得ているＰＣ情報を使って、それぞれ動いてみてください。

・途中参加・デパートでチェリーを目撃していない方
ニュースで山田太郎と寺院の関係、テロについては報道されています。他にも、調査可能な情報はあります。その情報を使ってキャラに推理させ、チェリーとの接触を試みてください。（推理方法が統一されるのも何なので、それぞれ適当に理由付けしてみてください）

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２、ファーシーと共にキマクに行く。
日付が変わります。前回の位置、全リセット。蒼空学園スタート。

・祠に向かった方々は、ファーシーが直に語った内容に加え、モーナの出した依頼を受けての参加もできます（祠到着後、ファーシーは改めて、全員に手紙について話をしています）。
・途中参加の方は、モーナからの又聞きとして「脚が動いたこと」「手紙の簡単な内容、目的」が基本ＰＣ情報になります。

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３、モーナと共にシャンバラ大荒野、ライナスの住む研究所へ
「２」と同様、前回の位置はリセットされます。ヒラニプラスタート。ファーシー出発と同日です。

（※重要）
今回は、研究所へ辿り着く「まで」の描写になります。ライナスが本格的に出てくるのは次回の予定です。彼へのアクションはボツ率が跳ね上がりますのでご注意ください。
また、こちらは第２回以降のスタート地点が制限される可能性があります。

機晶技師ライナスは青猫格子ＭＳ「明日を見るために」、宮田唯ＭＳ「明日を見たあとに」、キャラクタークエスト「大荒野の機晶技師」に登場しています。今回、登場許可をいただきましてのゲスト出演です。ありがとうございます！

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上はあくまでも基本情報です。
その他、いろいろと出来ることはあると思います。ぜひガイド、ストーリーの穴を見つけ、自由にアクションをかけてください。

おっと、忘れていた。キバタンの名前募集中です。

それでは、よろしくお願いいたします。

・ラスの暴走を止める

・チェリーに会いに行く

・ファーシーと一緒にキマクに行く

・アクア・ベリルと対峙する

・ライナスの研究所に向かう