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はっぴーめりーくりすます。

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はっぴーめりーくりすます。
はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。 はっぴーめりーくりすます。

リアクション



30.雪降る夜の、静かな話。


 工房内で、リンスは思案気に顔を曇らせ、机の上をじっと凝視していた。
 同じく、隣。
 背伸びして机の上の物を見るクロエの表情も真剣そのものだ。
 机の上にあるもの。
 リンスの前には、紺色のマフラーとアルバム、それからペン付きのアドレス帳。
 クロエの前には、白いもこもこな手袋と、同じく白でふわふわのカーディガン。さらにはやはり白で、毛糸の帽子。
「どれが誰からのプレゼントか、わかりますか?」
 二人を前にして、神楽坂 翡翠(かぐらざか・ひすい)はにっこりと微笑む。
「わからない! わたし、こうさんよ」
 両手をばんざいとやって、クロエが降伏のポーズをした。
「リンス君は、どうです?」
「もうちょっと待って」
 一方でリンスは視線を机の上から動かすことなく言う。
 もう少しかかりそうだと踏んだ翡翠は、
「はい、どうぞ」
 柊 美鈴(ひいらぎ・みすず)へとプレゼントを渡した。
「マスター、これは?」
「誕生日プレゼントです」
 本当は、明日だけれど。
 あげたものは水晶でできたピアスだ。雪の結晶の形をしており、繊細で精密、綺麗な作りをしていた。美鈴の黒髪からこれが覗けば、さぞ映えるだろう。
「ありがとうございます。私からも、あるんですよ」
 そう言うと、美鈴が翡翠の手を取った。
 翡翠の手首に嵌められたもの。それは腕時計。
「文字盤にラピスラズリの石が嵌めこまれていますの」
 見てみれば、そこには確かに清らかに輝くブルー。
「桂にも用意してありますのよ」
 そのまま美鈴は山南 桂(やまなみ・けい)の隣へ行き、ラッピングされた袋を渡した。
「俺は、主殿や美鈴殿と違って誕生日は半年先ですよ?」
「だって、クリスマスですもの。プレゼントを渡してもおかしくない日ですわ」
「ああ、だからあんなに街が飾られていたのですね」
「そう。お祝いのようなものですのよ」
 だからほら、開けて見せて、と美鈴が急かし、桂が袋を開けた。灰色の手袋。
「寒いですから、冷えないようにと」
 にっこり、美鈴が笑って言う。タイミングを逃さず、翡翠もマフラーを渡した。黒のマフラーだ。
「……あ、それこれと同じ」
 そしてそのマフラーが、自分に渡されたプレゼントと同じだったことにリンスが気付く。
「ってことは、これは神楽坂からのだね?」
「はい、正解です」
 よくできました、と拍手。
 残るは二つか、とリンスは再び机の上に視線を戻していた。
「何事にも、真剣ですねえ。リンス君は」
「そういう人ですから。それに、負けず嫌いですし」
 付き合いの深い桂が、しみじみと言う。
「ああ、渡しそびれるところでした。主殿、美鈴殿、これを」
 その後に渡されたものは、
「誕生日プレゼントです。少し早いけれど、お二人ともおめでとうございます」
 翡翠には、黒の皮手袋。
 美鈴には、灰色のショール。
 二人してそれを胸に抱いて、
「ありがとうございます」
「大事にしますわ」
 仲良く揃って、礼を言う。
「よし、わかった」
 と同時に、リンスの声。
「アルバムが柊で、アドレス帳が山南だ。違う?」
 三人、顔を見合わせた。
「正解ですわ」
「よくわかりましたね?」
「アルバムの装飾が女性っぽかったから。山南は女性に見られることを嫌うでしょ? だから、そういうものが置いてある店は避けると思って」
 その通り。
 なので、桂があげたアドレス帳はシンプルなものだ。
「ちなみにクロエちゃんのは、自分が手袋、美鈴がカーディガン、桂が帽子ですよ。使ってやってくださいね」
「うん! つぎ、おそといくときにつかうわ! ありがとう!」
 クロエも無邪気に喜んでくれているし。
 リンスも、表情が柔らかい。いつもに比べて、程度だけれど。
「そうそう。お菓子も用意してありますよ」
 星型に焼いた、抹茶クッキーとココアクッキー。
 クリームチーズとホワイトチョコを混ぜたクリームを、そのクッキーの間に挟み積み重ねていったもの。
「くりすますつりーね!」
「はい。よくできているでしょう?」
 自分で言ったら自画自賛だけど。
「……本当、すごいよねえ」
 感嘆の声をリンスが漏らした。
「それに、おいしい!」
 早速食べ出したクロエがにこにこ笑い。
 それにつられて、リンスもお菓子に手を伸ばす。
「うん、やっぱり美味しい。本当、甘いもの苦手なのにどうしてこう上手に作れるのかな」
「それはですね、味見する子が居ますので。作ってあげているうちに、慣れてしまったんですよ」
「なるほど」
 お菓子をもぐもぐ食べるクロエと頷くリンスの前に、紅茶のカップが置かれた。美鈴が用意したものだ。
「寒いと思ったら、外、雪が降っていますわ。温まってくださいまし」
「ということは、ホワイトクリスマスですね」
 窓際に寄り、窓の外の白い世界を見てのほほんと翡翠は言う。
 寒くても、綺麗なものが見れる。だから、この季節は好きだ。
「甘いものばかりでは、主殿は辛いでしょう? こちらをどうぞ」
 そんな翡翠を見て、桂が差し出したのはコーンスープ。
「雪を見るのは良いですが、また風邪を引いてしまわぬよう暖かい姿で観賞してくださいね」
「そうですわ。マスターは、それでなくとも無理をしやすいのですから。倒れてしまわれると、周りが大変なのですよ?」
 桂と美鈴のダブルパンチに何も言えない。
 ただ、大人しく「はい」と頷いてスープを飲んで温まる。
 外は、銀世界と言ってもいいほどに白く染まっていた。


