【カナン再生記】黒と白の心(第1回/全3回) リアクション公開中! |
シナリオガイド少女を狙う影の魔の手。南カナンの運命はいかに……!
シナリオ名:【カナン再生記】黒と白の心(第1回/全3回) / 担当マスター:
夜光ヤナギ
カナンの地は、確実に滅びへの道を歩んでいました。 ◆ 扉をノックする音が、南カナンの領主シャムスの部屋に響きました。 「開いている」 「失礼いたします」 謹厳な声とともにシャムスの部屋に入ってきたのは、長年、この南カナンの領家で仕えてきた老執事ロベルダでした。 彼は、どこか緊張と喜びを含んだ声色で、シャムスに言葉を続けました。 「東西シャンバラより、先発の者たちを送っていただきました。これで、少なくとも一部戦力は回復したものとなるかと」 「……御苦労だった」 老執事にねぎらいの言葉をかけて、シャムスは窓の外を眺めました。 そこから見えるのは、空より降る雪のような砂と荒れた大地。もはや、そこにはかつての実りあったカナンの姿は、垣間見ることすらできません。 その向こうにかすかに見えるのは、まるで蜃気楼のように悠然とたたずむ『神聖都の砦』の姿。 不気味なそれを、シャムスは睨みつけます。 「ロベルダ、信じられるか? これが、カナンだ。オレの守ってきた、ニヌアの姿だ。緑豊かだったあの日々が、嘘のようにも思える」 「……その美しき日々を取り戻すために、マルドゥーク様が、そして、貴方様が立ち上がったのです」 ロベルダは、シャムスの心を後押しするかのように、真摯な声で彼に告げました。 ネルガルの手からカナンを取り戻すため、西のドン・マルドゥークは東西シャンバラに協力を仰いだらしい。その話をシャムスが聞いたのは、数週間前のことでした。これまでは、ただネルガルに従って生きて、民の命を守ることだけを考えていました。しかし、それが何んとなるのでありましょうか。あの美しき南カナンを、あの美しきカナンの国を取り戻すことこそが、民の本当の願いに他なりません。 シャムスは、だからこそ立ち上がることにしたのです。 「監視の兵によれば、とある石像が砦に運ばれたようです」 「……それを確認するためにも、まずは偵察だ。そして、それからは……戦うことになるだろう」 東西シャンバラの力があれば、これまでは失われていた戦力も、補うことが出来るはず。 シャムスは、殊勝な顔でロベルダに問いました。 「出来ると思うか、ロベルダ」 「やらなければ、ならぬことです」 「…………」 南カナンの若き領主は、纏っていたフルプレートメイルと同じ、漆黒の兜を被ります。 ――“黒騎士”が向かうは、東と西との境にある『神聖都の砦』。そこには、南カナンを監視する征服王ネルガルの手が伸びているはずでした。そして……噂の石像も。 ◆ ドン・マルドゥークの活動は泉美緒の妹、泉美那の耳にも入っていることでした。 東西シャンバラに助力を仰いだ彼は、シャンバラの兵力や冒険者たちの力を借りて、精力的にカナン奪還への歩みを進めているようです。 そんなマルドゥークの活動が徐々に拡大している中、ヴァイシャリーのホテルに帰ってきた美那を、オーナーでもあるラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)が迎えました。 「おかえりなさい。今日もお疲れ様ですわね」 「ラズィーヤさん……いえ、こちらこそ、このような場所を提供していただいて……」 「気になさることはないですわ。これも高貴なるヴァイシャリー家の娘であるわたくしの役目。何かございましたら、いつでもご相談くださいませ」 「……はい」 去りゆくラズィーヤの背中を見送って、どこか物憂げな美那は自分に提供された部屋へと戻りました。 そうして窓辺に佇んで……時間が徐々に過ぎてゆきます。 そのうち、優しげで柔らかな彼女の顔は、ここではないどこかを見て哀しげに歪みました。 「私はひどい人……?」 人知れず呟かれた声は、静かに消えました。 その言葉の意味は、どこにあるのか分かりません。彼の行動なのか、あるいは、東西シャンバラの働きであるのか。しかし、少なくとも、彼女の表情が哀しげに歪んでいることは確かでした。 それから、どれほどの時間が経ったでしょう。 美那は、机の上に置かれている黒水晶に目をやりました。まるで、そこにあるのは自分を縛る鎖のようです。 「…………」 わずかに決意を秘めた色が、彼女の瞳に宿りました。 静かなその決意を知るのは、彼女と――そして、彼女も知らぬ赤き瞳だけでした。 ◆ 「これは……面白くなってきたねぇ」 黒水晶の中に浮かぶ美那の様子を見下ろしながら、にやついた笑みを浮かべる男がいました。 背丈の小さなその男は、まるで下水道に巣くうネズミのような風体をしていました。汚らしいローブを纏い、眼深く被ったフードの奥からは、わずかに漏れる赤い眼光。どこか、不気味な空気を漂わせる男です。 薄暗い男の部屋に、足音が響いたのはそのときでした。 「何をそんなに笑っているのですか」 「おお……これはこれは」 怪訝な声が聞こえた方向に男が振り返ると、そこには神官らしき格好をした女が立っていました。 「それで、様子はどうですか」 「どうやら……こちらを裏切るようですよ」 「やはり、そうですか」 すでに予想はついていたことなのでしょう。 女は冷静に声を紡ぎ、男は苛立ちを誘う笑い声を漏らしました。 「では、あとはあなたにお任せしましょう。よろしく頼みますよ」 「ひひっ……面白い余興が始まりそうですねぇ」 下卑た笑い声をあげる男を、神官の女は不快そうに見つめ返しました。 実力は認めるが、いかんせん、このように物事を軽く観るクセがあるのがこの男の厄介なところです。そして、こちらに虫唾が走るほどに、他人の心を弄ぶのが大好きときています。 ――だからこそ、良い人材なのですがね。 顔こそ見えないものの、にやにやと笑っているであろう男に背を向けて、女は部屋から出て行こうとしました。 「おや、どちらに?」 「ネルガル様のもとに戻るのです。これでも、彼に仕えている神官ですので」 「そちらも大変ですねぇ。では、あとはお任せくだいませ」 女の背を見送って、男――魔女モートは水晶に向き直りました。 「さて、手始めに……影たちを使わせていただきましょうか」 カナンを取り戻すために立ち上がった南カナンのシャムス。そして、泉美那へと迫る謎の影。歯車となるのは、あなたです! 担当マスターより▼担当マスター ▼マスターコメント
初めましての方は初めまして。 ▼サンプルアクション ・シャムスと偵察に向かう ・『神聖都の砦』へと侵入する ・泉美那を護衛する ・モンスターと戦う ▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました) 2011年01月01日10:30まで ▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました) 2011年01月02日10:30まで ▼アクション締切日(既に締切を迎えました) 2011年01月06日10:30まで ▼リアクション公開予定日(現在公開中です) 2011年01月21日 |
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