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オオカミさんにご用心

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オオカミさんにご用心
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 ルディ・バークレオ(るでぃ・ばーくれお)の部屋の扉をノックするホイップ・ノーン(ほいっぷ・のーん)
「どうぞ」
「お邪魔しま――ルディさん!? 髪の毛!!」
 ホイップは部屋に入るとすぐに縁側の座椅子に座っていたルディに駆け寄った。
 以前は長かったのに、今はばっさりと短くなっている。
 ルディは隣の座椅子にホイップを促す。
 その仕草を見て、慌てて正座してしまうホイップ。
「ふふ。そんなにビックリしなくても」
「ビックリするよ。だって、あんなに綺麗だったのに……あ、もちろん今も綺麗なんだけど!」
「ありがとうございます。そうですね……実は恋をしました」
 ルディは庭へと視線を向け、どこか遠くの愛しいものを見る目になる。
「飄々として本心を見せたがらない方でしたが、聡明でお優しい方でしたわ」
「素敵な人なんだね」
「はい、とても」
 やわらかく微笑むルディ。
「私が髪を切ったのはその方ともう2度と会うことが叶わないからですわ」
「……」
「もともと現代には束の間降り立っただけの方……つまり、別れること前提でしたから、仕方ないことだというのは理解していますわ」
「ルディさん……」
 ホイップは急に膝立ちになると、ルディを抱きしめた。
「ホイップさん……」
 ルディはそんなホイップの背中を軽くぽんぽんと叩く。
「仕方ないって頭ではわかっていても……やっぱり、寂しいよ……」
「ええ……」
「でも……素敵な恋だったんだね……」
「はい、とても素敵な恋……ですわ。ホイップさん、恋は後悔のないものが一番ですわよ」
「うん」
 落ち着いたホイップは座椅子に戻る。
 2人で庭を眺める静かな時間。
「空に浮かぶ月も良いですが、池に映った月も風情がありますわね……」
「うん、そうだね」
 2人で池に映る月を見てしまう。
「あら……? ホイップさん、オオカミの耳としっぽが……って、私もですわね」
「ええっ!? ど、どうしてこんなことに!?」
「ふふ、せっかくですから、そのままエルさんを襲ってらっしゃい。たまには女の子が押せ押せというのも悪くないと思いますわ。私とはまたゆっくり話しましょう」
「うん。じゃあ、行ってくるね」
 ホイップは扉のところでルディに小さく手を振ると、部屋を出て行ったのだった。