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マホロバで迎える大晦日・謹賀新年!明けましておめでとう!

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第三章 カウントダウンイベント 5

 マホロバ城の庭で会う恋人同士の影がある。
 男はこの寒空の下でずっと待っていた女を愛おしそうに見つめた。
「来てくれてたか……リース」
 マホロバ幕府の旗本篠宮 悠(しのみや・ゆう)は何時になく真剣な表情である。
 リース・アルフィン(りーす・あるふぃん)は只ならぬ雰囲気を感じ、視線を地面に落とした。
「悠さん、大切な話って……何?」
 もし、別れてくれと言われたら、イヤだな。
 リースはそんなことを考えながら、彼の言葉を待った。
 悠はひとつ息を継ぎ、静かに、そして力強く言った。
「俺はもともと面倒くさがりだし、回りくどい言い方は柄じゃないからはっきり言う。リース、俺と結婚してくれ」
「……!」
 リースは息を呑んでそのまま彼を凝視している。
 悠はちょっと待って再び言葉を発した。
「俺の妻になってくれ」
「ゆ、悠さん。結婚って! そ、そんなこといきなり言われても、私……」
「俺じゃ、嫌か」
「そんなことないよ! 私も、悠さんのお嫁さんになれたら素敵だなあって、考えてたんだ……うん」
 リースは真っ赤になって、手で胸の高鳴る鼓動を抑えようとしていた。
「私、悠さんのこと本当に好きだし、ずっと、ずっと一緒にいたいよ。でも、私なんかでいいの? 悠さんのお仕事の邪魔になるんじゃ……」
「おいおい、何を……俺を変えてくれたのはリースだぞ? 旗本にもなって、これからのことを色々考えた。マホロバの未来、扶桑、他国との関係……そして、リースとの事も
……俺に、付いて来い」
 悠は彼女の言葉をじっと待った。
 ただひとつの返事が欲しかった。
 リースは涙ぐみながらにっこり微笑む。
「嬉しい……これからも、よろしくね。悠さん」
 リースは悠に両手を伸ばし、彼は彼女をしっかりと抱きしめた。
「大好きだよ……悠さん」
「俺もだ、リース。愛してる」
 悠は屈みこみながらリースの瞳に口付け、あふれる涙を拭った。
 彼の唇が柔らかい頬を伝い、求めている彼女の唇に触れる。
 二人は互いにきつく抱き締めあい、リースがわずかに震えるのを見逃さずに、悠はさらに深く唇を絡め取った。
 彼女の髪の甘い香りを感じながら、冬の夜空に花火が咲く音を聞いていた。



「……そう、悠もついに覚悟を決めたわけね」
 中庭の影から二人の様子を見守っていた毛利 元就(もうり・もとなり)は、きびすを返すと城に戻り、貞継の姿を探した。
「……という訳でして、無礼講ついでに二人の祝言を挙げたいのです。少しの間だけ、マホロバ城をお貸しいただけますでしょうか。また、房姫様共々、仲人として後見していただければ幸いにございます」
 元就の当然の申し出に、しばらく開いた口が塞がらない貞継と房姫だったが、快く許しを出した。
 急遽、祝言の準備がとり行われた。

卍卍卍


「さあ、新郎新婦のご入場だよう!!」
 大広間にて急こしらえの会場に、咲夜 由宇(さくや・ゆう)の和風エレキギターの婚礼曲が響いた。
 新郎新婦がおごそかに現れる。
 悠は紋付袴、リースは純白の白無垢姿である。
「綺麗よ、リース」
 葦原 房姫(あしはらの・ふさひめ)は打掛の白さにより一層引き立つ彼女の美しさを讃えた。
「でも、もっと前に言ってくれれば、色々と用意できたのに」
 房姫は口惜しそうに言ったが、角隠しの下のリースは笑顔を浮かべていた。
「こんなに大勢の方に見守ってもらえるんだもの。それだけで私たちは幸せです」
「お前たち、いつの間にそんな仲になったんだ?」
 貞継は不遜に言い、刀に手をかけた。
「悠……将軍の女官に手を付けたのだ。覚悟は出来てるだろうな」
 場内がざわざわとざわめいた。
 悠の顔がこわばり、リースにも緊張が走る。
 貞継は刃を抜き、悠の肩の上に置く。
「死ぬ気で守ると誓え。でなければ、この場で首をはねるぞ」
「……ああ、言われなくてもそのつもりだ。リースをずっと守り続ける。誓うよ」
 貞継はにやりと笑い、刀をおろした。
 悠も晴れ晴れとした笑顔を向ける。
 やがて、三々九度の三重ねの盃が用意された。
 新郎が小盃を手に取り、房姫が注いでやる。
 悠はそれを一口目・二口目と口付け、三口目に飲み干す。
 その後、リースも同様の行った。
「こうして何回も盃を重ねることによって、固い縁を結ぶという。二人とも、その縁を忘れるなよ」
 貞継の言葉の後、寄り添う新郎新婦。
「おめでとう! お幸せに〜!!」
「リースさん、よかったね!」
「いや〜、新年そうそうめでたいでござる!」
「悠、浮気すんじゃねーぞ!」
 彼らを祝って、祝いの言葉がかけられる。
 由宇の曲に合わせてお囃子が鳴り、祝宴が最高潮に達していた。