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ひとひらの花に、『想い』を乗せて

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ひとひらの花に、『想い』を乗せて

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シナリオガイド

雪山深く咲く花を手に入れ、言葉に出来ない『想い』を伝えよう!
シナリオ名:ひとひらの花に、『想い』を乗せて / 担当マスター: 神明寺一総

『コンコン』
「はい、どうぞ」
 蒼空学園の社会科準備室で、手元の書類に目を落としていた五十鈴宮 円華(いすずのみや・まどか) は、ノックの音に顔を上げました。

「失礼しま〜す。あれ〜?円華さんじゃないですか?いらしてたんですか?」
 と微妙に間の抜けた声を上げたのは、蒼空学園の2年生、森下 冬希(もりした・ふゆき)です。森下は、漫画のような真ん丸メガネをかけた、背の低い、ドコか愛嬌のある女の子です。
「はい。空京でお仕事があったものですから」
 円華は、地球の企業と提携して、マホロバの伝統を取り入れたファッションブランドを展開しています。今日は、その企業との会議に出席した帰りでした。

「円華さんも、色々大変ですねー」
「いえ。お陰様で、充実した毎日を送らせて頂いてますわ」
 そう言って、晴れやかな笑みを浮かべる円華。
「アハハハ……。さ、さすが円華さん」
 予想外の答えに、思わず乾いた笑いを返す森下。
『スゴイな〜、円華さんは。私と2歳しか違わないのに、こんなコトを真顔で言って、ちっとも嫌味に聞こえないなんて……』と、思わず感心しています。
「ところで、御上先生は?」
 御上というのは、この社会科準備室の主、御上 真之介(みかみ・しんのすけ)です。非常勤講師であるため、職員室に自分の席がない御上は、他の教師が滅多に来ないのを良い事に、すっかりここを私物化しています。
「先生でしたら、今環菜さんのお見舞いに行ってますわ」
「環菜さん……って、御神楽校長の?」
「“前”校長、でしょ?」
「そうでした。いや〜、どうも未だに、あの山葉さんが校長という事実に慣れなくって……」
 学外者にツッコまれ、頭をポリポリと掻く森下。

 蒼空学園の前校長御神楽 環菜(みかぐら・かんな) は、昨年暗殺者の手に掛かり不慮の死を遂げました。その後を継いだのが山葉 涼司(やまは・りょうじ)です。環菜自身は先日まさに『奇跡』によって復活を遂げましたが、未だ療養中の身であり、校長職は引き続き涼司が勤めていました。
 涼司の校長としての働きぶりについては、森下もそれなりに評価していましたが、何せ校長らしい威厳がいつまでたってもまるで身につかないので、今一つ実感が持てません。

「何してるんだい、森下君。そんなところで?」
声のした方を森下が見ると、ちょうど見慣れた瓶底メガネが廊下を歩いてくる所でした。御上です。素顔を見られることを極端に嫌う御上は、向こう側が見通せないような極厚のメガネを、常に着用しています。
「あ、御上せんせ〜い!良かった〜、先生に相談したいコトがあって……」
「相談?分かった、取りあえず、中に入って。お茶でも飲みながら、ゆっくり聴くよ」

「先生、環菜さんの具合はどうだったんですか?」
 円華の淹れた緑茶を啜って一息ついた森下が、御上に尋ねました。
「うん。『体に負担をかけないように』って事で、面会時間が5分に制限されていてね……ほとんど話が出来なかったんだけど……」
「そうですか……」
 思っていたほどには環菜の回復が進んでいなかったようで、円華は少し暗い顔をしています。
「いつ頃退院出来そうなのですか?」
「それについては、まだ何とも。少なくとも、『地球の』医者はお手上げだよ。なにせ、これだけ長期間死亡していた人間が生き返るなんて、現代医学の常識では考えられないことだからね」
御上は肩を竦めています。
「お付きの治癒士の方は?」
「『もっと彼女に良い “気” が集まれば、回復は早くなるだろう』とは言ってましたが……」
「“気”ですか……」
「はい」
「ワタシ達に出来るのは、祈る事だけってコトですかね……」
「そう言えば、森下君。何か相談事があるって言ってたけど」
 その場に流れ始めたしめやかな空気を敏感に察して、御上が話題を変えます。
「あ、そうそう!聞いて下さいよ、先生!実はですね――」

