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お月見の祭り

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お月見の祭り
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 たいむちゃんのお餅つきは、まだまだ交代でいろいろな人が手伝いに来ている。
 今は、酒杜 陽一(さかもり・よういち)高根沢 理子(たかねざわ・りこ)が一緒に浴衣を着て、餅をついているところだ。
「二人とも、ありがとう。しばらく休憩しても大丈夫よ」
 たいむちゃんに促されて、陽一と理子はお餅を持って休憩をしに、月が綺麗に見える池の畔に移動した。
「それじゃあ、お餅を食べましょうか!」
 理子に促されて、陽一はお餅を一個手に取った。
「二人で分けて食べようか」
「もちろんよ」
 陽一と理子は、半分にした餅を手に取った。
「お酒も飲む?」
「うん、もらおうかな」
 陽一は理子と乾杯をして、餅を食べながら月を見上げた。
 去年のお月見からおよそ一年が経って、陽一と理子の関係も大きく変わった。
「あの時から愛への認識に変化があった?」
 去年と同じように煌めいている月を見上げて、陽一が理子に訊ねる。
「そうね……。去年はまだ、漠然とした憧れとか、気持ちの燃え上がりみたいなものが恋とか愛なのかなと思っていたけど」
 そう言って、理子は陽一を見た。
「当たり前のように一緒にいるような、こういう静かな想いも、恋とか愛なのかなって思っているわ」

 そこへ、去年よりも少しだけ成長した地祇、ニル子が餅つきの様子を見に来た。
「ニル子ちゃん」
 陽一がそう呼びかけると、ニル子は陽一と理子の方を振り返った。陽一たちは、去年の祭りでニル子に、自分たちなりの愛の意味を伝えたのだ。
「あれから、ニル子ちゃんは自分なりの愛の意味を知る事ができた?」
 陽一の質問に、ニル子は少しだけ首を傾げた。
「少し、だけ? ううん、嘘でした。あれから、たくさんのことがありました……けど、やっぱり結局よく分からない。……私に見つけられるでしょうかぁ?」
 そんなニル子を見て、陽一は難しそうに、けれど少し微笑ましそうに、笑った。
「今はまだ見つけられなくても、いつか、それを見つけられる日がきっとくると思う」
「見つけても、きっと形が変わるかもしれないしね」
「見つけても形が変わる……ますます、よく分からなくなってきましたぁ」
 理子の言葉に悩むニル子を見て、陽一と理子は、顔を見合わせて微笑み合った。

 お互いの間にある、愛の形を感じながら。