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リアクション
【2022年12月24日 06:15AM】
パーティードレスの下は下着無しという衝撃的な目覚めを披露したリナリエッタに少なからず面喰らったフレデリカではあったが、しかし自らの使命をそこで放棄する彼女ではない。
取り敢えずリナリエッタから、昨晩何をやっていたのかをそれとなく聞き出してみたところ、
「あら……私ってば確か、キロス君って子と遊んでたんじゃなかったっけ」
との回答。
全く無視する訳にはいかないが、ひとまずは秘宝とは直接的な関係はないと踏んで、フレデリカは他の面々を起こして廻った。
「あら? あたしってば、どうして余所様のお部屋でお目覚めタイムなんてやらかしてるのかしら?」
セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)は、フレデリカに負けないぐらいのセクシーなミニスカサンタ衣装で、ベッドの端から半分ずり落ちかけた状態で目を覚ました。
一方、パートナーのセレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は極々普通のパーティードレス姿で、ベッドにもたれかかる格好で眠っていたのだが、セレンフィリティの妙に間の抜けた声に反応して、こちらも同じく目を覚ました。
「こりゃまた、酷い状況だわね……まぁ雑魚寝自体は教導団の演習で何度も経験済みだけど、こんなに皆、凄い格好で寝てるってのは初めてじゃないかしら」
セレアナも多少驚きの念を見せつつ、しかし然程に動揺した様子は見られない。
この辺は日頃、セレンフィリティに振り回されている経験がものをいっていた。
ところで、とフレデリカがふたりに、昨晩の行動について何か覚えていないかと問いかけられると、この時漸く、自身の記憶が一部欠落していることに気づいた模様である。
「う〜ん、こんな恰好してるからには、多分パーティーでどんちゃん騒ぎしてたんだろうけど……何か思い出せないわねぇ……でもまぁ、良いか!」
などといきなり開き直るセレンフィリティに、セレアナはぎょっとした顔を向けた。
「ちょっとセレン……記憶がないってのは、物凄く重要な意味を持つのよ? 幾ら何でも、まぁ良いかは拙いんじゃないかしら」
「気にしない気にしない! 本当に大事なことならすぐ思い出すだろうし、こんな恰好してるってことは、きっと楽しかったんだよ!」
凄まじく大雑把に前向き発言を繰り返すセレンフィリティに、セレアナは二日酔いとは異なる別種の頭痛を感じてしまった。
だがそれでも一応、ふたりとも何となく覚えていることはあった。
セレンフィリティは誰かをからかったか、もしくはいたずらして遊んでいたような気がするといい、セレアナは誰かと一緒に別の誰かを追い回していたような記憶が断片的に残っているという。
記憶まで性格そのままの、極端なまでに対照的な様相を示すふたりだった。
次いでフレデリカは、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)とディアーヌ・ラベリアーナ(でぃあーぬ・らべりあーな)、常葉樹 紫蘭(ときわぎ・しらん)、そしてリイム・クローバー(りいむ・くろーばー)の四人を揺り起こした。
ディアーヌ、紫蘭、リイムは普通に目覚めたが、ネージュだけは違った。
起きるや否や、
「きゃ〜! トイレトイレ〜!」
などと膀胱付近を抑えながら、物凄い勢いで宿泊室に備え付けの個室トイレに駆け込んでいってしまったのである。
唖然とする三人だったが、不意に美緒がリイムの後ろからぬっと顔を近づけてきた。
「あら……てっきりプレゼントのぬいぐるみさんだとばかり思ってましたのに……もしかしてあなたは、コントラクターさん?」
その容姿から、たびたびぬいぐるみと間違われるリイムは、流石にこの時は凄まじく気まずい状況に追い込まれ、何と答えて良いか言葉に詰まった。
が、そんなリイムの苦悩など知ってか知らずか、フレデリカが目覚めた三人に対し、矢張りこれまでと同様、昨晩の記憶について聞き込みを開始した。
すると三人とも矢張り同じく、今までフレデリカが目にしてきた者達と同じ反応を見せた。
「あれ、何してたっけ……確かパーティーに出てたような気がするんだけど……あと、トイレだったかな? 誰かと思いっ切りぶつかったような」
ディアーヌは前頭部に妙な鈍痛が残っているのに気付き、思わず掌で軽くさすってしまった。
するとそれにつられたようにして、セレアナが腰の辺りに走る妙な痛みに顔をしかめながら、同じように掌でその部分に触れていた。
次いで紫蘭は、右の人差し指を顎先に当てながら、う〜んと小さく唸る。
「えっと……わたくしは、どなたかを追いかけてたような気がしますわ……とっても可愛い、小柄な身長のどなたかを……」
いいながら、その視線は何故かリイムに。
対するリイムは、美緒に背後から迫られつつも、目を白黒させていた。
「えとえと、ぼ、僕は誰かにお持ち帰りされそうになったから、逃げ回っていたような気がしまふ」
フレデリカに応じつつ、しかしその怯えきった視線は紫蘭の悪魔的な微笑みに、がっつり釘付けである。
