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【GWSP】サルヴィン川、川原パーティ

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第6章 美しき微笑み

「こちらですよ、壮太君」
 穏やに声をかけられて瀬島 壮太(せじま・そうた)は木陰でバーベキューの準備をしている友人達に気付く。
「っと、待たせたな!」
 壮太は、コンロ一式を皆の元へと運ぶ。
 彼の隣には、小柄で可愛らしい少女の姿がある。
「可愛いお嬢さんがご一緒ですね」
 声の主、エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)が、少女――遠鳴 真希(とおなり・まき)に微笑みを向ける。
「初めまして」
 と礼をして、真希は壮太に軽く目を向けた。彼が自分をどう紹介してくれるのか、気になって。
「ようこそ」
 下ごしらえをしていた手を止めて、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)も、壮太達に目を向ける。
「あ、うん……」
 壮太は軽く瞳を上に向けて考えた後、口を開く。
「百合女の遠鳴真希。……前にちらっと話したことあんだろ」
 ぶっきらぼうな言い方。だけれど、少し照れが入ってるみたいだなあと思って、真希は内心くすりと笑いながら、頭を下げた。
「百合園女学院の遠鳴真希です。よろしくお願いいたします」
「こちらこそ。貴女とお会いできて光栄です」
 エメがすっと手を伸ばして身をかがめ、真希の小さな手をとった。そして、甲に軽くキスをする。
 真希は笑顔を浮かべて礼をして、エメは立ち上がって穏やかな微笑みを真希に向ける。
 お嬢様学校の百合園生の真希にも、薔薇の学舎所属のエメにも日常的な挨拶だったけれど、蒼空学園生で育ちが良いとは言えない壮太にはちょっともやっとするものがあった。
「さて、焼くぞ焼こうぜ!」
 そんな気持ちを隠すためにも、壮太は火をおこしていく。
「ああ」
 呼雪が下ごしらえを終えた食材をコンロの方へと持ってくる。
 テーブルと椅子は、エメと呼雪が準備をし、既に配置されていた。
 アウトドア用のテーブルと椅子だけれど、テーブルにはエメにより真っ白なテーブルクロスがかけられていた。
 ナイフやフォークも置かれており、お洒落な店のオープンテラスのようになっている。
「お皿とか並べておくね」
 真希は持ってきた袋の中から、プラスチック製の皿や、箸を取り出していく。
 それから、鍋の中に水と布巾を入れていく。煮沸消毒をしてお絞りを作るために。

「不足しているものはありませんか?」
 川原を回って、機材や食料のサービスをして回っているが近づき、白米が入った飯ごうをテーブルに置いた。
「白米か、助かる。あとの食材は一応一通り揃っているから大丈夫だ」
 呼雪がそう答えると、翔は一礼した後、菜箸、トングなどを置き、使用済みの用具を回収していく。
「こちらは、アルコールで消毒してあります。お使いください」
 それから、楽しむ皆からは少し離れて茶を淹れていく。
「使わせてもらうね」
 真希は翔が用意してくれた菜箸を使って、肉をひっくり返していく。
「真希、これも頼むな。エメのリクエストだ」
 壮太がタコさんウィンナーを作って乗せた皿を真希に差し出す。
「可愛い」
 上手く焼かないと、と思いながら、真希はウィンナーを網に乗せていく。
「おし、こっちの方は焼けたなー。ちと味見」
 壮太は焼けた肉を端を切って、皿の上に乗せてタレをぽたぽた落とす。
「……うん、上手い。肉もだけど、手作りのタレがサイコーだぜ」
 笑顔を作り主である真希に向けると、真希は嬉しそうな笑みを浮かべる。
「食え食え」
 そして、呼雪とエメの皿に、肉やソーセージ、ウィンナーを乗せていく。
「こっちも焼けたかな?」
 真希は厚い肉を割いて、箸で掴んで壮太の方に向ける。
「あ、待って。熱いかも」
 急いで自分の方に戻して、ふーふーと息を吹きかける。
 これくらい冷ませば大丈夫かなあと、微笑みながら真希は壮太の口へと肉を運んだ。
 手は作業をしながら、自然に口をあーんと開けて、壮太は肉を食べる。
「うん、もう十分だ」
「そっか、それじゃ皆のお皿に……」
 と、真希は肉を皆に分けようとして、呼雪とエメの方に顔を向け、2人の穏やかな視線にカッと赤くなった。
「べ、別に他意はないぞ」
 壮太も少し慌てながら、トングで野菜をがぱっととって、照れ隠しのように呼雪の皿に乗せる。
 穏やかな目をしているだけで、それ以上呼雪は何も言わない。
 焼き役を交代しようかと声をかけようかとも思ったけれど、二人がとても自然で良いペアだったから。
 そして、壮太が真希が場になじめるよう、気を回していることに気付いていて。
 大切にしている娘なんだなあと、呼雪は感じていた。
「肉だけじゃなく野菜も食えよ、早川!」
 続いて、壮太はタコさんウィンナーを全部エメの皿に乗せる。
「形はタコだがタコで作ったわけじゃないんだぞ」
「ふふ、分かりますよ。ありがとうございます。来られなかった友人達へのお土産に持って帰りたいですね」
 言って、エメはフォークでタコさんウィンナーを食べて、また微笑む。
「まだまだ沢山あるからね」
 真希はまだちょっと顔を赤らめたまま、肉や野菜を焼いていく。
 そして、焼きあがったものを、壮太と自分の皿にも盛り始める。
「特大ステーキだ」
 壮太がようやく焼けた厚い肉をエメの皿に乗せる。
「戴きます」
 ソースをかけて、ナイフとフォークを手にとって。
 エメは上品にステーキを食べていく。
「暑くなってきたね」
 汗を拭う真希に、壮太は、翔が淹れてくれた冷たい茶を渡す。そして微笑み合う。
 呼雪は冷やしたおしぼりをエメへと渡した。エメの白い肌を気遣って。
「ありがとうございます」
 おしぼりを受け取って、顔をそっと覆って冷やし。
 それからまた、エメは友人達に穏やかな目を向ける。
 こうして、のんびり過ごせるのも、後僅か……かもしれない。
 楽しそうな壮太と真希の調理をする姿。
 2人を見守りつつ食事を楽しむ呼雪の姿を。
 穏やかな微笑みを湛えながら目に焼き付けておく。