*...***...*


 さて、そんな銀世界の中バイトに勤しんでいた青少年が一人。
「寒ぃー……」
 瀬島 壮太(せじま・そうた)である。
 夜までみっちりバイトの予定が入っていた彼が、漸く仕事から解放されたのは22時過ぎ。
「雪積もってるし……」
 この状態でツァンダまで帰るのは辛い。
 寒いし、面倒だし、疲れてるし。
 そこでふっと思いついたのは、ヴァイシャリー在住の友人の顔。
 ――……そーいや、志位がリンスの工房でパーティするっつってたっけ。
 さすがに、もう終わっているだろうけれど。
 ――顔くらい出してくか。
 ――んで、泊めてもらお。風邪引いちまう。
 そう決めて、方向転換。
 行く途中でふと思い出したことがあって、もう一度方向転換して。
 その後は真っ直ぐ工房へ向かった。


 志位 大地(しい・だいち)はご機嫌だった。
 クリスマスイブである今日の昼間、恋人のティエリーティア・シュルツとデートが叶ったのだ。
 しかも二人きり。
 これは奇跡に近い。
 ――サンタさんから俺へのプレゼントですね、これは。
 あの過保護者様も居なければ、場をかき乱すやんちゃな二人も居ない。シーラ・カンス(しーら・かんす)はリンスのところで彼女なりに楽しんでいたらしいし。
 それはそれは、ご機嫌なのだった。
 夜は夜で、人形工房を尋ねることもできたし。
 ……もっとも、クリスマスパーティは殆どお開き状態だったけれど。
 ――蒼也くんには悪いことをしましたね……。
 七尾蒼也に、工房でクリスマスパーティをやると言っておきながら、当の本人は大遅刻して会えず終いだったから。
 いつか埋め合わせをしようと思いながら、大地は工房の片付けを手伝った。
「シュルツとのデートだったんだ?」
 不意にリンスに言われ、手に持っていたグラスを落としそうになる。
「な、何ですか突然っ」
「すっごいにまにましてるから」
 どうやら顔に出ていたらしい。
「それに、それ」
 と指差されたものは、ティエリーティアからプレゼントされた指輪ネックレス。
 シルバーの華奢なチェーンに、こまかい細工のあるシルバーリングが通されているものだ。
 チェーンの長さはかなりあり、大地が動くたびにリングが心臓の辺りでゆらゆら揺れては煌めいている。
 ちなみに、リングの裏側には控えめに【 T to D 】と彫り込まれているのだが、それを知るのは今のところ当事者の大地とティエリーティア、二人きりである。
「はい。もらっちゃいました、プレゼント」
「よかったね」
 薄く笑って言ってきた。なんだか照れくさい。
「それより。外の雪、凄いですね」
 なので話題を変えた時、
「寒ぃっ!」
 声とともに、工房のドアが開く。
「瀬島さん?」
 頭に雪が積もった、だいぶ寒そうな状態の壮太が立っていた。
「うわ、頭に雪積もってる人初めて見た」
「おまえ久し振りに会う友人に対する第一声がそれかよ」
「だって、雪が頭に積もってる」
「わーったから楽しそうにこっち見んじゃねえ」
 リンスとのゆるい会話を終え、ばさばさ頭に積もった雪を外に落としてから壮太が工房に入ってくる。
 それから大地に向かって手を合わせ、
「悪ィ、せっかく誘ってくれたのにバイトで……」
 軽く頭を下げてきたので。
「実は俺も遅れて来たんでお互い様です」
 苦笑しながら大地は言った。
「志位もバイト?」
「いや、俺はデートです」
「…………、ま、いいや」
 なんだか声に呆れたような色が含まれていたが、変なことを言っただろうか?
 ともあれ、壮太はリンスに向き直り。
