天御柱学院

　毎年８月下旬に、ヴァイシャリー湖の辺で盛大な花火大会が行われています。
　主催のヴァイシャリー家の一人娘である、ラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）が行方不明ということもあり、今年は行われないだろうと誰もが思っていました。

　ヴァイシャリー家にて――。
「調子はどう？」
　ラズィーヤの弟のミケーレ・ヴァイシャリーは、部屋に訪ねてきた人物、桜井　静香（さくらい・しずか）に茶を勧め、問いかけました。
「大丈夫、です」
「それはよかった。君の体調が安定しているという事は、姉さんの体調も悪くはないということだから」
「ラズィーヤさんの行方について、何かわかりましたか？」
「まだなにも……。君の方こそ、何か分からないか？」
　ミケーレの言葉に、静香は悔しげに首を左右に振りました。
　ラズィーヤは何一つ身に着けていない状態で行方不明になっており、携帯電話で連絡をとることも、GPSで探すこともできません。
「……それで君は、姉さんが戻らなかったら、どうするつもり？」
　静香はラズィーヤにより、百合園女学院の校長に据えられていました。
　静香の実家には、膨大な借金があります。
　ラズィーヤのパートナーとなったことで、ヴァイシャリー家は、静香の家の借金を肩代わりしてくれていました。
「ラズィーヤさんは、必ず……助けます。僕はラズィーヤさんに依存しすぎていた。頑張ろうとしていたけれど、甘かった。
　ラズィーヤさんがいないのに、僕がここにいれる理由はないし、僕に校長をさせる理由も、ヴァイシャリー家の皆さんにはないのかもしれない。
　でも、百合園女学院をラズィーヤさんの次に知っているのは、僕なんです。
　ラズィーヤさんの代わりにはなれないけれど、生徒達と共に社会に貢献していきたいです。このまま校長を続けさせてください」
　静香はミケーレに頭を下げました。
「校長を辞めてほしいなんて、言ってないよ」
　ミケーレは軽く笑みを浮かべながら言いました。
「それで、今日は花火の提案だったね？」
「はい。ヴァイシャリー湖花火大会ですが、予定通り開催してはいただけないでしょうか。
　百合園の生徒達も、手伝いたいと言っています」
　静香は生徒達と作ってきた花火大会の運営、警備の計画書をミケーレに渡しました。
　学生だけで作ったその計画書は、そのまま使えるようなものではありませんでしたが、熱意は十分伝わりました。
「ありがとう。担当者に渡しておくよ。君は例年通り、屋上から見るのかな？」
「はい、百合園女学院の屋上に、各校の生徒や関係者、卒業生たちを招いて、観賞会を行います」
「それじゃ、どこかにいる姉さんの目にも入るくらい、盛大にやろう」
「はい！」
　静香は立ち上がって頭を下げると、準備の為に百合園に向かっていきました。
　ヴァイシャリー湖花火大会では、毎年１万を超える打ち上げ花火に、５０基を超える仕掛け花火も用意され、美しく、激しく、盛大に行なわれます。
　今年もその花火と夜景の観賞会が、桜井静香主催で百合園女学院の屋上で行われることになりました。
　静香が初めて観賞会を企画したのは、５年前でした。
　ただ純粋に、皆が仲良くできたらいいなと思い、百合園での観賞会を企画したのです。
（ラズィーヤさん、こんな僕でも、少しはシャンバラの皆の笑顔……守れるかな）
　静香は目にたまった涙を唇を噛んでこらえました。

「この花火大会が、生徒会執行部――ではなく、警備団生徒部代表としての最後の仕事ね」
　百合園女学院の生徒会役員として、百合園警備団、生徒部部長を勤めているティリア・イリアーノが感慨深げに言いました。
　百合園警備団の生徒部の役員については、候補者がイングリット・ネルソン（いんぐりっと・ねるそん）のみであるため、生徒達の承認がとれたのなら、彼女が就任する予定です。
「一人で抱え込んだら駄目よ。他の団員にもちゃんと助けてもらいなさいよ」
「はい！　サポートしてくださる先輩もいますので、大丈夫です。生徒達はわたくしが護りますわ！」
　拳を固めて、イングリットが言いました。
「だから、力で守るだけが全てじゃないだってば。でもまあ、警備に関すること以外は、生徒会の皆に頼れるしね」
「はい。鍛錬は決して怠りませんが、百合園の力はわたくしひとりの力ではなく、皆の協力で培われるものだと思っております」
　イングリットは個人としての強さを求め続けているが、強さだけ求めて突き進んでは、皆を守る力とはなれないということを、もうよく分かっている。
「私は卒業後、ヴァイシャリー警察に就職したいと思ってるの。
　瑠奈は保母さんになりたいとか言ってたわ。剣術も続けてるみたいだけれど、スポーツ以外で腕を振るう事は、もう望んでないみたい」
　少女だった、学生だった若者達は、別の道を歩きはじめました。
　ティリアとイングリット、そして百合園の少女達は、お別れした人達を懐かしく思いながら、花火大会の招待状を書きました。
　他のシャンバラの学園で学んでいる少年少女達にも、故郷に戻った人達にも、他国に渡った人にも、教職員達にも、お世話になった多くの人たちにも――。
　ひとつひとつに手書きのメッセージを添えた招待状を送ったのです。