 話によると森下は、友人にラブレターの代筆を頼まれたのだそうです。その友人は、今度のバレンタインデーにチョコと一緒にラブレターを渡そうと思ったのですが、いくら書いても上手くいきません。 
そこで、日頃報道部で文章を書きまくっている森下に泣きついたのですが、同じ文章でも新聞とラブレターでは全くの別物です。そう思い森下も始めは断りましたが、友人の必死さに、つい引き受けてしまったのです。
「まぁ……地球には、そんな日があるんですね」
 初めて『バレンタインデー』を知った円華は、感心する事しきりです。

「せんせ〜い、ラブレターってどうやって書いたらいいんですか〜」
「どうやって……って、女の子のラブレターなんて、僕に書ける訳無いだろう」
「ですよね〜。あー!どうしよう。今からでも断ってこようかな〜。円華さ〜ん、ラブレターがスラスラ書ける魔法とか、アリマセンか〜?」
 五十鈴宮家は、数千年の歴史を持つ巫女の家柄です。今では彼女の家にしか残っていないような古い魔法を、幾つも伝えています。
「恋文……ですよね。無いことも無いですけど?」
「あ〜、あるんですか〜。そうですよね〜って……、え゛!?あるんですか!そんなの!!」
 円華の意外な言葉に、思わず身を乗り出す森下。
「えぇ。恋文とは少し違いますが――」

 その術の名は『白雪の想い』。
 満月の光の下、五十鈴宮家の秘術を施したある花を、伝えたい想いを込めて手折ります。すると、その花はほんのりと甘く、口に含むとたちまち溶ける砂糖菓子のように変化します。そしてそれを、想いを伝えたい相手に食べさせると、その花を手折った時に込めた想いが、『そのまま』相手に伝わるのだそうです。
「す、スゴイ!そんな、思ったコトがそのまま伝わるなんて!円華さん、その『ある花』って、どんな花なんですか?」
 すっかりその気になった森下が、円華に尋ねます。
深山姫雪草という花です」
『ミヤマヒメユキソウ』ですね。ヤズさん?」
 御上が呼びかけると、彼のパートナーである魔道書のヤズが、すぐさま画像を検索します。

「どれどれ……。うわー!可愛い花ですねー!これがお菓子になるなんて、ホワイトチョコレートみたいじゃないですか?円華さん!これ使えますよ、バレンタインに!それで、どこに生えてるんですか、この花?」
「はい。深山姫雪草が生えているのは――」
「少なくとも、標高3000メートル以上。この季節には、大雪が積もっているような高山の上だね」
 円華に代わり、御上が検索結果を読み上げます。
「え〜、なんだ〜!使えると思ったのにな〜!雪中行軍しないとダメなんですか……」
 ガックリとうなだれる森下。
「『そうそう上手い話はない』というコトだよ、森下君。やっぱり、断ってきた方がいいんじゃないか?」
「うぅ、そうします……。でもこの話したら、『雪山でもなんでも取りに行きたい!』っていう人、いっぱいいると思いますよ。きっと」
「まぁ、そんなモノかも知れないね……。ん?待てよ、『雪山でもなんでも?』」
「どうされたのですか、御上先生。何か、気にかかる事でも?」
「想いを伝える花……。“気”が癒す……そうだ!使える、使えるよ!森下君!!」
「な、なんですか先生?急に大きな声出して」
 森下のその質問には答えず、ヤズに向かって猛然と何かを調べ始める御上。そのただならぬ雰囲気に、二人は声を掛けるのも躊躇われ、御上をじっと見つめています。そして、しばらくの後――。
「よし、何とかなりそうだ!!円華さん、ちょっといいですか?」



「――以上が、計画の骨子となります。いかがですか?山葉校長」
 蒼空学園の校長室。御上は、ここで昨日一晩かけて仕上げたレジュメを手に、涼司にある計画を持ちかけていました。
「なるほど……。確かに面白そうですね。ですが、大丈夫ですか?一般生徒まで参加させて」
「事前に十分な訓練と、高地適応を行ないます。野生動物やモンスターなどは事前に除去する事が可能ですし、雪崩の方はルート選定でかなりの部分防げると思います。モチロン、現地の状況と天候によっては,一般生徒の参加は見合わせます」
「……確か御上先生は、登山の経験が豊富とか」
「登山が趣味なので。地球の『七大陸最高峰』は、全て単独登頂しています。それに、知り合いの登山家にも声を掛けて、協力を要請するつもりです」
「……分かりました。計画を許可しましょう。卜部先生も、参加されるんですね?」
「はい。この計画の話をしたら、『是非取材させて欲しい』と」
 テレビの人気リポーターとして知られる卜部 泪(うらべ・るい)は、蒼空学園の非常勤講師も勤めています。御上からこの計画を打ち明けられた泪は、二つ返事で参加を決めたのでした。