「今晩泊めてくんね?」
 ――ああ、雪だから帰るのが大変なんですね。バイト上がりじゃ当然……。
 発言に対してなるほどと思い、それなら俺もお邪魔したいなーなんて思っていたら。
「それはつまり、壮太×リンスということですか!? ヤンキー×職人!? いけませんわぁぁ~♪」
 それまで大人しくクロエと絵本を読んでいたシーラのスイッチがONになった。
「ならそうならないように俺も泊まって良いですか?」
 便乗してみたら、
「大地も混ざったらさんぴ」
 シーラの妄想が肥大化した。
「それ以上は言うの止めとけ、シーラ。ツッコミきれねーしフォローもできねー」
 さすがに壮太がストップをかける。
 クロエが、「さんぴ?」と問うのを「賛否両論という言葉がありまして」適当にお茶を濁し。
 また、クロエと同じようにあまり理解していなさそうなリンスはというと、
「なんかよくわかんないけど泊まってっていいよ。雪だし、二人とも帰るの大変でしょ。あと、はい」
 ブランケットとコーヒー入りのマグカップを壮太に手渡していた。
「サンキュ」
 ブランケットを受け取って羽織り、マグカップで手を温めて。
 一息ついた壮太が窓の外を見て、小さく舌打ちした。
「どうかしました?」
「今雪止んだ」
「あらら」
 来るまでは降り続け、到着したら止むなんて。
「意地悪なお天気ですねぇ」
「全くだ。すっげー寒かったのに……」
 窓際で二人、喋っているとリンスとクロエが寄って来て。
「外、すごいね」
「きらきらだわ!」
 感想をぽつり。
 ――そういえば。
「こんな風に、寒い日でしたっけ」
「何が?」
「俺とリンスくんが出会った日」
 何の用事でかは忘れたけれど。
 ヴァイシャリーに出向いた際、前を歩いていた人が落し物をして。
「ああ、俺のことを『お嬢さん、落とし物ですよ』って呼び止めた日?」
 後ろ姿から女性だと思い込み、そんな無礼を働いてしまって。
 申し訳なく思いつつも、そのままもう会うことはないだろうと思っていたら。
「あの後また会っちゃったんですよねぇ」
 それも、今日みたいな寒い日だった。
 山羊牧場の手伝いをした際手に入れた毛糸でミトンを作ろうと思った大地は、それ以外の道具や材料を揃えるために、ヴァイシャリーにある専門店に立ち寄った。
「手芸屋に俺以外の男が居るなんて珍しいなってぼーっと見てたら、」
「あの時の! って、俺が気付いたんですよね」
「そうそう。で、ちょっとだけ興味が湧いた」
「俺もです」
 そのまま店の中で立ち話をしたら、大地もリンスの職業に興味が湧いて。
 近々お邪魔しに行きます、なんて約束して、
「で、工房に遊びに着たら、人形に犯罪者の魂が宿っていて悪戦苦闘中で……驚きましたねぇ」
 大地が人形を取り押さえ、リンスが魂を抜いて事なきを得た。
 そしてそれをきっかけに、能力のことなんかも知って。
「……いろいろありましたねぇ」
「そうだねぇ」
 しみじみ。
「はー……おまえら大変だったんだ」
 壮太が感嘆の声を漏らすのを聞いて、
「そういえば瀬島さんは? どう出会ったんです?」
「え、オレ?」
 大地は話題を振ってみたけれど。
「…………」
 黙り込まれてしまった。
 そんなに変な話なんですか? とリンスに目をやると、普通に見つめ返された。相変わらず判断し辛い表情だ。
「あー……くだらねーぞ? 大したアレじゃねーぞ? 事件性も漫画的出会いも何もねーぞ?」
 ぼそぼそと小声で、けれどしっかり念を押してくる壮太に、「どうぞどうぞ」と促すと。
 はぁ、と息をひとつ吐いて話しはじめた。


