天御柱学院へ

なし

校長室

蒼空学園へ

【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出

リアクション公開中!

【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出
【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出 【5周年記念】【かんたんイラストシナリオ】あの日の思い出

リアクション

 
 ■ お花見びより ■


 桜は、ピークを少し過ぎて、散り始め、といったところだった。
 けれど、満開の桜に、少しの風でひらひらと降り注ぐ花びらが、とてもとても綺麗で。

「すごい! 花びらのシャワーみたいです!」
「桜吹雪、と言うのだ」
「さくらふぶき! すっごい!」
 千返 ナオ(ちがえ・なお)が、木々の間を歓声を上げて走る。
「ふむ。情緒があるな」
 駆け回るナオを見つつ、ノーン・ノート(のーん・のーと)が、エドゥアルト・ヒルデブラント(えどぅあると・ひるでぶらんと)の肩の上で何事か呟き、エドゥアルトは首を傾げた。
「じょうちょ? 今の呪文何?」
「呪文ではない、和歌という、昔の詩のようなものだ。
 折角風情のあるところに来たんだ、昔の人が見た景色を感じ、思いを馳せる。
 いいもんじゃないか……って、皆ちょっとは人の話を聞け」
「場所はこの辺でいいかな」
「いいです! 眺めきれいです! エドゥアルトさん、お弁当、お弁当!」
「はいはい、今行くよ」
 千返 かつみ(ちがえ・かつみ)が広げたシートの上に、エドゥアルトは荷物を置く。
 やれやれとノーンは思ったが、まあいつもの彼等である。

 満開の桜が群生するこの場所は、花見には最適な季節と場所だと思うが、他に人はいなかった。
 静かで、木漏れ日が暖かい。
「聞いていた通り、他に人がいないね」
「うん、本当に穴場だな。こんなに綺麗なの、俺達だけで独り占めは勿体無いくらいだ」
 エドゥアルトの言葉に、かつみも頷く。
「はー」
 シートの上に座って上を見上げ、舞う花びらを堪能していたナオは、がばっ、と首を戻してかつみを見た。
「お弁当です!」
「……お前は本能で生きてるなあ」
「でも、時間的に頃合だよ」
 呆れるかつみにエドゥアルトも笑って、用意していたお弁当を広げる。
「まあ、男4人で、大したものは用意できなかったけどね」
 重箱の中には、大きなおにぎりと、揚げ物、玉子焼き。
「卵焼き……大丈夫です?」
「ああ、そういや吹っ飛ばしてたよな」
 重箱を覗き込むナオに、かつみは笑った。卵焼きは、ナオが作ったのだ。
「大丈夫だよ」
 エドゥアルトもくすくす笑う。こうして見た目は、何ら普通の卵焼きと変わらない。
「うう、だって上手く巻けなくて……。
 こう、オムレツみたいにトントン、ってやったらどうかなって」
 結果、強く柄を叩きすぎて、フライパンから飛び出してしまったわけである。
「うむ、美味いぞ。私が身体を張って受け止めた甲斐があったな」
 もぐもぐと卵焼きを食べて、ノーンが満足そうに頷いた。
「ノーンは後でちゃんと洗わないとね」
「う、まだ匂いがするか」
「するする」
 お皿を構え、ナオが飛ばした卵焼きを受け止めようとして、ノーンはケチャップの入ったアルミカップに突っ込んだのだった。
 一応拭いはしたのだが。
「先生、トマト魔道書だ」
 お弁当製作中は動転して平謝りだったナオだが、それも落ち着いて、くすくす笑っている。
「黙れ」
 憮然と呆れてノーンは言い、気を紛らすようにカップを手に取った。
「……酒ではないのか」
「ないよ。ナオ達がまだ飲めないでしょ」
 エドゥアルトの言葉に、ノーンは残念そうだが、仕方ない、と納得する。
「まあ、やっぱりこういう場所では、花見酒っていうのもいいだろうけどな」
「いつか、それもやろうよ。楽しみだね」
 かつみも飲めないくせに、と思いながら、かつみとナオが酒を飲めるようになって、皆で酌み交わす日が来ることを、エドゥアルトは楽しみにしている。
(皆、酔ったらどうなるのかな)
 今はまだ、それは想像の域を出ないけれど。
「あ、先生、お昼寝ですか」
「食ったら寝るとか、子供かよー」
 ナオとかつみが呆れている。まだまだ、大人の花見は先の話のようだ。
「何か掛けたげた方がいいかな?」
 毛布の代わりになるようなもの、とナオは見渡して、桜の木の根元に吹き溜まっている花びらを見つける。
 両手で掬い取って、それをノーンの身体の上に、山盛りに掛けた。
「花びら、きれいです」
「はは、花びらに埋もれてる」
 かつみ達の声を現に聞きながら、ノーンはふわふわと心地よい、トマトではない香りを感じながら、来年もまた、皆で花見に来れたらいいな、と考えていた。