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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃

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【海を支配する水竜王】侵入者に向ける刃
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第8章 脱獄せよ

「やっと地下4階に着いたか」
 捕らわれた仲間を助けようと壮太たちは地下4階にたどり着いた。
「SPが残り少ないから慎重に動こうね」
 ここへ来るまでの間、隠れ身の術を使いすぎたせ影響で、壮太のSPが切れないかミミが心配そうな顔をする。
「やっとここまで来たんだ。捕まるようなヘマはしないって」
 彼女の不安を柔らげようと壮太は笑って見せた。
「だ・・・誰かそこにいるのでござるか?」
 話し声を聞きいた白矢が近づいてくる。
「何だ生徒の方か。そんな格好しているから、てっきり兵かと思ったぞ」
 ゴースト兵じゃないと分かり、ふぅっと壮太は安堵の息をつく。
「もしや捕らわれている人たちを助けに来たのでござろうか?」
「あぁそうだ」
「拙者に出来ることがあれば手伝うでござるよ」
「それじゃあ、組長に・・・って言っても誰か分からないか。メガネの女子に壮太たちが来たと伝えてくれ」
「了解でござる!」
 壮太の伝言を伝えようと、白矢はトレイを抱えたまま牢の方へ戻っていく。
「メガネ・・・あっ、あの女子生徒でござるな。壮太殿から伝言を預かってきた。ここへ着いたそうでござるよ」
「ほ・・・本当ですか!?よかった・・・ようやく出られますね」
 伝言を聞いた幸はほっとした。
「ねぇ椎名くん、今の話し聞いた?」
「島村さんたちが出られるチャンスだな!」
 仲間たちが出られるかもしれないと聞き、真は嬉しそうな顔をする。
「その前に佐々良さんたちを手当てしてあげたいよな。なぁ、ちょっといいこと思いついたんだけど・・・」
 手当てをするために、いったん鎖から開放してもらう方法をカガチと小声で相談する。
「おーい、もしかして怪我した人とかいるのか?」
 真が牢を見張っている兵に向かって声をかけた。
「いるが、それがどうした」
「怪我した人たちは一体どういう扱いだ!せめて応急処置だけでもさせてくれ!!」
 ズリズリと鉄格子の前に行き、狂ったように叫びながら体当たりする。
「何しやがるんだ、やめろっ」
 大人しくさせようと兵が彼の周囲に銃弾を放つ。
「どうした、何があったんだ!?」
 何事かと待機している他の兵たちがやってくる。
「ここは私たちに任せて、持ち場に戻ってください」
 通ろうとする兵の前にソニアが立ち、本来の持ち場に戻らせた。
「アレを止められるのは俺しかいねえ!鎖外してくれ!」
「えぇえいっ、うるさいやつらだっ」
 仕方なくカガチの拘束を解いてやった。
「あぁーこりゃ手当てをさせてやらないと無理そうだな」
「こっちはそいつが大人しくなれば構わん。ただし、妙なマネをしたら分かっているんだろうな?」
「分かってるって」
 威圧的に言う兵に軽く返事をして真の拘束を解いてやる。
「(ゴミ箱を漁って、ちょいと爆弾を作ろうと思ったけど無理か)」
 カガチは向けられている銃口に視線を移し諦めた。
 縁と黒龍の怪我を治そうと真がヒールをかけてやる。
「佐々良さんの打撲は少し治せたけど、黒龍さんの怪我は傷が深すぎてほとんど治せない・・・。病も発症しているし、危険な状態だな」
 傷を癒しきれなかった真は悔しそうに呟く。
「最後は向こうの牢にいる人か」
 手当てしようとアリア・セレスティ(ありあ・せれすてぃ)がいる牢の中に入る。
「何か着ていないと症状が悪化するから。これ、貸しとくな」
 自分の上着を脱いでアリアに着せようとする。
「おい、そいつの鎖を解くな」
「そうしないと着せられないじゃないか」
「貴様・・・口答えをする気か?それを被せてさっさと出ろ!」
 銃を向けて怒鳴る兵に言われ、真はアリアのいる牢からしぶしぶ出た。



