天御柱学院

　とある遺跡の門の前。



「だから、最初がこの遺跡じゃ、ハードルが高すぎるって言ったんですよ……」



　”ソフィアの瞳”のサブリーダーであるツライッツ・ディクスは頭を抱えていました。
　今日は、調査団への新規入団者への研修の為に、調査団のメンバーたちはとある遺跡を訪れていたのですが、どれだけ待っても先に行かせた新人たちからの応答がないのです。
　ですが、全員が失敗した場合の合図もないので、恐らく、ダンジョンのどこかで足止めを食っているのでしょう。
　調査団リーダー、クローディス・ルレンシア（くろーでぃす・るれんしあ）はため息をつきました。
「そんなに難しくないはずだがな。レベル設定は２にしてあったはずだし、生命の危険は取り払ってある」
　情けない、と言わんばかりの声に、ツライッツは違う意味でため息をつきながら首を振りました。
「あの人たちにレベル設定なんて意味はないですよ」
　どうやら遺跡の中にいる人物たちは、一筋縄ではいかない人達のようです。
　それ自体は否定できないようで、クローディスも苦笑しました。
「まあいい、最悪お前が向えば一発で……」
「絶対に嫌ですッ！」
　クローディスが言いかけると、珍しく強い口調で、ツライッツはぶんぶんと首を振ります。
「仕方ない……アルファーナ、参加者を追加するが、構わないか？」
『もちろんですわよ、お姉さま』
　そんなツライッツに呆れつつ、クローディスが取り出した通信機の先で、誰かの声が応えました。
　すると、遺跡の入り口が、まるで手招きするかのようにその門を開いていきます。
「条件とレベルは保持してくれ。全員脱落した場合は合図を頼む」
『はぁい。レベル２保持のまま、ご新規様お待ちしておりますわ』
　どうやらクローディスは、この遺跡に対して何かの因縁があるようです。
「……と、言うわけで、だ。君達もここで見学しているばかりも、つまらないだろう？」
　挑戦的な目で、クローディスは契約者たちに向って笑いかけました。
「誰か一人でもクリアすれば、全員帰還できる。難易度は高くない。まあ、日帰りレベルだ」
　説明しながら、クローディスは皆に、新人たちへ渡したのと同じメモを渡しました。
　そこには、古い文体でこのように書かれています。


　右手に松明を取りて見よ
　はためくその先はいずこ
　しずまり音聞かば其が道
　読むように辿れば俄かに
　めばえし希望の如き扉は　　　　　　
　ばらばらと先に真はない
　答えとは決断にこそあれ
　

「ヒントは一つ。この文章を”よく見る”こと」
　そう言って、クローディスは、これをどうしろと、と言わんばかりの皆に、人差し指を立ててひらひらと振りました。

「折角だ。この”遺跡”に、挑戦してみないか？」







　その頃、遺跡の奥。

「ちょ、ちょっと待って欲しいッス、俺、この先に行かないと……！」

　調査団の新人、チェイニ・アルバトロスが声を上げました。
　その途端、バシンっ！と鞭が走ってチェイニの足元を弾きます。
「そうは行きませんのよ。わたくし、ここの番人ですもの」
　通すわけには参りませんわ、と、アルファーナは、豊かな胸を強調するように腕を組むと微笑みました。
「俺だってそうはいかないんッス、リーダー、怒ると怖いんッスよ……！」
　そんな彼女の横を、その素早さを生かしてチェイニはなんとかすり抜けようとしました。
　が。
「残念、そう易々とは通しませんわよ？」
　ぱしーん、と鞭がしなったかと思うと、ひゅるんと生き物のようにそれはチェイニの腕に絡みつくと、一気にその体はアルファーナに引き寄せられてしまいました。そして。
「ちょ、あたってる、あたってるッス……！」
　むぎゅう、とその腕がチェイニを抱きしめると、その大ボリュームの胸に押し付けたのです。
　窒息死せんばかりのそれに、溺れること数秒。
「ふにゃあ……」
　かっくん、とチェイニの膝から力が抜けて床にぱったりと倒れてしまいました。
「……や、やわらかかった……っス」
　倒れたチェイニの顔は、ぼんやりしていますが、どこか幸せそうです。
「んふふ。おやすみなさいませ、坊や」
　にっこりと笑って、アルファーナは鞭を構えなおします。

「さて、ご新規のお客様にもこのダンジョン、楽しんでいただかなくてはね」

　守護者と言うよりもコンパニオンのお姉さんのような口調で、アルファーナは笑うのでした。


　

　本シナリオでは『真の王』『超獣』関連など【●】シリーズの情報を得ることは出来ません
　こちらは、後日予定されているキャンペーンにて扱っていきますので、何卒ご了承ください


