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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―

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聖戦のオラトリオ ~転生~ 最終回 ―Paradise Lost―
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「なあ、カミロ。てめぇはこれからどーすんだよ?」
 天空寺 鬼羅(てんくうじ・きら)は、海に背を向け佇んでいるカミロに尋ねた。
 一応、まだ治療中ということもあるが、元々薔薇の学舎の所属、しかも寺院にいたことも知られている。
 政府が動けば、裁かれることになるだろう。
「私は何があろうと、シャンバラに迎合はしない。裁かれるなら、甘んじて受け入れよう」
「オレとしちゃ、パイロット科の教官にでもなって欲しかったんだがな。そうすりゃいつだっててめぇに挑めるってのによ」
 だが、決してそうはならない。
 それが全てを失った彼の最後の矜持なのだろう。彼の知るジェイダスはもういない。今の少年の姿となった彼でなく、あくまでカミロが見ていたのは、校長として君臨していたジェイダス・観世院という男なのだ。
「これからのことは、処遇が決まってから考える。仮に、解放されるなら――探しにでもいくとするよ。今、この世界で私に出来ることを」
 

* * *


「なあ、エヴァン」
 十七夜 リオ(かなき・りお)は、グエナ・ダールトンの墓標の前に来ていた08号の姿をしたエヴァンに声を掛けた。
「ヴェロニカには、まだ会ってないんだろ? 会わせるって約束した以上、来て欲しいんだよ」
(――エヴァン・ロッテンマイヤーは、海京での戦いで、グエナ・ダールトン共々死んだ。これで、旧F.R.A.G.のメンバーは、非戦闘員だったヴェロニカを除いて、全員いなくなった)
 表情が作れないため、声だけで示す。
「どんな姿だって……ヴェロニカにとっては、たった一人の家族」
 フェルクレールト・フリューゲル(ふぇるくれーると・ふりゅーげる)がエヴァンに向かって言った。
(それでも、だ。オレが生きてるってことにしとくと、アイツを縛ることになる。あの都市での戦いのことを聞くと、【サタン】の一件の後、アイツなりにオレから離れて、前を向けるようになったはずだ。ちょっと前までは、『兄さん、兄さん』って感じだったのによ)
 リオ達に背を向ける。
(……ヴェロニカを頼む。アイツと仲良くしてやってくれ。ただ、泣かしたりしたらどこにいても飛んでくるから覚悟しとけよ)
「会わないってのと矛盾してないか?」
(謎の正義の味方の美女、とでもしておけば問題ない)
「自分で美女って言うかなぁ……」
 そして、彼は去ろうとする。
「どこに行くんだい?」
(この世界のどこか、さ。まあこの姿での、新しい生き方でも探すとするぜ)
 じゃあな、と残してそのままどこかへと消えていった。

* * *


「ヴェロニカちゃん」
 霧羽 沙霧(きりゅう・さぎり)は、学院のベンチに腰を下ろしていたヴェロニカに声を掛けた。
「……今まで、変に当たってごめんね。それから……一緒に戦ってくれてありがとう」
「ううん、こちらこそ。力を貸してくれて、ありがとう」
 その横顔には、どこか寂しさの色が浮かんでいた。
「もしかして、ニュクスちゃんのこと……」
「大丈夫」
 沙霧を見上げ、静かに微笑んだ。
「また会えるって、信じてるから」