「いつだったっけな。あったかくなってきた頃か?」
 思い出しながら、話す。
 明確な日は思い出せないが、花が芽吹き始めた頃だった気がする。
「ヴァイシャリー付近の小さい町に用事があってさ。立ち寄った帰り、急に小型飛空挺の調子が悪くなっちまって。んで飛べなくなっちまったんだよ」
 直そうにも工具は下宿先に忘れてきていたし。
 近場に店もないし。
 百合園女学院に親しい友達も居ないし。
 そもそも男である自分が学院内に入ることは不可能だし。
「助け呼ぼうにも携帯も充電切れちまってるしさー。
 あーもーしゃーねえな意地でツァンダまで帰ってやるよド畜生、って吹っ切れたときにさ、リンスの工房が目に入ったんだよ」
 それはもう地獄に仏。死門に垂れた蜘蛛の糸。
「なりふり構ってらんねーし、遅い時間で看板も『close』ってなってたけど、工房のドア叩いて開けてもらって。そんで工具貸してもらったってわけ。
 ……だけどよー、」
 こんな郊外に店があったことにも驚いたけれど。
「そん時のこいつって今よりずっとガリガリでさ、もう何食って生きてんのって感じでさ」
 目にも力はないし、何もかも面倒そうだったし。
 あ、こいつ疲れてんだなって。
 なんとなくそう、思って。
「飛空挺が直ったあと、オレの下宿先のパン屋のパンを持ってお礼しに行ったんだよ」
 痩せていたから食べ物を持って行った。それは勿論だったけど。
 疲れている時は、美味しい物を食べさせれば少しは元気になるかなー、とも思って。
「それが始まり。……ほら、面白味もなんもねーだろ」
 話は終わりだ、とばかりに手を振ったら、
「いえいえ……なんというか」
「あ?」
「瀬島さんのお礼の仕方が可愛いですねえ」
「はあ!?」
 なぜか、可愛いと言われた。
「ちなみに持ってきてくれたパンは、カメの形のメロンパンだった」
 おまけに、壮太自身も忘れかけていたことをリンスが言う。
「なっ……んでそんなことは覚えてんだよ!?」
「俺記憶力いいもん。他にもパンダとかカニとか」
「普通なのも持ってったろ!?」
「可愛いやつのインパクトが強すぎて」
 まさか覚えられているとは思わなかった。それならもっと当たり障りのないものを持って行ったのに。
 ――でも可愛くて美味くて人気商品で、って持って行くには充分だったんだよ畜生。
「あと瀬島がまさかそんなものを持ってくるとは思わなくて」
「どういう意味だよ」
「だって見た目ヤンキーじゃん。ヤンキーが可愛いパン持ってきたら、そりゃ、ねえ」
「ギャップがありすぎますねぇ」
 リンスの言葉に、大地も頷く。
「瀬島さんって可愛かったんですね」
 にっこり笑顔で言われても。
「嬉しくねーよ!」
「顔を赤くして否定する壮太さん、素敵ですわぁ~♪」
 シーラはカメラを回しているし。
 ――つーか撮んな!!
 がばり、ブランケットで顔を隠して適当に隅っこへ走る。
「瀬島?」
「瀬島さん?」
「寝る! おまえらも可愛いとか言ってねーで寝ろよ風邪引いても知らねーからな!」
「だからってそんな隅で丸まらなくても。布団敷くよ?」
「もーほっとけ、構うな、おやすみ!」
 言い切って、黙り込んだ。
 さすがにこれ以上ちょっかいをかけるような友人達ではなく。
 静かになった途端、猛烈な眠気に襲われた。
 そのまま眠りの世界へ、落ちる。


