なし

　
「みんな、遺跡から離れるんだ。早く！！」
　突然遺跡が激しくゆれだしたかと思うと、青白い光条につつまれてゆっくりと浮きあがっていきます。
　入り口付近にいた者たちは、あわててベースとしている大型飛空艇の位置まで逃げて行きました。
　間にあいそうになかったり、逃げ遅れている者は、パワードスーツや小型飛空艇に乗った者たちが急ぎ拾いあげて安全なところまで運んでいきます。
「いったい、何が起こっているの！？」
　呆然とする一同の前に、今まで遺跡だと思っていた巨大イコンが、ついにその全貌を現しました。
　その直径は、ゆうに一キロ近くはあるでしょうか。真球ではなく、やや縦に潰れた感じのその黒い球体は、今や青白い光条につつまれて淡く輝いています。その表面にははっきりと細かい呪紋が浮かびあがり、ゆっくりと回転を始めたことが見てとれました。またこびりついていた土や木々が、光条に弾かれるようにしてボトボトと地上に空いた大穴の中へと落ちていきます。
「みんな、もっと下がって！」
　避難した者たちが、さらに後ろに下がります。
「移動を始めたぞ」
　誰かが叫びました。
　大気を重低音で鳴動させ、巨大イコンがゆっくりと何かに引き寄せられるように移動を始めました。
「あれは、まさか、世界樹の方向か！」
　
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「このイコンを押さえ込んでいた騎士の意志は我が手につかんだ。もはや、あの制御用台座には再び接続はさせぬ。世界樹消滅は時間の問題だ」
　飛んできた矢を手に持った大剣で叩き落とすと、傭兵隊の隊長と偽っていたアラバスターが言いました。
「そんなことはさせないんだからあ」
　メイちゃんたちが、武器の姿に戻って、一斉にアラバスターに襲いかかりました。けれども、彼の周囲を回っている魔導球が、メイちゃんたちにぶつかって叩き落とします。
「いたあい……」
　武器の姿のまま、メイちゃんたちが床に転がり落ちました。すぐ傍には、アルディミアク・ミトゥナ（あるでぃみあく・みとぅな）が未だ囚われているシリンダーがあります。見た目は光条エネルギー吸収装置にも似ていますが、どうやらサテライトセルのメンテナンスカプセルの方に近い仕組みのようです。その傍には、うち捨てられるようにして、剣の花嫁らしきミイラが倒れていました。
「シェリルを返せ！」
　床から斜めに生えた柱状のエネルギーリセプターの上を飛び渡りながら、ココ・カンパーニュ（ここ・かんぱーにゅ）がアラバスターに殴りかかっていきましたが、素早く別の柱の上に逃げられてしまいました。
「勝手にするがいい。もともと、あの剣の花嫁をしなびたミイラの代わりに選んだのは、このイコンのプログラムそのもの……、いや、使命に忠実な意志と言った方がいいかな」
　素早く飛び回りつつ、ココ・カンパーニュの攻撃を剣で払いながらアラバスターが言いました。
「どういう意味だ？」
「死に絶え、残留思念だけの存在となったパイロットのミイラよりも、現在生きている剣の花嫁の肉体と意志の力を利用した方が、眠り姫の意志に対抗できると思ったのだろう。たまさか星拳を持つその娘が、黒蓮の香りで暗示にかかりやすかったのが幸いしたな。誘われるがままに、このイコンと同じ特性を持つ星拳を、封印すべき者として茨ドームが内部に呼び込んでしまったのだからな。もし、他の者だったら、こうはいかなかっただろう。おっと、お前たちも、同様にして茨を素通りしてしまったのだったな。胡散臭いイレギュラーだ」
「それを力ずくで幸運に変えてやるさ！」
　思いっきりドラゴンアーツの拳圧を放ちながらココ・カンパーニュが叫びました。
「戯れ言を」
　アラバスターが、大剣でそれを防ぎます。
「うっ」
　カプセルの横で、眠り姫が胸を押さえてよろめきました。大剣への攻撃が、彼女へもフィードバックされてしまっているようです。これでは、迂闊には攻撃できません。
「早く、コントロールカプセルの開放スイッチを……」
　眠り姫が、皆をうながしました。それを援護するかのように、コントロールルームにいた者たちが、大剣に注意しつつ、アラバスターに一斉攻撃をかけます。
「俺は、誰かのように詰めが甘くはないぞ」
