天御柱学院

「隼斗、このまま真っ直ぐ行くの？」
　ヴァイシャリーの東に広がるジャタの森。
　その上空を箒で飛びながら、篁　雪乃（たかむら・ゆきの）が後ろの篁　隼斗（たかむら・はやと）に呼びかけました。
「うん。『アレ』がちょっと気になるけど、森を通った方が良いんじゃないかな」
　そう答える隼斗の視線の先にはザナドゥの世界樹であるクリフォトの分身の姿があります。
　ジャタの森では先日、クリフォトの分身を顕現させ侵攻を試みた魔族側とシャンバラの契約者達による戦いがありました。
　契約者達の活躍で一度はクリフォトを打ち倒したものの、残った魔族の力によって東に再び出現。現在も緊張が続いた状況にあります。
　そんな中、雪乃達は同様に戦いが起きているカナンへと向かう為、こうして空を飛び続けていました。
　
「……ん？　雪乃、ちょっと待って」
「どうしたの？」
「下の方に今何か……いた！　あそこで誰かが倒れてる！」
　
　森の中に急いで降下した隼斗達が見た物は傷付いた獣人の男と、それに寄り添う女の子でした。
　女の子は突然現れた隼斗達に驚き、男にすがり付きます。
「あ、あの……」
「大丈夫だよ、僕達はそっちの倒れてる人が心配なだけだから。ちょっと診せて……やっぱり怪我してる。本格的な治療は出来ないけど……」
　女の子に優しく笑いかけ、男に応急処置を施す隼斗。幸い彼は命に別状はなく、程なくして意識を取り戻しました。
「あぁ……助かりました。あなた方はあの盗賊達とは違うのですね」
「盗賊？　おじさんはその盗賊達に襲われたの？」
「えぇ、実は――」
　雪乃の質問に男が答えます。
　彼らはジャタの森で小規模な集落を営む獣人達で、先日のクリフォトの出現によって集落が被害を受け、一時的に避難をしていたそうです。
　クリフォトが東に移動した事で集落跡に再集結した際、貴重品の収納に利用している近くの洞窟が崩落しかかっているのを発見。
　中にある文化財などを運び出そうとした所、混乱に乗じて発生した盗賊達によって襲われて再び彼らは散り散りになってしまったとの事でした。
「むぅ〜、酷い目に遭った人達を狙うなんて許せない！　隼斗、あたし達で何とかしよ！」
「うん、放っておく訳にはいかないね。兄さんにも連絡して協力してくれそうな人と一緒に来てもらおう」
　憤る雪乃に隼斗が頷きます。
　さっそく二人は兄である篁　透矢（たかむら・とうや）に連絡を取り、彼と知り合いの遺跡研究者を通じて応援を呼ぶ事にしました。
　
「あ、あの……私も連れて行ってくれませんか？」
　兄達の到着を待っている間、獣人の女の子が隼斗におずおずとそうお願いをして来ました。当然ながら男の方は良い顔をしません。
「ミソラ、無理を言うんじゃない。洞窟にはあの盗賊達が残っている可能性が高いんだぞ」
「そうだね。僕もその人と同じ意見だよ……何かあるのかい？」
「その……笛を……笛を持って来たいんです」
　ミソラが言う笛とは、文化財を保管してある場所にしまってある篠笛に似た横笛でした。彼女の亡き母が使用していた、大事な笛です。
「母親の形見、か……」
　同じく幼い頃に両親を亡くしている隼斗達にとって、それは他人事ではありませんでした。
　優しい笑みを浮かべながらミソラの頭を撫で、彼女に応えます。
「分かった。僕達がキミを護るよ。お母さんの大事な物、ちゃんと持って帰ろう」
「は、はい……！」

　
　同じ頃、洞窟の入り口には一人の男が立っていました。白衣を着たその男はかすかな明かりの見える洞窟の奥をじっと見つめています。
「ふむ……崩落の副産物という訳では無いが、中も所々貫通しているか。大した物があるとも思えんが、このまま奴らの好きにさせるのもな……」
　とある『組織』に属する彼。
　盗賊達の姿を見つけたのは偶然ですが、無駄に力をつけさせるのも好ましくないと思い、妨害に入る事を思い立ちました。
　
　
　それぞれの思惑を抱えた複数の勢力が入り乱れる洞窟。その中でミソラは形見の笛を無事に運び出す事が出来るのでしょうか。
　
　――さぁ、あなたは何を手に入れ、何を護りたいですか？
　

　皆さんこんにちは。風間　皇介のシナリオ第十弾となります。
　今回はジャタの森にある洞窟で、盗賊達を退けつつ獣人達の大事な品を運び出そうという内容です。
　抽選上の有利不利はありません。どの学校の方もどうぞご参加下さい。
　
　
　主な参加動機は「篁家から連絡を受けた」「遺跡研究者（ザクソン教授）から依頼を受けた」などになります。
　
　
　なお今回ですが、出だしは【ザナドゥ魔戦記】のキャンペーンにおける結果を基にしたシナリオとなっています。
　が、【ザナドゥ魔戦記】での実績が今回のシナリオに反映される事は基本的にありませんし、今回の結果が【ザナドゥ魔戦記】の他シナリオに反映される事もありません。
　「教授の協力者ＶＳ（又は共闘）『組織』ＶＳ盗賊」という図式の為、【ザナドゥ魔戦記】において魔族側にいる方であっても問題無く教授側に立って戦う事が出来ます。
　また、カナンやザナドゥなど別の場所で戦っている方であっても時系列的な矛盾は無視してご参加頂けます。


