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ホワイトバレンタイン

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ホワイトバレンタイン
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「おっす! 砕音待たせちまってすまねぇな」
ラルク・クローディス(らるく・くろーでぃす)は待ち合わせ相手である砕音・アントゥルース(さいおん・あんとぅるーす)を見つけ、手を振った。
 2人が待ち合わせたのは、街のカフェだった。
 喫煙席のあるお店の方が良いだろうということになり、そこで会う事になったのだ。
「かっこいいな、ラルク」
 スーツ姿のラルクに、砕音が笑顔を見せる。
 白い開襟シャツから見える筋肉がいかにもラルクらしかった。
「お、おう、気に入ってくれたならうれしいぜ」
 こういう形でのデートは初めてなので、ラルクは高揚していた。
「うっしゃ! まず何か食うか? それとも行きたい所でもあるか?」
 その提案に砕音は小さく笑った。
「ラルクとならどこででも」
「なんでも言えよ。砕音が食いたいってものがあるなら、いくらでもうまい店を探すし、何か買い物があれば、どこだって付き合うし、なんだって持ってやるぜ」
「ありがとう、ラルク」
 優しい恋人の言葉に、砕音はうれしそうにはにかんだ笑みを浮かべる。
「と……ほれ、砕音荷物持ってやるから貸せって!」
「え、いやいいよ。大したものじゃないし」
「いいんだよ。こういうときは持ってやるもんだ」
 ラルクは砕音と共に歩き出し、あることに気づいて足を止めた。
「っと……喫煙所も探しておかないとな……タバコ切れたら色々と大変だしな」
 砕音の身を心配し、ラルクが気にしたが、砕音はラルクに寄り添い、囁くように言った。
「おまえがいてくれるから大丈夫だ……」 
「砕音……」
 寄り添う砕音の肩を抱き、ラルクは……。
「と、おっといけねえ、昼間っからこんな雰囲気してねえで、まずは遊びに行くか」
 ラルクの言葉に、砕音は小さく笑い、一緒に街に歩き出した。

 一緒に街を歩いたり、食事をしたりを楽しんだ後、2人は夜の公園に向かった。
 ライトアップされた噴水の前に行き、ラルクはそこで肩を揺すった。
「はぁー、結構、歩いたな。流石におっさんも少し疲れたぜ」
「お疲れ様、ラルク」
「砕音はもっと疲れただろ。ま、座れよ」
 ラルクは噴水のそばに腰かけ、砕音もその隣に座った。
 すると、ラルクが真面目な声で、砕音に話しかけた。
「砕音、俺さ……考えたんだが……」
「ん?」
「砕音と結婚できねぇのかな?」
「け、結婚?!」
 びっくりする砕音に、ラルクはその瞳をまっすぐに見つめ、問いかけた。
「確かに男同士で結婚ってのもあれだが……一生、傍に居てほしい……ダメか?」
 ラルクの言葉を聞き、砕音の瞳に迷いの色が浮かんだ。
 ラルクのことは好きだ。
 その気持ちは揺るぎない。
 だが、自分はいろいろと手を汚してきている。
 その上、さまざまな組織から狙われている。
「……」
 しかし、そんなことはすべて受け入れて、ラルクが自分を想ってくれていることも、砕音は知っていた。
「ダメなワケ……、でも俺……」
 頬を赤くして、恥ずかしそうに砕音が横を向く。
 ラルクは戸惑う砕音から無理に返事を聞きだそうとはせず、明るくその肩を叩いた。
「まぁ、返事は後でいいぜ! とりあえずこれだけ受け取ってくれ」
 ハートの機晶石ペンダントを差し出し、ラルクはにかっと笑った。
「これ、恋人同士が付けてっと、どんなに離れても心が通じるんだと。だから、俺がたとえ傍に居なくても、心はずっと傍にいるぜ!」
 爽快な笑みを浮かべるラルクを見つめ、砕音はそのペンダントを嬉しそうに受け取った。
「ありがとう。さっそく、つけてみていいかな?」
「おう、つけてやるよ」
 ラルクはそう言うと、砕音の首にペンダントをかけてあげた。
 まるで指輪の交換か何かのように丁寧に。
 首に下げられたお揃いのペンダントを見つめ、砕音はラルクに身を寄せた。
「ありがとう、ラルク……」
 もし、心が通じるならば、どうかお互いの好きな気持ちが伝わり合いますように。
 そう願いながら、砕音とラルクはいつまでも抱き合ったのだった。