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大廃都に残りし遺跡~魂の終始章~

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大廃都に残りし遺跡~魂の終始章~

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シナリオガイド

――アルカディアにて。行方不明の2人を探しつつ、最奥に辿り着こう!
シナリオ名:大廃都に残りし遺跡~魂の終始章~ / 担当マスター: 沢樹一海

 ヒラニプラにある大商家、スリーウォンズ。商店の裏口から庭を隔てて屋敷があり、隣には倉庫、反対隣にはワイバーンとレッサーワイバーンの寛ぐ大きな建屋があります。
 その倉庫の中にて。
トルネ、見つかったー?」
「うんにゃ、まだ……」
 姉の声に、トルネと呼ばれた猫目の少年は埃臭い在庫を漁りながら適当な返事を返します。探しているのは、在庫リストにはあるけれど、誰も注文しないままに忘れられていた品。
「お、あった……ん?」
 膝と手を使って奥にある目的の品に近付き、トルネはその横にあった古い木箱に目を止めました。蓋を開けた中に入っていたのは――

「はい、注文の品だぜ」
「ありがとう、ご苦労様」
 木箱を受け取り、機晶技師モーナ・グラフトンはトルネと代金の遣り取りを済ませました。玄関を閉めようとしたところで足を挟んでそれを阻止され、彼女は「ん?」と目を瞠ります。
「あれ、まだ何か用?」
「……実は、ちょっと話が……」

「……あれ、お客さん?」
「ああ、うん、気にしないで」
 トルネが工房の中に入ると、寡黙そうな男性が茶を啜っています。モーナは彼の向かいに座りました。
ライナスさんが研究所を出てこっちに来るなんて……、明日あたり、嵐にならなきゃいいですけど」
「君も彼女も研究所まで来るのは大変だろう。君が暇になるのを待っていたら、いつまで経っても施術が出来ない」
「施術は明日ですよ?」
 淡々と言うライナスに、モーナはまだ納得がいかないようです。ファーシー・ラドレクト(ふぁーしー・らどれくと)に子を宿す為の施術をするのは、明日。常に研究に没頭している彼が1日をふいにするような行動を取るなど、珍しいことこの上ありません。
「久しぶりに大廃都にも行ってみたいしな。何か面白い物が見つかるかもしれない」
「大廃都!?」
 会話を聞いていたトルネは、その言葉に過敏に反応しました。
「どうしたの?」
「うん。俺がしたかった話なんだけど……、これを、うちの倉庫で見つけたんだ」
 トルネは勢い込み、ショルダーバッグの脇からはみ出ていた紙筒を取り出しました。散乱している部品をどかし、テーブルの中央に広げます。ライナスには、その正体がすぐに分かったようです。
「大廃都の地図だな。随分と古いが……この印は何だ? 神殿の横に林檎のような絵が描いてあるが……」
智恵の実だよ」
 わくわくと声を弾ませ、トルネはこう続けます。
「この実を食べると、完成したばかりの機晶姫にも知性と理性、感情が宿ってコミュニケーションが可能になったって話だよ。古いおとぎ話だけどね。俺達みたいなシャンバラ人でも、食べると新しいアイデアが浮かんできたり仕事で大成したりって効果があったみてえだ。うちの先祖も、それでここまで大きな商店を作れたって聞いてる」
「……機晶姫に影響、か……」
「ただ、ある時に樹が切られて燃やされて、実が手に入らなくなってしまった。でも、この印は……きっと、当時の人が残った実をこっそりと保存して地図を残したんだ」
「…………」
 ライナスは地図をじっと見詰めています。林檎の絵の傍には掠れた古代文字で『アルカディア』と書いてありました。
「なあ、一緒にこの神殿に行ってくれねえかな。ここには、昔の機晶技師が作った仕掛けが幾つもあるみてえなんだ。他にもいろいろあるだろうし……」
「……ねえトルネ、もし本当にその実があったとして、見つけてどうするの?」
「どうするって、そうだなあ……」
 トルネは思案顔になり、やがて猫目に意志を込めて言いました。
「とにかく、一目見てみてえんだよ! 俺は、この世の全てのアイテムをこの目で見て扱えるようになって、世界一の商人になるんだ!」
「ふむ……」
 それを聞いて、ライナスは腰を上げました。
「分かった。私も一緒に行こう」

