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イベントミュージアム(ゴチメイ隊がいく)

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イベントミュージアム(ゴチメイ隊がいく)
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リアクション

 


 
 
「きゃー、たーすーけーてー」
「はははは、どいてくださーい」
 アキラ・セイルーンたちが、もう大丈夫だろうと通路を進んで行くと、またも暴走する者が近づいてきた。
 今度は、トナカイの牽く橇だ。それに追いかけられて、高島真理たちが逃げてくる。
「そこの部屋に飛び込め!」
 アキラ・セイルーンに言われ、高島真理たちが展示室に飛び込んで難を逃れる。
「あー、この絵、さっきの橇です」
 敷島桜が、展示室に飾ってあった『悪化する労働環境』という絵を見て叫んだ。
「本当ですね。このイコンに追われている橇は、さっき私たちを轢こうとした橇に間違いありません。犯人は、クロセルさんだったんですね」
 南蛮胴具足秋津洲がうんうんと納得した。
「じゃあ、それがしがこの絵を斬ってしまえば、すべては丸く収まるのではござらぬか?」
「さあ、それはどうなんだろ」
 源明日葉の言葉に、高島真理が首をかしげる。それで事態が収まるのならいいが、そうでなかったら大切な美術品を傷つけてしまうことになる。できればそれは避けたいところだ。
「じゃあ、封印するでござる」
 源明日葉が、マントを取り出すとそれでクロセル・ラインツァートの絵を隠した。他にも、いろいろと怪しげなポートレートが飾られていたがとりあえずそちらは放置しておくことにした。
 だが、絵を隠したからといって、もちろん、そんなことで事態が収まるはずもない。
「見ろ、人をゴミのように轢きながら橇が進んで行く」
「もう、一周して戻ってきたネ。速いネ」
 ほっとしていたのも束の間、あっという間に周回して戻ってきた橇を見て、アキラ・セイルーンとアリス・ドロワーズが壁際に避難した。その横を、シャンシャンシャンとトナカイの橇が通りすぎていく。
「クロセルの奴、今、橇に二人乗ってたぞ!?」
 橇の上をチラ見したアキラ・セイルーンが叫んだ。いつの間にクロセル・ラインツァートが双子になったのだろう。
「クロセルもそうダケド、トナカイも大変ヨネ。あんな必死なトナカイ初めて見たワ」
「これ、クロセル殿だからまだいいものの、普通にサンタのじーさんだとポックリ逝っちまうんじゃねぇか……?」
 いったい何から逃げているのか、それともただ暴走しているだけなのかと、アキラ・セイルーンが首をかしげた。そのとき、通路の一面を構成する大きな窓の外を何か巨大な物が横切った。
 イコンだ。
「いいかげんに止まりなさーい。あ、申し遅れました、俺、正真正銘のクロセル・ラインツァートです。とりあえず、参上」
「そんなこと言っている場合ですかあ。止まったら、あのイコンに潰されてしまいますよ!」
 橇を動かしているサンタの格好をしたクロセル・ラインツァートが叫んだ。
 どうやら、実体化には、絵の環境だけの物や、描かれている人物だけ、あるいは両方込みの物など何タイプかあるようだ。そのへんは、絵に対する各人の思いの種類によるものなのかもしれない。
「くばりびとのことを理解しないでいきなり迎撃してきたあのイコンのパイロットにこそ、やめるように言ってください!」
「ああ、悪夢がよみがえります……」
 サンタクロセルの言葉に、クロセル・ラインツァートが軽く頭をかかえた。
 毎年クリスマスの時期には、パラミタではくばりびとが子供たちにプレゼントを配る。クロセル・ラインツァートもそのお手伝いをしたことがあるのだが、こんな素晴らしい風習を理解できないイコンが、未確認飛行物体としていきなりスクランブルをかけてきたのである。あの時も、結局一晩中逃げ回って酷い目に遭ったものだ。
 とはいえ、逃げながらちゃんとプレゼントは子供たちの家に投げつけてきたが。もっとも、この場合、投げ入れたではないところが問題ではある。
 その苦労を一般人にも知ってもらって労働環境の改善をしてもらおうと、わざわざ絵に描いてもらって展示したわけなのだったが、まさかこんなことになろうとは思いもしなかったクロセル・ラインツァートであった。