リアクション
○ ○ ○ お昼を過ぎた頃、釣りをしていたメンバーもバーベキューを始めることにした。 「火はこのように点火します。よく焼いて召し上がって下さい」 川原を回って若者達を手伝っている本郷 翔(ほんごう・かける)が、機材の使い方を説明し、バーベキューに必要な用具を並べていく。 「誰か、料理お願いっ。食材とか、洗っておくから……」 彩は真剣な表情で、得たいの知れない魚や、やかんとか釘バットを洗っている。 普通の魚も少しは釣れたのだけれど、料理は苦手なので下手に手は出さないことにした。 「料理得意な奴は居ないのか? とりあえず塩焼きにしようぜ、塩焼きにー」 駿真は釣った魚の内臓を割り箸で取り出した後、竹串を入れて、彩の方を見る。 「一緒に焼こうか? 「お願い」 彩も魚は、駿真に任せることにする。 「こんなカンジかな?」 駿真は塩を振って炭火で焼いていく。 「もう少し離した方が良いかもしれませんね」 翔が魚の距離を少し離した後、後ろに下がる。 「それでは、私はこれで」 「おう、サンキューな!」 一礼すると、翔は他のメンバーを手伝うためにその場から去っていった。 「肉と一緒にキノコも焼きますよ」 博季は肉と洗ったキノコを網の上に乗せていく。 「うん、これも食べられるでしょう。お願い」 彩が箸でつまんだ赤い物を、網の上に置いた。 「いや、コレなんだかわかんないんだけどー!」 網の上で、何だか奇妙にうごめいているソレに、博季は思わず逃げ腰だ。 「見れば分かるでしょ。トサカよトサカ」 彩は平然と言った。 「何でそんなモンが釣れるんだ? 寧ろ食えないだろ、そりゃ」 「好き嫌いはいかんぞ」 箸が伸びてきたかと思うと、ひょいっとその赤いトサカのような物体を、グランが掴み、ぱくりと口の中に入れた。 「ひぃ……っ」 小さな声を上げたのは、仲間に入れてもらおうとほわほわ訪れたシャーロットだ。 「な、何かこのパーティ怖いですぅ……」 「大丈夫よ、普通の魚もあるし」 言って、彩が掴み上げたのはザリガニだ。 「それは魚じゃないし!」 すぐに、博季のつっこみが入る。 「時代は変わったものね……こんな物まで食べるなんて……」 テティスも彩が調理しようとしている物に驚き顔だ。 「さ、流石に食べられないものは食べないと思います。私もお肉焼きますね!」 ソアは持ってきた羊肉を取り出して、網の上に乗せていく。 「上手そ〜。もう食える? ザリガニも食ってみたいかも」 彼方は紙皿と割り箸を手に待ちきれない様子だ。 「無理して食べようなんて思ってないわ。これなんか串の代わりに使えそう?」 彩は釘バットから長い釘を引き抜いて、割り箸に括り付けて串を作っていく。 「見たこともない魚だけど、美味しそうよね」 彩は斑模様の魚を串刺しにして焼いていき、はいっとグランに手渡す。 「うむ」 グランは特に何の表情も浮かべず、むしゃむしゃと魚を食べていく。 焼かれているキノコも、皿にのせて、むしゃむしゃと食べ続ける。 「……あたしが釣った魚もちょっと変わってるかなあと思うけど、この縞々模様のキノコも変だと思うの」 「いや、これはイルミンスールでしか採れない、肌がすべすべになるキノコなんですよ」 そう説明した博季の横からグランの手が伸びて、キノコをまたひょいっと掴んでぱくりと食べてしまった。 途端、グラン60歳男の顔がつるつるになり、額がキラン☆と光る。 「うわっ。本当だ。あたし食べたかったかも……」 しかしもう、そのキノコはない。 「わ、私も食べてみますぅ……や、やっぱりこっちを〜」 シャーロットはキノコに箸を伸ばしかけたが、無難にソアの羊肉をいただいて食べることに。 「あちっ。けどすげぇ美味い! 十分中まで焼けたぜ〜!」 味見後、駿真は塩焼きにした釣った魚を皆へ渡していく。シャーロットも喜んで受け取る。 「あつ、あつ……はふはふ、ですぅ〜」 そしてゆっくりゆっくりいただくことにする。 「やっぱり、自分で釣った魚は美味しいわねっ!」 彩が言い。 「それ、俺が釣った魚だけどな」 駿真がにっと笑う。 「細かいことは気にしない。この川の上流、パラ実空間だしねー。って、パパが言ってた気がする!」 彩が笑みを浮かべる。 皆で笑い、ちょっと変わった魚中心のバーベキューを楽しむのだった。 |
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