　では状況説明を。
　舞台となる洞窟はジャタの森の集落のそばにあります。
　ここには様々な物が保管されていましたが、クリフォト出現の影響で集落共々被害を受け、一部で崩落が発生しました。
　その為元々は一本の通路と六つの部屋（空間）で構成されていたのが、網の目状に広がる新しい通路と五つの出入り口が貫通して非常に複雑な構造と化しています。
　なお内部では範囲系スキルの様な洞窟自体に刺激を与えるものは控えた方が良いでしょう。
　特に新しく出来た通路などは非常に崩壊し易くなっています。
　（加減にさえ気を付ければわざと塞いで盗賊の逃走を防止する事も出来るでしょうが）
　
　また、洞窟内部には御神体があり、それによって生み出されたガーディアンが侵入者へと攻撃を行います。
　動きは若干鈍いですが防御力が高く、洞窟の範囲内で追跡してきます。これは盗賊含め、どの勢力相手でも変わりません。
　ただし獣人相手には一切攻撃を行ってきません。（反撃はします）
　
　
　洞窟内の主なエリアは以下の通りです。目的はここから物を外に運び出す事にあります。
　
　第１エリア：僅かですが金品が蓄えられている場所です。
　第２エリア：保存食など、食料が蓄えられている場所です。
　第３エリア：絵画や集落史など、書物系の物が保管されている場所です。
　第４エリア：楽譜や楽器など、音楽関係の物が保管されている場所です。
　第５エリア：農具や狩猟具などが保管されている場所です。
　第６エリア：御神体のある場所です。
　
　第６エリアは特殊で、獣人以外は部屋の入り口にある障壁に阻まれてしまいます。
　（その為、ＭＣや獣人以外のＬＣは部屋の手前で待機する形になります）
　御神体は壁と一体化している石像の為持ち出せませんが、ここで祈りを捧げる事によりガーディアンの思考を「大まかに」設定出来ます。
　（例：「盗賊のみを攻撃する」「第３エリアでは戦闘行為をしない」など。「特定の誰かのみを狙う」といった高度な指示は不可です）


　なおおまけ要素として、中にある宝石や文化財のアイデアを募集します。
　アクション欄に余裕があればで結構ですが、案を書いて頂ければリアクション内で採用させて頂く場合があります。
　（例：絵画【海の風景】　５０年前、集落出身の若者がパラミタ内海を描いた物。世間には公表されなかったが、独特なタッチから集落の者達には人気を博した）
　ただし、応募数や内容（ジャタの森の小さな集落にありそうかどうか）によっては採用出来ない事もありますので、予めご了承下さい。
　また、採用された場合でも実際にアイテム化される事はありません。あくまでおまけとしてお楽しみ下さい。
　
　
　○悪役ＰＣについて
　
　今回は盗賊以外に『組織』の協力者としても動けます。
　この場合、伝達が早かった関係で篁家や教授の協力者よりも先に洞窟へと進入出来ます。
　『組織』の目的は中にある文化財などを手に入れる事です。
　ただし、「盗賊に盗られるくらいなら自分達で戴いてしまえ」といった程度の動機なので強制力はあまりありません。
　教授達の協力者が洞窟を目指している事も知らないので、彼らと出遭った際の行動（敵対・共闘）もそれぞれに一任されています。


　登場ＮＰＣは以下の通りです。
　篁家ＮＰＣについての補足はマスターページにあります。そちらもご参照下さい。
　いつも通り、篁家に対する交友関係もご自由にどうぞ。
　
　○ミソラ
　猫型獣人の１３歳の女の子です。
　既に両親を亡くしており、母親の形見である笛を持ち出す為に正規の入り口から第４エリアを目指します。
　非契約者ですので戦闘力はありません。

　・篁　隼斗：ミソラの護衛として行動を共にします。
　・篁　雪乃：ミソラの護衛として行動を共にします。
　・篁　透矢：通路で盗賊の退治を行います。『組織』に対しては相手に敵対の意思が無い限りは攻撃しません。
　
　上記以外の篁家の兄弟に関しては、アクションがあった場合のみ登場します。

　・ザクソン教授：マジックアイテムや遺跡などの発掘を行っている教授です。今回は依頼を出すのみで登場はしません。
　

　獣人達の伝統文化を護れるか。そしてミソラの想い出の品はどうなるのか。
　あなた方一人ひとりの行動が、その結末を左右する事でしょう――
　

・【１】盗賊の討伐を手伝う

・【２】文化財の運び出しを行う

・【３】ミソラの護衛を行う

・【４】『組織』の協力者として行動する