「見張りのゴースト兵がいなくなりませんね」
 脱出のチャンスを逃さないようにルイ・フリード(るい・ふりーど)はウロついている兵を見る。
「その状態では、鎖を破壊するのもキツそうだなダディ」
 手が使えないように縛られ、さらに鎖で簀巻きにされているルイの姿にリア・リム(りあ・りむ)は出られないかもしれないと絶望的な表情をする。
「何だろう・・・黒い煙が・・・」
 諦め状態になったリアが床の方へ視線を移すと、黒い煙が流れてきた。
「ねぇーっ!そっちは解いてくれたのに、こっちは何で解いてくれないの!」
 手当てするという名目で解いてもらっている真を見たニコが怒鳴る。
「うぁあん、えぇえん!本が読みたい、読みたい!」
 床をゴロゴロと転がり、癇癪を起こす。
「うっせぇガキだなっ。だったらオレが話しをしてやる。昔々、あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おばあさんは畑のトマトを盗んだ窃盗の罪で川に流され、おじいさんは賄賂をもらった罪で山にしばかれにいきました」
「―・・・うぁ、何だよそれ。全然昔話じゃないよ!」
「まだ話し始めたばかりじゃねぇか。それにまだ続きがあるんだ」
「やだやだ、ボク自分の本の方がいい!!」
「わがままなやつだ」
 本を読ませて大人しくするならと、ニコの拘束を解いてやったその時、アシャンテの煙幕ファンデーションの煙に包まれ視界を奪われてしまう。
「隙あり!油断大敵だぜ!」
 牢の中にいるナタクはツタと鎖から抜け出し、近くで見張りをしている別の兵に煙幕ファンデーションを投げつける。
 慌てる兵の隙をついたソニアがライトブレードでターゲットの頭部を斬り裂く。
「鍵はこれか」
 グレンはただの死体となった兵のポケットの中に手を突っ込み鍵を奪う。
 生徒たちを出してやろうと、手前から順番に牢の鍵を開けた。
「そこの貴様ら、やっぱり侵入しゃか!」
 服を奪って変装した侵入者だと知った兵は、鍵を開けているグレンに向かって銃口を向ける。
「ちょっと、お兄さん」
「あぁ?こ・・・このガキ・・・!」
 ぽんぽんっと肩を叩くニコの方に振り返ると氷術をくらい氷漬けになってしまった。
「僕にいじわるした仕返しだよ」
 氷の彫像のように凍てついた兵を蹴り飛ばしくすっと笑う。
「壊せないか・・・、耐魔補強されているようだね」
 術で牢を破壊しようとしたが、補強されているせいで破壊することが出来ないようだ。
「やっと自由になれたな」
 輪廻は白矢にエペで鎖を斬ってもらった。
「これでも着ていろ」
 寒さに震えているアリアに上着を投げ渡す。
「皆聞け!上り階段はあちら側、敵の足音を聞いた感じでは地下3階に武器があるはずだ!!武器のないものはそこを目指せ」
 奪われた武器を取り戻そうと輪廻と白矢、ニコとユーノは上の階へ走っていった。
「俺も一緒に行きます」
 彼らについていこうと、真人が駆け寄る。
「退いてよっ」
 階段付近を守っている兵に向かってニコがサンダーブラストを放つ。
「どこから武器を!?」
 驚いた輪廻が目を丸くする。
「フフフッ、こうやってごまかしたんだよ」
 ニコはブックカバーを剥がして見せた。
 普通の本だと思わせておいた本が、実は小さな鍵の書だったのだ。
「ありましたよ、武器!」
 保管庫を見つけたユーノがドアを開けて確認する。
「これが俺の武器だな・・・」
 輪廻は手に取って自分が持っていた武器か確認した。
「長居していると危険だ。いったん上の階で隠れられる場所を探そう」
 隠れられる場所がないか、地下2階へ向かった。
「侵入者が来て監視カメラとゴースト兵が修復不可能なほど破壊されたが、侵入者は既に取り押さえた・・・だから増援の必要は無い」
 グレンは奪った無線機で情報攪乱による嘘情報を流す。
「ほぉう・・・ならば盗聴器から聞こえた声はなんだったんだ?捕らえた者たちが逃げ出したようだが」
「―・・・それは・・・。(そんなものを仕掛けていたとは)」
 しまったとグレンは言葉を詰まらせてしまう。
「たった今、そちらへゴーストたちを向かわせた。あぁそうそう、ちなみに牢獄の鍵穴は毎時間自動で変わる。鍵の閉め忘れがないように、念のためオートロック式にしてある」
「了解した・・・」
 ばれないように演技を続けようと無線機をオフにした。