　魔導球でかかってきた者たちを退けると、アラバスターが暗黒を放ってその場にいた全員をいったん怯ませました。間髪を入れず、アルディミアク・ミトゥナの入っているコントロールカプセルと、大剣の刺さっていた台座のそれぞれをめがけて、複数の魔導球を放ちます。赤熱した魔導球が、要である二つの装置めがけて襲いかかっていきました。
「誰か、あれを止めて！」
　眠り姫の悲痛な叫びが響き渡りました
　
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「なんだこの振動は……」
　イコン格納庫で待機していた傭兵隊の者たちは、あわてて床に身を伏せました。
　振動と共に、壁全体に激しいエネルギーの流れを示す光のラインが目映く明滅します。
　建物全体が激しくゆれましたが、しばらくして安定しました。壁の輝きも安定しましたが、光のラインは消えることなく輝き続けています。
「まったく、おちおちイコンの分解もしていられな……」
　壁から取り出したイコンを調べていた者たちが、作業を続けようとしました。
　そのときです。
　突然、不気味な起動音が一斉に格納庫に響き渡りました。
「誰か、イコンを動かしているのか？」
　振り返った者の後ろで、ズシンと、何かが重い一歩を踏み出しました。
「馬鹿な、さっきまで何ともなかったのに……」
　壁から、次々にガーディアンイコン・リーフェルハルニッシュが抜け出してきます。
「ま、まずいぞ、この状況は……」
　
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「迷子でーす。ここは誰？　私はどこ？　道が変化してて分かんなくなったよー」
　巨大イコン内部の魔道回路を彷徨っている者たちは、激変に翻弄されています。
「あー、ちっこいの来たよ。逃げよ、逃げよ、逃げよー！」
　
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「遺跡がイルミンにむかって動きだしたですって？　冗談じゃないわ、接近する前になんとしてもイコンで撃墜するのよ。こうなったら力押しでも退けてみせるわ！」
　詳細は分からずとも、敵が接近してくることを察知したイルミンスール魔法学校からは、待機していたイコンが次々と発進していきます。
　
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「やばいなー。こりゃ、欺された傭兵たちと小競り合いとかしている場合じゃないぞ。少なくとも、共闘しないと……」
「でも、どうするの？」
「なあに、手はある」
　裏で繋げていた情報回線を管理していた者たちは、全ての回線と情報をオープンにしました。
「あー、あー、傭兵に協力していた皆様。隊長が裏切りました。我々を利用して、シャンバラを滅ぼす兵器を復活させた模様です。ここは、いろいろしがらみもございましょうが、一致協力して巨大イコンを撃退いたしましょう」
　その場にいる全員に向けて、メッセージが送られます。
「ちょっと待て、どこのどいつだ、そんなこと言うのは。俺は暴れられればいーんだよー」
「そーよそーよ、おぜぜくれる人が正義よ！」
　やはり、そう簡単には納得しない人たちもいるようです。
「あー、それですが、隊長が裏切ったと言うことは、当然報酬は一切出ません。へたすると、森林火災の賠償金が課せられます」
「なんだってー！！」
　これは、赤字どころの話ではありません。
「ちなみに、イルミンスール防衛に活躍すれば、火災の件は不問にするという司法取引を取りつけました。もしかすると、お昼の仕出し弁当ぐらいは出るかもしれません」
「よっしゃー、隊長、ころーす！！」
　安い忠誠心でした……。
　
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「やっと始まったね。ずいぶんと面白いことになってきたじゃないか。僕たちもそろそろ出るとしよう。お楽しみはこれからだ」
　六枚の光翼を持ち、炎の意匠のナイトシールドを持った真紅のイコン、スイヴェンのコックピットの中で、ルビーが微笑みます。
　イルミンスールの森の梢がざわめき、近くにいた鳥たちが一斉に飛びたって逃げだしました。
　樹木が押し広げられ、ゆれる梢の中から、光学迷彩を解いた五機のカスタムイコンが姿を現します。
　見あげる巨大イコン・シトゥラリの各部からは、次々にリーフェルハルニッシュが出てくるところでした。
　