              ◇◇◇◇◇◇

「……帰って来ない?」

 その翌日――
 灰色の分厚い雲に覆われたヒラニプラの地に、ファーシーは予定通り訪れました。御神楽 環菜(みかぐら・かんな)ルミーナ・レバレッジ(るみーな・ればれっじ)ピノ・リージュン(ぴの・りーじゅん)に引っ張ってこられたラス・リージュン(らす・りーじゅん)、技術自体に興味がある、というアクア・ベリル(あくあ・べりる)も一緒です。彼女の肩にはペットのガーマル・モフタンもいました。
「出掛けたのは昨日の昼過ぎ……。そろそろ丸1日経つし、捜索依頼を出したところなんだ。ライナスさんが一緒だし万が一ってことは無いはずだけど、何かの理由で動けなくなってる可能性は高いからね。だから、施術は2人が無事戻ってからってことになるよ。ごめんね」
「うん……。……そっか、それは心配ね……」
 モーナの話を聞いて、ファーシーは少し表情を曇らせます。
「………………………………………………」
 どれだけ考え込んでいたでしょうか。何を思ったのか、面を上げた彼女は笑顔を取り戻していました。
「その神殿、わたしも行くわ!! 大廃都……って、近いんでしょ?」
『!?』
「……ファーシー!?」
 驚く皆の中で、アクアが一際驚いた声を出しました。彼女は自分で自分の声に驚き、一つ咳払いして続けます。
「話を聞いていたのですか? モーナが『捜索依頼を出した』と言ったでしょう。私達が無理に行く必要はありません。空模様も優れませんし、この場で戻るのを待ちましょう」
「でも……その智恵の実っていうのも気になるし。見てみたいし」
 その口調には微かな好奇心が混じっていました。行きたがっているのは、ライナス達が心配だからだけではないようです。
「智恵の実、ねえ……眉唾にしか思えないな」
 誰もが一度は聞いたことがあるであろう有名な果実の名に、ラスは興味無さげな目で呟きました。有名過ぎて、逆に信憑性が感じられません。勿論、本物であれば途轍もない発見なのかもしれませんが――
「しかも、何か微妙に混じってないか?」
「アルカディア……理想郷。楽園には違いないわ。それでも、例の物だとは思い難いわね」
 環菜も“実”が本物だとは思えません。仮にそう呼ばれていても、その実態は全く別のものなのではないかと考えます。そんな地球人2人の意見に、他の皆は不思議そうな顔をしました。パラミタ大陸で生まれた彼女達は、『智恵の実』という言葉自体初耳です。
「でも、何かがあることは確かなんでしょ?」
「……お前なあ、ここに何しに来たか分かってんのか? 遺跡だか神殿だか知らねーけど、子供を作ろうってのにそんな危なそうな場所……」
 そこまで言って、ラスは口を噤みました。『子供を作る』。新たな命を機体内に宿せば、ファーシーは暫くは安静にしていなければいけません。
 アルカディアに行きたいというその言葉は――

 歩けるようになった彼女の初めての、そして今年最後の冒険への希望なのです。

「まあ、どうしてもって言うならついて行ってもいいけどな。ピノは……」
 見下ろすと、ピノは瞳をきらきらと輝かせてこちらを見つめていました。『残れ』なんぞと言ったら鳩尾に強烈タックルを食らいそうです。
 アクアも溜息を吐き、同行する旨を言葉にします。
「……仕方ありませんね、私も行きます」
「大勢で行っても仕方が無いし、私は残るわ。情報もこちらの方が分析しやすいでしょう。……ルミーナ、あなたも残りなさい」
「……わかりました」
 環菜の指示にルミーナは素直に頷きます。それでもやはり心配なのか、彼女はファーシーの手を取りました。
「ファーシーさん、危険だと思ったら無理をせずに引き返してくださいね。何かあったら、必ず連絡をください」
「うん。……必ず!」