 朝目が覚めたら、ブランケットの上から余分に毛布が掛けられていた。
 おかげで寒さを感じることなく、壮太は起き上がる。
 さすがに床で寝たせいか身体が少し痛んだが、雪の中ツァンダまで強行して行くよりはマシだっただろう。
 ――さて、と。
 しーん、と静まり返った工房。
 きょろきょろと、壮太は辺りを見回す。
 ――誰も起きてねえな?
 リンスも、クロエも、大地も、シーラも。
 チャンスは今だけだ。
 律義に毛布とブランケットを畳んでから立ち上がり、工房の机の上にあるものを置いた。
 それは、昨夜ここに来る途中、思いついて雑貨屋で購入したクリスマスプレゼント。
 アルミカップに入った、シンプルなティーライトキャンドルのセット。
 こっそり置いて帰れば、サプライズとしても上々――。
 と、視線を感じた。
 ……嫌な予感。
 恐る恐る振り返ると、にまぁと笑った大地と、ビデオを回すシーラの姿。
「な、な、」
 ――なんで起きてんだよ!
 ――まだ朝の6時前だぞ!? 老人かおまえら!
 叫びは声にならない。
 ただ、見られた、と。
 その恥ずかしさで、硬直。
「これが世に言うヤンキーデレですね?」
 にっこり笑う大地に。
「うっ、うるせえ! このホワイティ眼鏡!」
「ホワイティ眼鏡!?」
 わけのわからない罵声を投げつけて、工房を飛び出して飛空挺に跨る。
 ――ああもう、柄にもねえことするんじゃなかった!!
 そう僅かに悔やみながら、ツァンダまで一直線に帰るのだった。


「……なにこれ?」
 それからしばらくして起きたリンスが、机の上のプレゼントを見て首を傾げる。
「ヤンデレサンタさんからの贈り物ですよ」
 先に起きていた大地が、くすくす笑いながら答えた。
 思い当たる人物は要る。居るけれど、
「直接渡せばいいじゃない」
「それはほら、ヤンデレですから」
 答えに、そういうものなのか、と頷いてみる。頷いたところで、
「朝ごはんですわ~♪」
「シーラおねぇちゃん、りょうりすごいのよ! なんだかよくわからないけど、すごいのよ!」
 シーラとクロエが作った朝食が運ばれてきて。
 ヤンデレとツンデレって似てるところがあるのかなぁ、なんて考えながら。
「え、なにこれ。朝ごはん? 朝ごはんってこんなに豪華なものだっけ?」
「だから、シーラおねぇちゃんがすごいのよ!」
「……ああ、うん、すごいね」
 また、日常。