　
　はい、毎度おなじみクライマックスです。
　今回は、イコン戦はドシリアスのガチです。多分……。だといいなあ……。
　ドマイナーでなければたいていは対応できるはずです。まあ、直に版権引っ掛かる場合は、排除する場合もありますので、そのへんだけは気をつけてください。多分、商標登録に引っ掛からなければ大丈夫だとは思いますが。
　おそらく、平気でＰＣイコンぶっ壊しますので、破壊の美学に生きる人はどの程度まで破壊可と明記するといいかもしれません。壊れて美しいのはモヒカンだけ……にはならないとは思いますが。
　とはいえ、判定結果によってはアクションで壊れないと書いてあっても平気で跡形もなくなりますので、その場合はシナリオ解決後に同型機が補填されたということにしてください。基本、被弾しないとか壊れないというのは本来なら確定ロールですので、容赦なく被弾します。巨大生物の場合は、さすがに生き物なので、無茶はさせないでくださいね。
　
　イコン戦ですが、巨大イコンの近くは、エネルギー兵器、魔法、光条兵器は使えません。いえ、使えますが、全て巨大イコンをつつむ光条フィールドによって吸収されます。ただし、これは、誰かに教えてもらうか、実際に攻撃して気づくまで知らない情報ですので、気をつけてください。
　少し離れればこれら兵器も使えますので、要は戦い方次第です。くれぐれも、武装のつけ忘れには気をつけてください。また、乗り換えをする場合は、メインで使用する以外のイコンは、申し訳ありませんがリアクション発表まで武装は変更しないでください。こちらのデータは固定されませんので、武装を変更した場合、その武装を持っていないと判定して、アクションが没になる場合があります。また、売却した場合はそのイコン自体が登場させられませんので気をつけてください。ただし、これは、通常は使用できない予備のイコンのみですので、アクション投稿時に登録できるメインのイコンはデータが固定されるので、アクション投稿後に武装を変更しても問題ありません。
　なお、武装に関しては、イルミンスール魔法学校から補給が来たとし、以前のシナリオと違っていても構いません。
　
　イコンの乗り換えもこのシナリオに限り許可しますが、乗り換えの間お茶を飲んで待ってくれるような敵ではないかもしれませんから、ノリノリでやったりすると、乗り込もうとして開いたコックピットを狙撃なんて平気でやる奴らですので一応注意してください。なるべく安全な場所で乗り換えましょう。緊急時はそうも言ってられないでしょうけれど。
　また、ちゃんと段取りを用意していない場合は失敗することもあります。サブパイロットが運んできていないのに、パイロットのいないイコンが突然都合よく現れたりとかですね。
　まあ、指パッチンで「いこ〜ん」とかやってもいいんですが、一応サブパイロットもいないとまったく動きませんので、無人はなしです。いや、抜け道は山のようにありますが……。
　
　オプシディアンたちは、それぞれカスタムイコンに乗っています。特定の機体と戦いたい場合は、それぞれの機体に特徴がありますから気をつけてください。ネタバレはつまらないので、機体名と武装名だけあげておきます。
　ルビー、イーグリットをベースとした万能攻撃機スイヴェン。レイウイング。ファングシールド。高周波ブレード。
　アクアマリン、焔虎をベースとした面制圧機シパクトリ。クラスターレイン。ニードルランチャー。
　オプシディアン、シパーヒーをベースとした全方向攻撃機イツパパロトル。ビームバンカーソード。ミラーミスト。マント。
　ジェイド、アルジェナをベースとした格闘機アウカンヘル。ライトニングウイップ。オクトストライク。ショルダーアーマー。
　エメラルド、キラーラビットをベースとした遠距離射撃機アトラウア。アイシクルランス。タングランス。ジェルアーマーコーティング。
　アラバスター、玉霞をベースとした重装甲大火力砲撃機ミキストリ・ソピローテ。ショルダーレーザーキャノン、バインダーキャノン。バインダーソード。バインダービームソード。マイクロミサイルランチャー。ガトリングガン。ヘビーアーマー。他。
　ガーディアンイコン。こちらはいわゆる雑魚です。センチネル相当のイコンをベースにした白兵戦機リーフェンシュタール。ピルムムルス。ソード。マント。エネルギー吸収装甲。
　
　内部はアラバスターからけんちゃんを取り戻しつつ、アルディミアク・ミトゥナを助け、巨大イコンのコントロールを奪取すると言うことになりますが、状況的に芳しくありません。
　アラバスターは、必要性を認めなくなった場合、すぐに撤退します。このタイミングは重要です。意図的に早く追っ払うか、足止めするかでその後が変わってきます。撤退後は、イコン・ミキストリで外の戦いに加わります。
　
　巨大イコンは、自動的に世界樹にむかっています。これは、基本プログラムなので、手を打たない限り変更できません。ただし、遺跡のコントロール方法は不明です。手で動かす操縦装置らしい物はまったくありません。また、エネルギーをある程度吸収している時点で、コアで濃縮臨界状態となっています。すでに必要最低限は蓄積されつつあるようで、コアの結界が消滅すると一気に開放されて爆発します。
　これらは、巨大イコン内部の魔道回路によって維持されています。流れとしては、コアに流入、イコン格納庫に流出です。この流れでガーディアンイコンが起動しています。結構繊細な回路です。
　
　巨大イコン内にいる人たちは、巨大イコンの蓄積エネルギーを完全放出させた上で停止させない限り、脱出する必要があります。さもないと、一緒にちゅどんです。爆発はかなりの規模になりますので、仮に爆発させる場合でも、場所が重要になります。
　
　大まかなラインはお約束通りの展開の予定ですが、状況によって細かいところはかなり違ってきますので頑張ってください。同じ勝利でも、すっきりした勝利になるか、ほろ苦い勝利になるかはアクション次第です。
　細かい情報の補完はマスターページにもありますので忘れずチェックしておいてください。
　

・イコンで遺跡を押し返す

・雑魚イコンをできる限り倒す

・みんなを守る

・ボス狙い一直線

・巨大イコンからの脱出を助ける