 話をしているうちに、外は嵐になっていました。何処からか感じる不穏さを払拭出来ぬまま――
 仲間と共に、彼女達は『アルカディア』に向かいます。

担当マスターより

▼担当マスター

沢樹一海

▼マスターコメント

お久しぶりです。沢樹です。こちら舞台はヒラニプラですが、学校制限はありません。

モーナが出した依頼により、捜索は既に始まっています。故に、NPC組の最奥部到着は後半になる予定です。ライナス&トルネ救出、及び智恵の実発見は皆様の力で行ってください。
ガイド内にて居残り組NPCとアルカディア組NPCを示していますが、これはあくまで現時点での立ち位置となります。

では、シナリオの補足です。

《参加者全員が基本的に得ているPC情報》
・大廃都の『アルカディア』という神殿に行ったきりライナスとトルネが戻らない。
・『アルカディア』には智恵の実なるものがある。

PC情報は以上です。以下は基本PL情報になります。(工房で情報を得てから出発する場合はPC情報としても扱えます)

<ライナス&トルネの場所>
神殿内の壁を壊そうとしたりすると、強制ワープを食らってとある部屋に閉じ込められてしまいます。彼等は、その部屋に居ます。脱出しようと壁を攻撃すると強制ワープで部屋の中央に戻されてしまう為、2人は動けずに困っています。
脱出方法→外から内から、と、自由に考えてみてください。

<智恵の実>
地球人2人が何か言ってましたが、存在します。形態不明(予測アクション可)。摂取してみたいという方は摂取後の効果についてお書きください。(ただし、自由設定に盛り込める範囲でお願いします。他マスターシナリオで有利になるような設定はNGです)
例:失くしてた記憶が戻るとか、運動神経が開花したとか、肌の露出を恥ずかしがるようになったりとか。

・神殿内にいる間、PC達のレベルはアクション提出時+5相当になります。……まあつまり、少しだけ強くなるという事です。ただし、レベル100の場合はそれ以上にはなりません。

・床には罠がある場合があります。足で踏むとカチッ、とか音がして罠が作動します。運が良ければSPや体力を回復してくれます。運が悪ければ……? 中には、入口まで戻される罠もあります。

・遺跡のどこかに、情報管理所があります。剣を持ったガーゴイルが守護者です。情報の書かれた薄い本を管理しています。盗もうとすると襲い掛かってきます。レベル60相当。知能が高く理屈っぽく、人の言語を理解します。何だかんだと言って本を渡そうとしません。人の善悪基準ではなく、守護者としての善悪基準を持っています。

・『アルカディアに行きたい』『アルカディアに行く』という台詞を盛り込む場合はお気をつけください。
・場合によっては重傷描写もありえます。

・機晶姫を狙う機械人形がいます。ほぼ自動的。石と意志を持っていませんが、多少の智恵があるようです。

他、こんな罠があったら面白い、こんな魔物と戦ってみたい! こんな仕掛けがありそうだ等ありましたらばしばしアクションにお書きください。いえむしろ書いてくださいお願いします。
ラスボスは特に設定していません。アクション次第。
ダンジョンの最終形を作るのは、皆様のアクションです。

ストーリーの最後に、《モーナ・グラフトンの工房》にてルヴィ・ラドレクトの銅板に残る彼の情報を使ってファーシー・ラドレクトに子を宿す施術を行う『予定』です。『〜銅板娘の5日間〜』の結婚式参列同様、メイン活動以外として立会いを希望される方は【立会い希望】とお書きください。その場に居る、別室待機等にはなると思いますが描写させていただきます。(ただし、施術そのものに参加出来るのはアーティフィサー及びテクノクラートになります)
シリーズ初参加の方は「捜索依頼を知った時点でモーナに直接事情を訊いた」という形で立会いが可能です。

※キャラクターの立ち位置により持つPC情報も変わってきます。その辺りはお気をつけください。

それでは、よろしくお願いいたします。

▼サンプルアクション

・『アルカディア』に入って最奥を目指す

・ライナス達を助け……に行って閉じ込められる

・工房にて機晶姫談義

・ファーシーの施術を行う

▼予約受付締切日 (既に締切を迎えました)

2011年08月29日10:30まで

▼参加者募集締切日(既に締切を迎えました)

2011年08月30日10:30まで

▼アクション締切日(既に締切を迎えました)

2011年09月03日10:30まで

▼リアクション公開予定日(現在公開中です)

2011年09月28日


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