秋。山には自然の恵みが実り、畑には夏に蒔いた種が実を結ぶ季節。
しかし今年の畑の様子は少し違っていました。
「雨が少なかったからなあ……」
村人の一人が畑の様子を眺めて呟きます。
例年ならば両手で抱えるほどの大きさにまで成長しているはずのカボチャたちはやせ細っていました。
カボチャだけではありません。ニンジンやキノコなど他の作物も元気のなさが見てとれました。
あきらかに栄養不足です。
「これじゃあ収穫祭も行えねえ」
「収穫祭の準備もあるってえのによお」
村人たちは困り果てました。
「先生なんとかしてくれよ」
「それを僕に言われてもねえ〜。僕の専攻は医学だし植物は専門外だからなあ」
「そこをなんとかしてくれ。あんた頭良いんだろ?」
「まあね〜。そこいらの馬の骨よりは頭が良いと自負してるけどさあ」
「植物も家畜も人間も同じようなもんだよ。みんな生きてるんすよ」
「むう……一応細胞の活性化を促す薬品なら研究途中のがあるけど責任は持てないよぉ〜?」
「それでもいいから頼んます」
「んじゃコレ使ってみてねえ〜。一応試薬品だからレポートもお願いしたいかなあ」
「あんがとな先生」
「ん〜……お大事にねえ」
村人が隣町に住む学者に頼みごとをした翌日のことでした。
「クケケ」
「カカカ」
「ヒャヒヒャヒヒャ」
なんとも奇妙な声が村中に響き渡りました。
村人たちが窓から外の様子を眺めてみると、そこには見る影もなく成長した野菜の姿があったのです。
やせ細っていた実は水分が行き渡っているのか瑞々しい輝きを放っており、一見すればおいしそうに見えます。
問題はただ一つ。歩き回ったり奇声を発したりしているのでした。
「先生! 先生!! 助けてくれよ」
「今度はどうしたのさあ〜」
「うちのカボチャがお化けカボチャになっちまったんだよ!!」
「成長したならいいじゃない。大成功〜」
「あれじゃ魔物かなんかだ。喰えたもんじゃねえ!」
「でもね〜。僕は責任持てないって言ったし、自分たちでなんとかしてねえ。それじゃ〜」
「ちょ、先生!? 先生ーっ!」
冬を越すために貯蓄しなければいけないはずの作物が薬の力で魔物みたいになってしまいました。
村人たちは方々に助けを求めて冒険者たちに声をかけているようです。
はてさて秋の収穫祭を前に起きた今回の騒動を丸く収めることはできるのでしょうか?