天御柱学院

　サルヴィン川にほど近い地方の地下に、地下水路が存在することが判明しました。
　調査結果をまとめたラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）は、いくつもの資料を照らし合わせ、結論づけました。
「これは、古王国時代の下水道ですわ」

　ラズィーヤによれば、その下水道は古王国時代、わけ合って封印されたものでした。そのわけとは、少々複雑なものです。
「古王国時代、サルヴィン川を中心に海賊……ではなくて、川ですから、水賊が出没していたという記録が残っております。神出鬼没な上に魔獣を何匹も引き連れていて、退治には難儀したようですわ」
　そして、その神出鬼没の秘密こそ、この地下水路でした。

「彼らは下水道に住み着き、サルヴィン川を渡る船を見つけては襲いかかっていたのですわ。それを突き止めた古王国軍は討伐に乗り出し、ついに彼らを討ち取ったのですが……」
　ふう、とラズィーヤがため息をつきます。

「彼らの魔獣が下水道に残ってしまったのですわ。この魔獣はみな、水とわずかな養分があれば仮死状態で生きられるようで、地下水路に水が流れている限りは、おとなしくし続けていたのですわ。
　ですから、古王国は討伐の必要なしと判断し、下水道を封印。地下水路に水を流し続けるため、女王器を設計。水源に当たる場所に設置したのですわ。ですが……」
　そして、話は現在に至ります。

「開発の影響でしょうか。それとも、どこかのお馬鹿さんがこの水路に入り込んで養分になってしまったのかしら、魔獣が活性化しているようですの。先頃に女王器が暴走したのは、おそらくこの魔獣の暴走に対抗するため、と見て間違いありませんわ」
　その女王器は暴走をきっかけに、設置された町を守るために破壊されました。
　つまり、この水路にかせられた封印が、解けようとしているのです。

「放っておけば、魔獣が水路から這いだしてきて、サルヴィン川に……あるいは、ヴァイシャリー湖にまで現れるかもしれません。そうなる前に、あなた方にはこの魔獣どもを退治していただきたいのですわ。
　そうそう、それに、水賊が古王国から奪った宝がまだ水路に眠っているはずですの。それも、現シャンバラ王国のために徴収いたしますから。見つけてきてくだされば、それなりのお礼はいたしますわよ」

　水路から水がなくなってしまえば、魔獣が水を求めて水路から這いだしてくるのは想像に難くありません。そうなる前に、この水路に巣くう魔獣を退治し、宝を回収する依頼が各校に張り出されました。


　さて、イルミンスール魔法学校のアッシュ・グロック（あっしゅ・ぐろっく）が早速地下水路に潜ったところ、すぐに手傷を受けて戻って来ました。
「こいつは油断ならねえぜ……」
　アッシュは治療を受けながら、皆に中の様子を伝えます。

「魔獣とひとくちにいっても、いろんな奴が居るぜ。一番数が多いのは、スライムの姿をした魔獣だ。あまり強くはないが、数が多い。俺様のような優秀な魔法使いならともかく、多くの敵を相手するのに慣れてない奴だったら、あっという間に囲まれて体じゅうに取り憑かれちまうだろうな」
　アッシュはそのときの様子を思い出すように、首を振ります。

「水が深いところには、鮫に似た魔獣がいるぜ。水の中ではこいつらほどの機動力を持つやつは居ないだろう。でかいアゴで食われたくなかったら、水中で動ける自信があるやつ以外はあまり深い場所に潜らないことだな」
　そして、アッシュは見てきたものを思い出し、ぞっとしたように震えました。

「最深部には、でかいタコみたいな魔獣が居る。水路に居る中じゃ、あいつが一番強いと見て良いだろうな。何本もある触手で、近づく奴を捕まえて食う気だぜ」
　アッシュは横たえられたまま、注意を促します。

「宝探しするなら気をつけろ。この水路、定期的に鉄砲水みたいに激しく水が流れる時があるんだ。どこかに排水してるんだろうが、飲み込まれたらどこまで流されるか分からないぜ、ちゃんと対策を考えておくんだな」

　さて、地下水路に眠る魔中と宝は、いかなる結末を迎えるのでしょうか？

　初夏の候、いかがお過ごしでしょうか。ゲームマスターの丹野佑です。
　このところの盛暑を初夏と呼んでいいのかどうか大いに疑問なのですが、それは置いておいて。

　本シナリオはノーマルシナリオ『長雨の町を救え！』の後日談となっていますが、完全に独立したシナリオです。同シナリオに参加していたことで、有利になったり不利になったりすることはありません。

　本シナリオの主旨は以下の通りです。
１、地下水路に巣くう魔中を退治する。
２、地下水路に眠る財宝を見つけ出す。

　本シナリオの目的は、地下水路に潜む脅威を排除し、また宝物を回収することです。
　依頼は各校に出されていますので、どの学校の生徒も気軽に参加できます。

　本シナリオの舞台である地下水路は、シャンバラ古王国時代に作られたものです。当時は下水道でしたが、長く使われていないため、今は大部分をきれいな水が流れています。また、水の深さは場所によって様々で、足首が浸かる程度の深さから、潜らなければ通れない箇所もあるようです。

　なお、シナリオ中で水路にある宝を手に入れる事になりますが、特定のＰＣに渡されるわけではなく、シナリオの報酬として、参加者全体で分け合う形になります。

　なお、ウェットスーツや空気タンクなどのスキューバダイビングに必要な道具などは、ラズィーヤが手配してくれます。

・スライム型魔獣と戦う

・鮫型魔獣と戦う

・蛸型魔中と戦う

・水賊の宝を探す