◆◆◆あらすじ◆◆◆
パラミタ最大の国家、エリュシオン帝国。
その世界樹ユグドラシルの整備に従事する“樹隷”の少年セルウスは、エリュシオンの龍騎士たちの師“スパルトイ”の一人であるクトニウス(の頭蓋骨)に導かれ、コンロンを目指して帝都ユグドラシルを出ました。
道中、ドワーフに育てられた少年ドミトリエと出会い、「セルウス捕縛」の命を受けた第三龍騎士団の天才剣士キリアナや、謎の人物”ナッシング”に追われ――数々の“冒険”の末、アスコルド大帝の死により、もう一人の皇帝候補である荒野の王 ヴァジラと共に、次期皇帝の座を争ったセルウスは、監獄に入れられ、テロリスト扱いされ、と紆余曲折あったものの、契約者達の協力あって、ついに選帝の儀によって次期皇帝として承認されたのです。
しかし、敗北したはずの荒野の王は、邪悪な世界樹アールキングを召喚し、世界樹ユグドラシルを内側から侵食しようとしたのです。
そして――……
◆◆◆◆◆
選帝の儀、そしてそれに続くアールキングによるユグドラシル侵食事件の解決後。
エリュシオン帝国では、新たな時代の始まりを迎えようとしていました。
アスコルド大帝の後継として、セルウスが選ばれて数日。
エリュシオンでは新たな皇帝の誕生を待ち望む民が、全土をあげてお祝いの真っ最中でした。
…………が。
「う゛ー……退屈だよ――……」
「我慢しろ。式典中はもっと長い間身動き取れないんだぞ」
宮殿の貴賓室では、一応はきちんと身なりを整えたセルウスがソファの上で足をばたつかせ、ドミトリエ・カンテミールに溜息をつかれていました。
「堪忍な。式典が始まるまでは、何処も忙しいですよって」
そんな二人を見ながら、キリアナ・マクシモーヴァは苦笑しました。
そう。宮殿から帝都に至るまで、今は戴冠式典の準備で大忙しなのです。それらは全て、専門の儀式官が準備を行うため、主役であるセルウスは、本番での手順を覚える以外にやることがなく、退屈で仕方がないのです。
「あと二日も待たなきゃいけないなんて……」
溜息を吐き出したセルウスに、ドミトリエはぽん、と背中を叩きました。
「あと二日だ。それに……この部屋で三人で待て、とは、言われてなかっただろ?」
「え?」
ドミトリエの意味深な言葉に、セルウスは首を傾げ、キリアナはくすくすと笑いました。
「ウチが護衛についてるて条件付きですけど、面会は禁止されてへんのです」
そうして三人が見やった先で丁度、部屋の扉をノックする音が聞こえたのでした。