「分かりました。自分も、校長の仕事さえなければ参加するんですが……。御上先生、この計画、なんとしても成功させて下さい。お願いします」
「……微力を尽くします」
 深々と頭を下げる涼司。その真剣な姿に、計画の成功を誓う御上だった。

――翌日。
 蒼空学園を含む全校の掲示板に、一斉に2通の募集が掲示されました。

「――あなたの『想い』が、『癒し』となる―― 御神楽環菜さんの早期復帰に、ご協力下さい!」

「言葉に出来ない、あなたのその『想い』。ひとひらの花に込めて、あの人に届けてみませんか?」

担当マスターより

▼担当マスター

神明寺一総

▼マスターコメント

 心に強く念じた『想い』を、そのまま相手に伝える事の出来る秘術、『白雪の想い』。
 この術の存在を知った御上真之介は、環菜を気遣う純粋な想いを彼女に届け、それを治療に役立てようと考えました。
 現代医学においても、“患者を気遣う家族や親友の存在が、患者の術後の経過を良好にする”という統計がありますが、パラミタには、この『想い』の力を直接治癒の力に変える事が出来る“魔法”があります。人の抱く強い想いは、魔法の効果を飛躍的に高める事が出来ます。
 そして円華も、「以前自分が攫われた時、救出に尽力してくれた環菜を助けられるのなら」と、協力を快諾したのです。

 御上達としては、「一人でも多くの生徒が、環菜に『想い』を贈って欲しい」と考えてはいますが、『花を誰に、どんな想いを込めて贈るか』は、手に入れた人に任されています。
『白雪の想い』に必要な花、『ミヤマヒメユキソウ』は、標高3000メートル以上の、雪に閉ざされた高山にしかありません。しかもそこには雪崩や吹雪といった雪山特有の危険にも、野生動物やモンスターといった、より直接的な脅威も存在します。こういった脅威を取り除き、登山ルートを確立して、一人でも多くの生徒を花の群生地まで導くためには、高い能力を持った多数の契約者が不可欠です。

 大自然の脅威に立ち向かい、命を危険に晒してまで、届けたい『想い』――。あなたは、その想いを誰に贈りますか?



 このシナリオにおけるキャラクターの任務は、「能力の低い一般生徒が、安全に『ミヤマヒメユキソウ』を手に入れられるように、登山ルートの安全を確保する事」です。以後このアクションを、『安全確保アクション』と呼ぶ事にします。
 この『安全確保アクション』は、大きく分けて「登山ルートの確立(登りやすく、雪崩などの危険の少ないルートを発見する、ハーケンでロープを岩壁に固定する等)、物資の輸送、医療活動」といった非戦闘アクションと、「野生動物やモンスターなどの襲撃を警戒、撃退する」戦闘アクションに分かれます。
メンバーに偏りが出ると、アクションに支障が出る可能性がありますので、掲示板などでよく相談しあって、担当を決めると良いでしょう。
尚、登山技術については、事前に十分に時間をとって(1週間くらいの厳しい)訓練をしますので、「今まで登山なんてしたコトない!」というキャラクターでも、熟練者の指示の元で、十分に活躍する事が出来ます。
 
なお、御上は登山ルート開拓班に参加し、円華は『白雪の想い』の術をかける他、治療行為に従事します。御上が応援を頼む登山家達は、一般生徒のフォローに回りますので、MC達とは行動を共にする事はありません。
 泪は、この登山行を記録するためのカメラマン兼リポーターとして参加します。この記録映像は、後ほど編集され、ドキュメンタリー番組として、彼女の勤めるテレビ局で放送される予定です。