　はじめましての方ははじめまして、二度目以上の方はまたお会いできて光栄です
　さて、今回はちょっと息抜きということで、コメディ寄りな冒険シナリオです
　緊急性もなければ、命の危険もない、日帰り仕様のダンジョンです
　気軽な遺跡探検を楽しんでいただければと思います
　

　今回の研修は、事前に見学者と、万が一に備えて協力者も募集していたため
　どちらかの理由でご参加いただいても良いですし、単に通りがかったりでもOKです
　ただし、入団を果たした新人のための研修なので、研修生としての参加はできません

　また、「今回の」シナリオはどちらかというと謎解きではなく、ダンジョン探検なシナリオですので
　スキル『サイコメトリ』を使用することは出来ません　

　遺跡内の様子、またＮＰＣ達については、クローディスから簡単な説明を受けてからの挑戦となりますので
　下記ダンジョン研修資料をご参考いただき、みなさまご協力の上、クリアを目指してくださいませ
　もちろん、クリア以外に目的があっても構いません


＜＜ダンジョン研修資料＞＞

●内部構造

地下１F：
　※クローディスの渡したメモはこの地下一階に関係しています
　地下への門をくぐると、両脇に旗が並んでいる真っ直ぐの階段が暫く続きます
　下りきると大きな扉があり、そこから先は入り組んだ迷路になっています
　迷路の中には、幾つもの落とし穴が設置してありますが
　それ以外の生命の危機に関わる罠は、【今回は】作動しません
　落とし穴に落ちると、強制的に地下牢へワープさせられてしまいます

地下２F：
　地下１Fをクリアすると辿り着きます
　一本道となっており、一番奥に扉がありますが、その前ではアルファーナが番をしています
　彼女の足元には、彼女の肩幅の蓋周りほどの幅で魔方陣が描かれています
　その上に立って、アルファーナは鞭を装備した状態で挑戦者を待っています
　（今はチェイニをからかって遊んでいるようですが）
　ちなみに扉に鍵はかかっていません　


地下？F：
　どの位地下かわかりませんが、遺跡の主であるマリーがいます
　まるでお姫様のように、遺跡の中とは思えない豪華なソファに腰掛けています
　彼女の部屋に辿り着くとクリアとなり、遺跡から出ることが出来ます　


地下牢：
　落とし穴に落ちてしまうと、強制的にワープします
　地下牢と名前はなっていますが、出口がないだけのただの豪華なサロンになっています
　ここでは、飛ばされてきた人を、メイドのベイナスが無表情でもてなしてくれます
　サロンには豪華なソファや暖炉などがあり、ケーキや紅茶、コーヒーが出され寛ぐことが出来ます



■このシナリオのメインＮＰＣ

◆チェイニ・アルバトロス
　”ソフィアの瞳”調査団の新人
　お調子者でおっちょこちょいの１７歳
　つんつんの金髪にブルーの目をしており、小柄です
　頭の回転はちょっとばかり遅いですが、体力はありすばしっこい子です


◆アルファーナ　
　遺跡の主、マリーのいる部屋への扉を守る機晶姫です
　魔法円の中にいる限りにおいて、マリーの加護によって体力的にほぼ無敵です
　豊満な体つきを惜しみなく露出した緑のドレスを着た、グラマーな金髪美人さんです
　口調はのんびりしていますが、いぢめっこ気質です
　クローディスを”お姉さま”と呼んで慕っており、意外に乙女思考をしています
　鞭使いで、遠近に優れた攻撃をしてきます（有効範囲はちょうど通路の横幅と同じ長さです）
　「今回の」シナリオでは彼女は一本の鞭しか使わず、魔方陣からは出ることはありません
　鞭に捕らえられると男女関係なく”ダイナマイト・ハグ”を食らい、暫く骨抜きにされてしまいます
　ダイナマイト・ハグの一回の発動はだいたい１０秒ほどの間です


◆ベイナス
「……粗茶ですが、どうぞ」
　メイド姿の機晶姫で、迷路の攻略に失敗すると自動的に送られる地下牢の主です
　挑戦者のうち誰かがクリアするまで、地下牢とは名ばかりの豪華なサロンで
　紅茶などを入れておもてなしする無表情の、メイド姿の少女機晶姫です


◆マリー
「おめでとうございマス。道中おつかれさまでございまシタ」
　遺跡の主である機晶姫で、幼い少女の姿をしていますが、正確な年は知られていません
　おっとりした性格ですが、ツライッツはある理由からこの少女を苦手としているようです
　参加者のうち、誰か一人でもマリーのところまで辿り着けば、遺跡から全員出してくれるらしいです


　
　※クローディス、ツライッツにつきましてはお手数ですが マスターページ をご参照ください

・迷路に挑戦する

・アルファーナに挑戦する

・落とし穴に落ちてみる

・この遺跡って何なんだ？