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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ

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【蒼空のフロンティア秋祭】秋のSSシナリオ
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リアクション


・午前の天御柱学院職員室


「どうですか、ヴェル。そちらの採点状況は?」
「ん〜散々ね。実技教科だとバカにしてペーパーテスト用の勉強サボったヤツがいっぱいだわ。ま、遠慮無く『赤』つけてレポート山盛り出してやる予定よ」
 天御柱学院の職員室で、アルテッツァ・ゾディアック(あるてっつぁ・ぞでぃあっく)ヴェルディー作曲 レクイエム(う゛ぇるでぃさっきょく・れくいえむ)の二人は、前期試験の結果を確認していた。
「……ははは、どこも同じようなものですねぇ。ボクの担当教科、生物も軽視されがちですからね。まあ、追試に追試を重ねさせることは当初から考えておりましたが」
 ドン、とアルテッツァはテスト用紙の束を机の上に置いた。
 クーデターの影響により、古代都市での決戦後はそのまま夏休みになる……と多くの生徒が思っていたらしい。
 しかし、ちゃんと前期の成績を出すためにも期末考査を行うことが決定し、多くの生徒達の反感を買ったのは記憶に新しい。
 通知表は夏休み中に各生徒へと送られる。学期内に開示出来ないのは、追試と補習が夏休み前半に行われるからだ。
 天御柱学院では、義務教育である中等部において高等教育までを終わらせることになっている。そして高等部では三科それぞれでの専門教育が行われる。いわば、中等部の三年間が一般的な中学・高校に相当し、高等部は単位制ということもあり、大学に相当するのだ。
 中等部の基礎教養課程で履修する全ての科目で基準点を超えていなければ、高等部に上がることは出来ない。また、専門課程である高等部にも選択必修として教養科目が存在する。
 そのカリキュラムの性質上、一般人は言うまでもなく、契約者にとっても非常に厳しいため、救済措置として追試と補習の制度が設けられている。科目や教員によって生徒に課す内容は変わるが、基本的に「必修」とされるものだけが対象だ。
「極力、留年する生徒は出したくないですからね。それに、同じような問題なら上限である三回までに、ほとんどの生徒がパスするでしょう」
「それだけやってダメなら、諦めもつくわねぇ。アタシのレポートも、『他人のを写させてもらったのは無効』ってするつもりだから、少しは真面目に取り組んで欲しいものだわ。まあ、やってきたところで成績は決まってるようなものだけど」
 進級、卒業するだけなら成績はそれほど関係ない。しかし、成績優秀者はロシアの研究機関・日本政府関係機関への就職が内定したり、空京大学への推薦を得られたりといった特典がついてくる。
 とはいえカリキュラムの厳しさ故に、いくら救済措置があるといっても、卒業出来るだけでも十分に誇れるレベルだ。
 また、今は短期留学という形でシャンバラ各学校から生徒を受け入れているものの、彼らに対してはイコン操縦の基礎を教える程度だ。すぐにいなくなる人間に、わざわざ時間を割くまでもない、というのが学院側の見解である。無論、熱意ある者には編入試験を行った上で、振り分けを行うが。
 そのような背景があるため、天学の教員も俗に言うエリート層の人間が多い。アルテッツァもこの学校に教員として入り込むのに、非常に苦労したものだった。
「それはそうとゾディ、アンタこの頃顔色良いわねぇ。どーしたのよ?」
 レクイエムがアルテッツァの顔を覗き込んできた。
「ん? ああ、あの戦いが終わったあとから、寝ていてもうなされ難くなったんです。何ででしょうね……あの戦いのプレッシャーが自分の中にもあったのでしょうか? とにかく、今は薬に頼らなくても……眠れるようになりましたね」
「あらそ、だったらもう心配要らないかしら?」
 本当に、何が原因なんだろうか。よく眠れるようになったのは。
 アルテッツァは最終決戦の日のことを振り返ってみた。『誰かが自分の心を抱きしめた感覚』を受けて、目を覚ましたのは確かだ。
 記憶違いではないだろう。それに、夢か現か、『だいじょうぶ……だいじょうぶ』と呼び掛ける声も聞いている。

(ゾディが眠れるようになったこと。本人はまだ気付いてないみたいだけど、それはあの子のおかげだと思うわ。自分が暴走の原因になったことを、かなり思い詰めていたようだもの。そのために、猛勉強して医学・薬学の知識を身につけていたから……)
 不思議そうに考え込んでるアルテッツァの様子を、レクイエムは注視した。
 その顔から察するに、本当に分からないといった感じだ。
 気づけないのは、彼のせいなのか、それともヒトの悲しい性なのか……それはレクイエムには結論が出せないものだった。
「……さて、テスト点の入力を行いましょう。 ヴェルの方からやった方が早そう、ですか?」
「そうね。実技とペーパーの結果はもう変わらないし……それじゃ、ソッコーで入力するわよ。そこにある追試を受ける生徒達、もうすぐ来るんでしょ。ただでさえ、アタシら教員はやることが山積みなんだから」
「ですね。もう成績が確定している子達の分はまとめましょう。ボク達のせいで、成績通知が遅れたなんてことになったら嫌ですからね」
 通知表はインターネットを通じて生徒達の個人ページで公開され、それに併せて印刷されたものが郵送で送られるという仕組みである。
 前期の結果は八月下旬に、後期の結果は三月下旬、といった具合だ。なお、天御柱学院は高等部のカリキュラムを考慮してか、前後期の二学期制が採られている。
 入力が半分ほど終わったところで、追試の時間間近となった。
「そろそろですね」
 アルテッツァが追試用のテスト用紙を携え、席から立ち上がった。そのまま彼が試験監督を、レクイエムは試験監督補佐を行うことになっている。
「それでは、向かうとしますか」
 パソコンにロックを掛けた上でスリープモードにし、二人は職員室を出た。