こちらは楽しく準備をして、和気藹々花火を見ようというお茶会系シナリオです。
リアクションの担当は、川岸満里亜と、一部冷泉みのりが行います。
担当マスターは選べませんが、百合園関係の話題と若葉分校絡みは川岸担当、パラ実ＮＰＣ絡みと種もみ学院関係は冷泉担当となる可能性が高いです。

こちらのシナリオでは、準備行動として以下の行動などができます。
・ヴァイシャリー湖で仕掛け花火の手伝い、提案
・屋上にて会場準備
・校門で受け付け
・百合園女学院の調理室で軽食の作成
・百合園女学院の更衣室で着替え
・屋上への菓子類の持込、配布
・屋上のステージで余興

仕掛け花火の設置を手伝った場合、自分の好きな模様や文の仕掛け花火を作ってもらうことが出来ます。
花火は普通の花火です。

屋上には、各国や各学校ごとのスペースが設けてあります。
所属関係ナシのスペースもあります。
シート、パイプ椅子、座布団、机等が用意されており、自由に使うことができます。

花火が始まるまでの間、飲食物の提供やステージ等を作って盛り上げて下さっても構いません。
ただし、会場の皆も参加するような企画（コンテストなど）を行なう場合は、交流で参加者を募っておかないと、寂しい結果になると思います……。

登場予定ＮＰＣと行動
桜井静香
　要人用のテントで、来賓の接待をしている。

イングリット・ネルソン
　百合園警備団、生徒部メンバーを指揮し、百合園へ続く道の交通整理、警備に協力している。

ティリア・イリアーノ
　生徒会役員として、受付け及び校門警備を担当している。

御神楽環菜
　蒼空学園のスペースで思いをはせながら花火を観賞。

エリザベート・ワルプルギス
　イルミンスールのスペースで、華より団子状態。

ブリュンヒルデ・アイブリンガー（ペロ子）
　イルミンスールのスペースで、エリザベートに絡んでる。

雅羅・サンダース三世
　火の粉が落ちてきたりしませんようにと祈りながら、すみっこで観賞。

メルヴィア・聆珈（メルメル）
　髪をおろし、クマのぬいぐるみと一緒に、百合園生に紛れて観賞。

高原瀬蓮
　百合園の友達から沢山招待状が届いて参加。友達への挨拶まわりをしている。

アイリス・ブルーエアリアル
　瀬蓮と一緒に参加。ファンの女の子達に囲まれる。

熾月瑛菜
　瀬蓮と一緒に参加。ステージで演奏。

横山ミツエ
　ラズィーヤのいない百合園を観察しに来た。

カンゾー
　校門付近で種もみ生達と射的の屋台出してます。景品はお菓子や悪戯グッズです。

チョウコ
　屋上で参加者達のためのにわかカメラマンになってます。

ブラヌ・ラスダー
　校門近くで悪友たちとクレープ屋を行う予定。お誘いがあれば屋上に行きます。

パラ実生たち（男）
　百合園に行くには女装しなきゃと勘違いして、女装して参加。

こちらに載っていないＮＰＣのうち、川岸、冷泉のマスターＮＰＣについては、生きている人物に関しましては来ていたとして、接触していただくことが可能です。
公式ＮＰＣは恋人以上の称号をお持ちの方につきましては、来れる状況の場合はお誘い可能とさせていただきます。称号を表示の上、ご参加ください。
ＮＰＣをお誘いの場合は、１人につきＬＣ１人の追加をお願いいたします。ＮＰＣ分として追加したＬＣはシナリオに登場いたしません。
マスターＮＰＣやガイドに登場しているＮＰＣにつきましても、独占描写が必要な場合は、ＮＰＣ分のＬＣの追加をお願いいたします。
※ＬＣの追加をお願いしている主な理由は、アクションに対しての描写量に差が出てしまうためです。ＰＣのアクションに対して、他のＰＣさんには関係のない返事等が必要になる場合には、ＬＣを追加していただきますよう、お願いいたします。

■百合園生徒会補欠選挙につきまして
こちらのシナリオのラストで、ティリア・イリアーノの後任を決めさせていただきたいと思います。
候補者がイングリットのみとなりますため、ガイドのようになっております。
百合園警備団生徒部に所属し（もしくはしており）、班長としてイングリットをサポートしてくださる方は、アクション欄にその旨ご記入お願いいたします。
また、イングリットの役員就任に反対な方も、理由を添えてアクション欄にご記入お願いいたします。
※こちらにつきましては、アクションとしてカウントしませんので、花火を楽しむ行動もお書きくださいませ。

■その他注意事項
当日は男性でも百合園女学院の敷地に入る事が可能ですが、校内の見学や寮に潜入など、花火夜景観賞とは関係のない行動は出来ません。

ＬＣはＭＣと一緒に行動し、同じ話題に絡む場合にのみの追加でお願いします。
ＬＣのみの参加や、経験値目的の追加は問題ありません。

このシナリオ以外の話題の持ち込みは、川岸、冷泉が担当したシナリオの話題のみでお願いします。
称号で確認できるＮＰＣとの関係は、他マスターのシナリオで発行されたものであっても、参考にさせていただきます。

リアクションの描写は、事前準備と花火が上がっているシーンになると思われます。
１人でいくつもの準備をしようとしたり、何人ものＮＰＣと絡もうとした場合、ダブルアクション判定によりアクションを１部しか採用できなくなってしまいますのでご注意ください。

それでは、皆で楽しい時間を過ごしましょう！

・花火を観賞する

・食べ物を集めてまわる

・思い出に浸る