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女王陛下のお掃除大作戦!

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女王陛下のお掃除大作戦!
女王陛下のお掃除大作戦! 女王陛下のお掃除大作戦!

リアクション

「――だいぶ綺麗になりましたね」
ふぅ、とモップを置いて額に滲んだ汗を拭ったアイシャは、だいぶ片付いた公務室を見て満足そうに頷きました。
まだもう少しワックスがけや細かな埃取りが残っていますが、磨き上げられた床はとても部屋を明るく見せてくれます。
「わぁ、机や椅子も綺麗になって……!」
「どうかな、アイシャちゃんのお仕事の励みになるようにって一生懸命磨いてみたんだけど」
詩穂が微笑みかけながら問いかけてきます。
アイシャは微笑みながら感謝の言葉を告げました。
「ありがとう、とても綺麗です。この白のクロスも素敵です」
「本当!? よかった!」
アイシャの言葉に嬉しそうに微笑む詩穂に、アイシャはそうだ、と引き出しを開けました。
そこにあったのは小さなお守りです。
「それは……」
「詩穂ちゃんからもらったお守りです。あの時ちゃんとお礼を言う前に帰ってしまったから」
そう、アイシャが取り出したお守りは、先日詩穂がアイシャの為を思って作ったお守りでした。
けれど出来上がった時間が遅かったために、挨拶もそこそこに渡すだけですぐ帰ってしまったのです。
「このお守り、大事にしていますよって伝えたくて。ありがとう、詩穂ちゃん」
「ううんっ、私こそ……ありがとう!」
アイシャがお守りを大事に持っていてくれたことが嬉しくて、はにかむ詩穂にアイシャはもう一度微笑みかけて、お守りを大事にしまいこみました。
「身も心も護られている気がして、頑張れるんです」
「うん……これからもアイシャちゃんを守るために頑張るよ」
「はい」
そう言ってにっこりと笑い合う二人の柔らかな空気を引き裂くように、まばゆいフラッシュが光りました。
「メイド服の女の子激写であります!」
満足げな声でそう言ったのは先ほどから宮殿中を走り回っているノールでした。
「これで累計何枚になったでありましょうか……」
嬉しそうにほくほくとノールが確認しているデータは全てメイド服姿の少女の姿でした。
当然、この公務室にいる少女たちの写真もありましたり、今しがた撮られたアイシャの写真もありました。
それを見てロイヤルガードや勝手に被写体にさせられた少女たちが黙っているはずはありません。
「何をしてるの!」
「データを渡しなさい」
口々に怒りを口にしながら逃げようとするノーンを追います。
なかなかつかまらないノールに苛立ち始めたころ、「お待ちなさい」とノールを後ろからあっさりと捕まえたのはレムテネルでした。
「女王陛下の御前でそのような真似は許されませんね……」
「な、何をするでありますか!」
「騒がしいだけでなく、今まで私たちや陛下が掃除した場所をどたばた走り回るのは感心しません」
そういう間もじりじりとノールは追い詰められていきます。
けれど詰め寄る少女たちにノールの鼻の下は心なしか伸びていました。
「美少女の折檻も……悪くないであります……」
「ほう、そういうことですか」
ノールの心の呟きを聞いたレムテネルは、うっそりと微笑みました。
「それでは私手ずからお仕置きさせていただきましょうか?」
口元は優雅に笑っていても目は笑っていない、その表情にノールはひっと竦み上がりました。
「す、すみませんでした! データは消させていただくであります!」
ずさーっと土下座したノールのデータは、こうしてみんなの前で消されるのでした。
この時、記念に一枚くらいもらっておきたかった、と思った人がいたとかいなかったとか。



「アイシャ!」
「リア、どうしたんです?」
騒ぎを見守っていたアイシャは、急ぎ足でやってきたリアを振り返って小首を傾げました。
そして次にリアの持っている見慣れないものに目をやります。
「その雪だるまはどうしたんですか?」
「これかい? 雪だるま王国からの献上品だそうだ」
そう、リアが手にしたのは先ほど美央たちから受け取った雪だるまでした。
とける前にさっそく置き場所を相談しようと足早にやってきたのです。
首を傾げるアイシャに手早く事情を説明しました。
雪だるま王国から友好の証として雪だるまが贈られたこと。
先ほど部屋が寒くなったのはこの雪だるまをとかさないようにと、雪だるま王国の人間がやったことだったこと。
大量の雪だるまを贈ってくれる気持ちは嬉しいが、それを全て宮殿に飾ってしまうと宮殿全体のインテリアのバランスが崩れてしまうと説得したこと。
その上で友好の証としてひとつ頂いたこと。
それを聞き終わるとアイシャはなるほどと頷きました。
「それで、どうかな。これは何処に飾るといいだろう」
「どこ、と言われても……」
うーん、と考えこもうとするアイシャに、リアはすかさず提案します。
「さっさと決めちゃうのは失礼だろうし、今の季節じゃ何処に飾ってもすぐとけちゃうからさ、考えている間だけでも厨房の冷凍庫に置いておくことにしないか?」
「厨房の?」
「ああ、そして後からゆっくりじっくりと時間をかけて置き場所を決めたら取り出して、この可愛い雪だるまを飾ればいいんじゃないかなって思うんだ」
「そう、ですね……このまま決まるまで放っておくのは可哀想ですね」
アイシャの同意を得たリアは、さっそく冷凍庫においてくる、と部屋を飛び出しました。
そんなリアを見送って、アイシャはふと足元にあったバケツを持ち上げました。
もう少し拭き掃除をするのに水を替えてこなくてはいけません。
すぐそこだし自分が行って、ついでに新しいワックスやぞうきんをとってこようとしたところで、ふと呼び止められます。
視線を向けるとイグナとエヴァルトが立っていました。
「水の交換は重いでしょうから、代わりに行きますよ」
「陛下は此処でみんなに指示をしてあげてください」
「いいえ、すぐだから行ってきますよ」
「そんなわけには……」
尚も気遣ってくれるエヴァルトに、アイシャはそれでは、とモップを指差しました。
「私の代わりに新しい掃除道具をワックスをとってきていただけますか?」
「はい、それくらいでしたらすぐに」
「そうしたら私も水を替えてすぐ戻ります。ついでに他の場所の掃除の進み具合も見てきますので」
そう言われては強く止めることも出来ず、二人はただ頷くだけになるのでした。