「他の生徒たちがあっちから来たから、牢屋は向こうか」
 捕まった仲間を助けようと、壮太たちは地下牢へ向かっている。
「きゃ!」
 ミミが何かに躓いて転んでしまう。
「大丈夫か?」
 転んだミミを壮太が助け起こしてやる。
「うん・・・平気」
「ゴースト兵じゃないか!?」
 彼女を抱きかかえてそこか離す。
「動かないですね、ただの死体になっているようです」
 死体が動くかどうかリュースが足で蹴って確認した。
「仲間を助けに来たのか?もうすぐここへゴーストたちがやってくる。早く逃げたほうがいい」
 グレンに幸たちが捕らわれている牢の鍵を開けてもらう。
「ちょっと不恰好だけど、我慢してくれよ」
 壮太はジャケットを脱いでアリアに着せてやる。
 拘束状態から開放しようと、リュースが剣で鎖を斬る。
「ぎゃあぁああわぁあぁ、きゃぁうぁああっ」
 開放された瞬間、電撃のロープが放電してしまい、激痛のあまり幸はゴロゴロと床に転がった。
 簡易アース体の効力はまったくなく、そのまま直撃してしまったのだ。
「だっ大丈夫ですか幸!」
「―・・・だ・・・大丈夫です。(たぶん・・・)」
 ガートナに抱き起こされた幸は口からげほっと煙を吐いた。
「よすが、ごめんね。あの時、ワタシが油断してなければこんなことに」
 泣きながら駆け寄った皐月は、縁が負っている外傷をヒールで癒す。
「いいんだよ皐月。私が皐月を守りたくてしたことだから」
 めそめそと泣く彼女の頭を、縁は優しく撫でてやる。
「戻ったら病院いこうね」
 1人で立てない状態の縁を助け起こす。
「他の兵が来てしまった、急げっ」
 逃げた侵入者を捕まえようとやってくる兵の姿を見たグレンは急ぎ牢から出るように言う。
「(もう来てしまったか)」
 牢獄から出る前に兵たちが来てしまい、舌打ちをした。
「死者に鞭打つのは気が引けるが、黄泉路の案内仕る!」
 道を阻む亡者の群れに向かって巽はウルミを鞭のように振るう。
「うぐ・・・」
 走った影響で傷口が開き、黒龍は苦痛に顔を歪めた。
「今、・・・治す」
 葛葉は彼の傷を止血しようとヒールをかける。
「しっかり黒龍さん!」
 座り込む彼の元へ駆け寄った巽が立ち上がらせようとする。
「いい・・・置いていけ」
「だけどっ!」
「おまえ、まで・・・捕まってしまう」
「まだ来るのか、数が多すぎる」
「逃げるが勝ちだね!」
 巽とティアが兵に向かって煙幕ファンデーションを投げつけた。
 武器を取り戻した仲間が待つ地下3階へ向かう。
「また、牢獄・・・か」
 足を引っ張ってしまうからと残った黒龍は兵に見つかった。
 葛葉は彼を残して行けないと、共に捕まり簀巻きにされてしまった。
「ちくしょうがぁあっ!」
 兵は牢にいた多くの生徒たちを逃がしてしまった悔しさのあまり叫ぶ。
 治療を手伝う名目で鎖に巻かれていない真を睨む。
「な、何だっ。逃がしたのはそっちの責任だろ」
「やかましいぃい」
 彼の腹部を拳で殴りつける。
「ぅ、ぐぁっ」
 簀巻きにした真を牢に放り込み、思い切り蹴りつけた。
「あーあー、逃げちゃったなあ。バレたらあんたどうなるだろうねえ?」
 カガチは幸さちを逃がしてしまい、真に暴力をふるう兵に向かって言う。
「・・・あのさ、俺これから逃げる振りするから捕まえて、脱獄囚1人捕まえましたって事にしなよ。さすればあんたの首はとりあえず繋がるってわけだ」
 考え込む兵にカガチは言葉を続ける。
「なあに、礼はちょぉっと俺と仲良くなるだけでいいからさ。いいだろ?これから長い付き合いになるんだからよぉ」
 わざと逃げるふりをしたカガチも再び捕まった。
「―・・・あがっ!何を注射した!?」
「逃げられないように念のためだ。心配しなくても後遺症だとかは残らない。時間が経てば自然にぬける」
 警戒心を解かない兵は、真に麻痺毒の注射を打った。



「あっ、いたいた!」
 地下3階へ上がった壮太たちは、武器を奪い返して待っている仲間に手を大きく振る。
「どれが自分の武器が確認してくれ」
 彼らに確認してもらおうと陣はおもちゃの袋を渡し、それぞれ取ってもらう。
「これが私の銃ですね」
 幸は袋の中から星輝銃を探して手に取る。
「それにしても黒龍たちが捕まってしまいました。助ける対策を考えましょう」
 助ける対策案を考えるために、幸たちは潜伏場所を探そうと地下2階へ向かった。