と、そこへ放尿後の爽やかな解放感に浸り切っているネージュが、のそのそと室内に戻ってきた。
他の三人に遅れて昨晩の記憶を尋ねられたネージュは、何故か機嫌が悪そうに仏頂面をぶら下げた。
「何だか、凄く嫌な感じが残ってるんだよね……一杯飲み物飲んだような気がするけど、それはまぁ良いよ……でもね、あたしね、トイレでめちゃくちゃ気分が悪くなるようなことをされたような、そんな気がするんだよね……」
怒りがふつふつと込み上げてきたのか、ネージュはフレデリカをまるで人生の仇であるかのように、猛然と食ってかかり始めた。
「大体ね、頻尿の何が悪いっての!? 頻尿ってことは腎臓がよく機能してて水分の循環が良いから、結石とか出来にくいってことだよね! それってすっごい体に良いことだよね! 頻尿を舐めとったらあかんぜよ!」
何故そこでキレるのか、ネージュの心理を理解出来る者はひとりとして居ない。
だがこの時、セレンフィリティはその烈火の如き怒りの炎に対し、随分と怯えた様子を見せていた。
昨晩、何かあったのだろうか。
* * *
「どわぁっ! ちょ、ちょっと待てぇ! パンツまでひん剥くなんざぁ、聞いてねぇぞ!」
ホテルの客室階の廊下をパンツ一丁で逃げ回ってるのは、エリュシオンの暴れん坊ことキロス・コンモドゥス(きろす・こんもどぅす)ね。
追いかけてるのは……。
「きゃははははっ! ほ〜らほらぁ! 早く逃げないと、最後の一枚まですっぽーんといっちゃうわよぉ!」
まぁ、リナリエッタさんじゃない。
確か彼女、プロ野球選手だから、走り込みとか結構してる方だよね。だから、あんなに足が速いんだ。
ドレスの胸元でおっぱいの根元がたゆんたゆんしてるのは、何でだろう? ブラしてないのかな?
あ、そうか。野球拳だ。
野球選手だけに、野球拳でキロス君を追い詰めたって訳ね。
リナリエッタさんってば、最初の一枚をいきなり中の方から取り出してブラを渡すなんて、玄人にも程があるわ。
「にゅははははっ! まだまだこの先にも国軍が誇るトラップが山のように張ってあるわよぉ! どんどん逃げなさぁい!」
セレンフィリティさんも一緒になって、キロス君を追い回してるわ。
しかも教導団仕込みのトラップをホテル内に仕掛けてるって、悪戯を通り越して、それ犯罪だし。
まぁ、相手があのキロス君だから、良いか。私が許す。
「ちょっとセレン! 一緒になって何やってんのよ! 待ちなさい! それからキロス・コンモドゥス! そんな恰好のままで走り回らないの! 猥褻物陳列罪現行犯未遂で逮捕よ!」
更にその後をセレアナさんが、物凄い形相で追いかけてる……そりゃ、ああいう顔にもなるわね。
幾ら酔っぱらってるからとはいっても、セレンフィリティさんの悪行が世に知れ渡れば、下手すりゃ軍法会議ものだもんね。
三者三様の死にもの狂いのチェイスってとこかしら。
「何だか、騒がしいな〜」
トイレへと続く角から、ディアーヌさんがひょっこり顔を出そうとしてる。
あー、危ないよ……ってか、遅かった。
ディアーヌさんが角から突き出した頭が、丁度そこを走り抜けようとしてたセレアナさんの腰に激突。
うわちゃあ、ありゃお互い強烈だね。
セレアナさんは、
「うおぉぉぉ、こ、腰が……腰が〜」
って、四つん這いになって唸ってるし、ディアーヌさんはもんどりうって派手に吹っ飛ばされた挙句、廊下の壁面を叩き割って、頭だけ壁の中にロストしちゃってるし。
石の中に居る!
っていうようなフレーズが、昔の有名なロールプレイングゲームにあったような。
あら、そうこうしてるうちにセレンフィリティさんが駆け戻ってきた。
「セレアナったら、そんなお尻突き出して四つん這いになっちゃって、何てセクシーなのかしら。すっごいムラムラしてきちゃった!」
「お、お尻、じゃ、なくて……こ、腰が……腰が痛い、のよ……あの、ね、聞いてる?」
セレアナさん、よっぽど痛いんだろうな。脂汗流してる。
なのにセレンフィリティさんってば、セレアナさん官能の汗を流してると勘違いするとか、どんだけビッチなのよ。
「でも今は駄目! セレアナとはベッドで楽しむんだから! ここはひとつ路線を変えて、幼女プレイに走るしかないわ!」
突然何をいい出すんだか分かんないけど、セレンフィリティさんってば、いきなり幼児用トイレに駆け込んでいっちゃったよ。
あ……中から悲鳴が聞こえてきた。
ネージュさんの声ね、間違いないわ。
「何を勝手に、ひとの放尿シーンを視姦してるのよ! このド変態!」
「いやん、そのパンツをずり下げた恰好のままで激怒し、あまつさえ仁王立ちになるその姿、セクシーよ! とってもセクシーうぐふぉっ!」
セレンフィリティさん、物凄く良いパンツ、ならぬパンチをもらったみたい。
ところでチェイスといえば、他のところで紫蘭さんがリイムさんを追いかけてるわね。
「あぁ〜ん、お待ちになって〜! 是非是非お持ち帰りさせて頂き、わたくしの夜の慰み者になってくださいまし〜!」
「けけけけけ結構ですっ!」
……まぁ、このふたりはぶっちゃけ、どうでも良いわね。
この時、私の時計は2022年12月23日の23:30頃を差していた。
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