ニタニタと笑いながら玉に乗り、ナイフジャグリングをするピエロや火を噴く道化師。
はたまた頭上には命綱なしの空中ブランコで目を見張るような回転をする少女達。
そして、部隊の中央にはライオンや虎といった猛獣にまたがる少年達。
そう、ここはサーカス。
夢と希望と、狂気に満ちた宴の会場。
「さぁさぁ、皆さまご注目!」
虚ろな目をする観客達の視線の先には、白と黒で別れた仮面を身につける男の姿があります。
よくとおる声で、整えられた身体。 彼が団長です。
しかし、その背中には悪魔の翼が生え、彼自身は宙を舞っています。
「お待たせしました、これより本サーカスはフィナーレを迎えます!」
彼は悪魔なのでしょう。
フィナーレという言葉に反応し、観客達は一斉に雄たけびを上げました。
待ち望んでいた、ようやくかといった様子はまさに狂っているようです。
「最期の催しとして、皆さまにも是非ご参加頂きたい」
悪魔の言葉を聞くためか、観客達は一斉に黙ります。
「各地方からおいで下さった皆様、今回初めてご覧になった皆様。 その為に―――」
「その、魂を頂きたい」
そして、一斉に上がる歓声。
観客は虚ろな表情で悪魔を見続けています。
「では―――」
悪魔がゆっくりと高度を降ろし、観客へと腕を伸ばそうとした瞬間でした。
彼の手を遮る様に一本のナイフが空を切ります。
「おおっと。 これはこれは」
観客の中や、サーカスの入り口といった至る所に悪魔を睨む契約者達の姿がありました。
「どうやらお気に召さぬ様子。 貴方達は何をお求めで?」
悪魔の問いかけに、契約者達の反応は応戦の構えです。
「そう、血をお求めで! ええ、もちろんございますとも!!」
仮面を付けた悪魔が両手を広げ、迎え入れる様なしぐさをすると、役者達の視線が一斉に契約者達へと向きます。
それぞれの技術を用いて、襲い掛かってくるつもりでしょう。
「ようこそ、我らが狂乱の宴へ」