「無事か!?」
 地下で合流した美央とレイディスが牢獄内に入る。
「助けに来てくれたのね!」
「今、鎖を解いてやるからじっとしてろよ」
 緋音とシルヴァーナを縛る鎖を高周波ブレードで斬った。
「美央もこれくらい作れるといいんですケドネ」
「私が・・・何ですって?」
「もっと料理が上手かったらいいのにと思ったんデスヨ。・・・ワァオッ美央!?」
 鉄格子の前に美央がいることに気づかなかったジョセフは驚愕の声を上げる。
「―・・・その話は後でゆっくり聞くとして、先にそこから出してあげましょう」
 鎖から開放してやり、ジョセフを牢から出してやった。
「ルイ先輩たち、助けに来ましたよ」
 牢の中で縛られているルイとリアの鎖を解いてやる。
「ありがとうございます」
「ふぅ、きつかった・・・」
 廊下へ出ようとすると、異変に気づいてやってきた兵と遭遇してしまう。
「逃げようとしても、そう簡単にはいかないぜ」
「うぁああっ、助けてダディ!」
 兵は逃げようとするリアの襟首を掴む。
「おっと。こいつに傷を負わせたくなきゃ、そこから動くんじゃねぇ」
「その子を離してあげてっ」
 リアを助けようとアリアは牢屋から駆け出た。
「私は・・・・・・私は何をされてもいいから・・・・・・」
 兵がアリアの方へ振り向いた隙に、レイディスは剣の柄をゴーストの腹部に叩きつけ、彼の手からリアを助け出す。
「早くこっちに来いっ」
 共に出ようとレイディスがアリアを呼ぶ。
「いいの私は。それに大勢で逃げたら、捕まってしまうかもしれない。他の人たちが助かれば、私はそれで・・・いいの・・・」
「急がないと他のゴーストがここへ向かってきているわよ!」
 脱出の手引きをしようと駆けつけた唯乃が知らせる。
「あぁ、上の階からこちらへ来ているですよ」
 向かってくる兵をエラノールが星輝銃で狙い撃つ。
「―・・・すまないな。よし、今のうちに逃げるぞ!」
 他の兵どもが来ないうちに逃れようとレイディスたちは牢を出て地下3階へ向かった。
「待てぇえっ!」
 下の階からやってきた兵が彼らを見つけ、追いかけようとする。
「まずい・・・このままでは彼らが捕まってしまう」
 何とか逃走の手助けをしようとアシャンテが考え込む。
 結局いい考えが浮かばず、ラズに目配せをする。
「どこを見ている。こっちだこっち!」
 ラズはわざとらしく大声を上げ、レイディスたちを追いかけている兵を振り向かせた。
「いたぞぉおー!」
 使ったラズはあっとゆう間に簀巻きにされてしまった。
「すみません・・・」
 小さな声音で言うとアシャンテは兵たちに見つからないように地下3階へ向かった。
 つまりラズは生徒を逃がすための囮だったのだ。
「おいおい、おじさんなんだから丁寧に扱ってくれよ」
 牢に放り込まれたラズが文句を言う。
「小娘・・・貴様のせいで逃げられたじゃえねか!」
 彼らに逃げられてしまった怒りのあまりに、アリアの足を掴み牢の中へ放り投げる。
「お望み通り、ボロボロにしてやるっ」
 兵は少女の腕をぎゅっと掴み、壁際に叩きつけた。
「ぁあ゛っ」
 思い切り叩きつけられたアリアは激痛のあまり身体を捩る。
「いやっ、いやぁあっ」
 焦茶色の髪を引っ張られ、引きずりられてしまう。
 技が使えないように少女の両手足を鎖で縛り壁際に吊るす。
「くぁ・・・・・・や・・・。あ、きゃああああああ!?」
 電気を発生させる縄を容赦なくアリアに叩きつける。
「今日はこれくらいで簡便してやる」
 泣き叫ぶ気力もなくなり、身体を痙攣させているアリアを睨みつけると、兵は牢の鍵を閉めた。



「持てる分だけ持ってきた。どれが自分のか確認してくれ」
 保管庫から持ってきた武器を、垂がルイたちに見せる。
「これがワタシのですね」
「生き物もいたよ」
「オウ・・・ミーの大事なフク助、ネズ夫・・・」
 ライゼから受け取ったジョセフは、なぜか一緒に保管庫に入れられていた使い魔たちを抱きしめた。