 また、雪山登山で通常使用される防寒着、登山器具、野営器具等はすべて供与されますが、ゲーム中に登場するアイテムやスキル、魔法を上手に使う事によって、山中での行動をずっと容易に出来るでしょう。特にこちらから例は示しませんので、皆さんで色々と試行錯誤してみて下さい。

 尚、「飛空艇やワイバーン、魔法等を使って、上空から直接群生地へ行くアクションは、天候等の理由により必ず失敗する」とあらかじめ言っておきます(ただし、べースキャンプへの物資の輸送など、登山を支援する行動は可能です)。
このシナリオのキモは“雪山の危険の克服”にあります。是非苦労と危険を存分に味わって下さい。折角そこに山があるのに、ロープウェーやスカイラインで直接山頂に行っても、面白くも何とも無いでしょう?

この他、登山ルートの安全が確立された後に登山する、『一般生徒』として参加する方法もありますが、この一般生徒があまりに多くなり、安全確保に携わる生徒が少なくなると、任務そのものの失敗もあり得ます。注意して下さい。

 次に、アクションの記述方法に付いての注意を記載します。非常に重要ですので、よく読んで理解した上で、アクションを記述して下さい。

 既に書きましたが、このシナリオはバレンタインモノではありますが、あくまでシナリオのキモ
は「雪山の危険の克服」あり、「手に入れた花を誰かに贈る行動(以後プレゼントアクションと呼びます)」は、むしろオマケです(断言)。

 このため、安全確保アクシヨンを取るMCで、プレゼントの描写も希望する場合は、必ず最低1人はLCを参加させて下さい。LCの参加が1人でもあれば、「安全確保はMCのアクション、プレゼントはLCのアクション」とみなし、両方共描写させて頂きます。
ですが、MC1人での参加で、安全確保行動とプレゼント両方のアクションを提出された場合、“ダブルアクション”とみなし、ブレゼントの方は描写致しません。

 これは、あくまでMC1人によるダブルアクションを防ぐための処理です。例えば、MCとLCが一人ずつ参加した場合でも、「MCは安全確保のみの描写、LCはプレゼントだけの描写」とはなりません。
 この場合、「MCとLCそれぞれの安全確保アクシヨンと、プレゼントアクションの両方」が描写される事になります。

 なお、安全確保を行わない、一般生徒としての参加であっても、例えば「慣れない雪山登山に苦労する」というようなプレゼントアクション以外の描写を希望される場合は、やはりLCを1人参加させて下さい。
 「安全確保のみ」あるいは「プレゼントのみ」の描写で良い場合は、LCの参加は必ずしも必要ではありません(モチロン、参加して頂くのは構いません)。
 もし、「安全確保のみ」で参加された場合、そのキャラクターは、自動的に環菜に花を贈る事になります(あえて「花には手をつけない」と明記するのも、モチロンアリです)。

 皆さんが登山することになるマレンツ山は、ヒラニプラ山脈にある、標高7000メートル級の高山です(皆さんが登るのは、その森林限界である標高3500メートル付近までです)。
山の麓から1500メートル付近まで深い谷があり、そこを通れば吹雪の影響をほとんど受けずに済みます。しかし、冬場その谷には、吹雪を避けるために多くの野生動物が移動して来るそうです。
この谷より上の地域についてですが、地球とは異なり、パラミタではレジャーとして登山を行う事が一般的ではなく、しかも元々周辺にあまり人が住んでいないため、詳しいコトはよく分かっていません。

 麓の村の住人によれば、ミヤマヒメユキソウの群生地の付近では、しばしばフロストジャイアントが目撃されている他、「山頂には、年老いたホワイトドラゴンが棲みついている」という伝承が、代々伝えられているそうです。

 最後に、このシナリオガイドへの記載の間に合わなかった情報や、後から思いついたネタ(笑)などがマスターページに記載される可能性がありますので、気になる方はご覧になって下さい。
 アクション提出締切りの24時間前までは、更新する可能性があります。

 それでは、「自分の『想い』を行動で示そう!」という気概溢るる皆さんの参加を、楽しみにしております。

▼サンプルアクション

・御上先生と一緒にルート開拓に従事する。

・円華さんと一緒に、ケガ人の治療に専念する。

・環菜に『想い』を届けるため、戦闘班として参加。

▼予約受付締切日 (予約枠が残っている為延長されています)

2011年02月01日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月02日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年02月06日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年02月21日


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