なし

　蒼空学園のカフェテラスは、昼休みはもちろんのこと、休み時間や放課後も多くの生徒で賑わっています。
　学生の懐事情を考慮したリーズナブルで美味しく、且つオシャレなデザートセットが学生達を集めている理由の一つです。

「ん〜♪　このモンブラン美味しいぃ〜♪」
　その一角に蒼空学園の制服を着た守護天使マリエル・デカトリース（まりえる・でかとりーす）の姿がありました。今秋の新作モンブランを頬張りながら至福の笑みを浮かべています。
「あたし、もう死んでもいいぃ〜♪」
「今マリエルに死なれると、マナミンの『運命の人』探しが頓挫しちゃうからやめてよ」
　テーブルの対面に座るパートナーの小谷　愛美（こたに・まなみ）は、微苦笑しながら紅茶を飲んでいます。
「でもさぁ、マリエル……昨日も一昨日も同じこと言ってモンブラン食べたよね？」
「食べたよぉ。だぁってぇ、とぉっても美味しいんだもん〜♪」
「その……とても言い難いんだけど……ウエスト回り、ちょっと、ほんのちょびっと太ってない？」
「え゛え゛！？」　
　愛美に指摘されたマリエルは、恐る恐る蒼空学園の制服の上から腰辺りを摘まんで見ました。
　……確かにほんのちょびっとですが、以前より摘まめてしまっていました。
「美味しいのは分かるけどさ、食べた分運動した方がいいよ？」
　愛美はマリエルに付き合って放課後ティータイムを楽しんでいますが、彼女のようにスイーツは食べず、いつも紅茶だけで済ませています。
　愛美は『運命の人』をいつでも迎えられるよう、常日頃からスタイルに気を使っているようです。
「う゛う゛……後１個食べたらあたしも運動してくるよぉ〜」
「それでも食べるんだ……」

　友達たちとツァンダへ繰り出す愛美と別れたマリエルは、蒼空学園の掲示板へ向かいました。
　ここには蒼空学園を始め、他校の契約者（コントラクター）の力を必要としている依頼が張り出されています。
「手っ取り早く汗を掻くには……」
　マリエルが目を留めたのは、『蟻地獄（ジャイアント･アントライオン）へ落ちてしまった娘を助けた欲しい』というシャンバラ大荒野に近い村からの依頼でした。
　今日張り出されたばかりの依頼のようで、紙も真新しいです。何より、娘さんの安否が心配です。
「人一人が落ちちゃう蟻地獄ってどれくらいの大きさなんだろうぅ？」
　巨大なすり鉢状の穴と、２、３ｍはある大きな蟻地獄――想像するとゾッとします。
　それだけにマリエルは早くこの娘さんを助けたい気持ちになりました。
「よぉし、この依頼にしよ〜う」
　マリエルが依頼書を剥がすと、御神楽　環菜（みかぐら・かんな）が通りかかりました。
「その依頼は私も気になっていたわ。巣が移動するらしくて、村の人達も手を焼いているみたいなの。その少女の他にも何人かの捜索依頼や、大切な荷物を落としてしまったという依頼も来ていたのよ」
「巣が移動するんですかぁ？　んん〜、な〜んか引っ掛かるなぁ」
　環菜の言葉に、マリエルは小首を傾げます。
　不謹慎かもしれませんが、捜索依頼が出ている人たちは蟻地獄の餌になってしまった可能性があります。一方、荷物は巣に残っているかもしれません。
　それ以上に、巣が移動するというのが解せません。
　
　マリエルは携帯電話を取り出し、知り合いに電話やメールを始めました。
　秋は食べ物が美味しい季節です。マリエルと同じくちょっと食べ過ぎてしまった人は一緒に汗を掻きませんか？

　ツァンダ近くの村からの依頼で、移動するという巨大蟻地獄の巣に落ちてしまった村人達を救出し、荷物を取り戻してください。
　マリエルが最初に依頼を受けましたので、彼女より蒼空学園の生徒を中心に連絡が入ります。

　蟻地獄（ジャイアント･アントライオン）の全長は２〜３ｍあり、すり鉢状の穴はその倍近くの直径があります。
　村の近くは荒野になっており、しかも蟻地獄の巣は移動するようで、どこにあるか特定するのは難しいようです。
　一度見つけたら、逃げないように叩く必要がありそうです。

　巨大蟻地獄は遠距離攻撃こそ出来ませんが、一度巣に足を取られたら動きが著しく制限されます。
　また、防御力も高いようです。

　ロープといった命綱はマリエルの方で用意します。
　なお、守護天使やヴァルキリーの飛行能力は「走っている状態」ですので、長時間の飛行はかなりの疲労を伴います。
　また、機晶姫は形状に関係なく（自由設定で制限していない限り）短時間飛行可能ですが、連続して飛行できません。

　見事巨大蟻地獄を倒せましたら、巣の中を探索して依頼を達成してください。
　ただ、マリエルが引っ掛かっているように、巣が移動する意味を考えた方がいいかもしれません。

・敢えて巣の中に飛び込む

・遠距離攻撃で援護する

・大蟻地獄の巣を調べる