なし

　――蒼空学園、水没――


　事件が起きたのは今朝のことでした。

「……なに？　これ」

　加能　シズル（かのう・しずる）の前には、巨大な水の塊が広がっていました。
　それは立体的に蒼空学園を包み込み、夏の日差しを受けてキラキラと綺麗に光を放っていました。

「シズルさーん」

　教師から情報を得てきたレティーシア・クロカス（れてぃーしあ・くろかす）が言います。

「遺跡で発見された古代装置の作動実験に失敗して、学園が特殊な水の塊に覆われたという話でしたわ。つまり、今、蒼空学園は、そこに在りながら水没しているのですわ」
「学園の中に居た人は無事なの？」
「この水は、とても特別なもののようで、水中でも呼吸が出来るそうですの。更に、全ての機器や文献類などへの影響もないのが確認されたと。もっとも水の抵抗で多少動きが鈍るのですけど」
「ひとまず、緊急を要する状況ではないということね……」
「ええ。それで――」

「ほらほら、やっぱり聞いた通りじゃん！　よーしゃっ、泳ぐぞー！」
「焼きトウモロコシー、焼きトウモロコシはいらんかねー？」
「なあなあ、水中ライブがあるって話らしいぜ！」
「今日の部活は……あんの？　いつも通り？　マジで？　こういう時くらい休みにすりゃいいのに……」

　そんな周囲の声が聞こえてくる中、レティーシアが続けます。

「噂を聞きつけた他校の生徒も学園内遊泳をしに来たり、商売気のある生徒が売店を出したり、せっかくだからと水中ライブを行おうという生徒が居たり、部活や補習は水中でつつがなく行われたりするみたいですわ」
「……順応が早すぎるわよ……。で、この状況は放置なのかしら？」
「そこで装置停止隊の募集があるとのことです」
「装置停止隊？」
「装置が発動して、すぐに、同じ棟で生体観察用に飼われていた数体の魚類型モンスターが逃げ出してしまったそうですわ。そのため、装置のある部屋へ容易に近づけなくなってしまいましたの。モンスターの居る棟はしっかりと封鎖されたので、他の場所は、まるきり安全なのですが。ともあれ、夕暮れ前には、装置の停止隊が突入して装置を停止させる予定だという話ですわ」
「なるほど。つまり、この状況も今日一日限り、ということね」

　ふ、と小さく息をついて、シズルは、
　なんだかんだで状況を楽しみ始めているらしい生徒たちを見やったのでした。

７作目のシナリオ、県田静です。どうぞ水中学園な一日をお楽しみください。

蒼空学園の状況

全てが水に沈んでいる以外は、ほとんどいつもと変わりありません。
この水中では、呼吸と会話に加えて食事なども可能です。
また、この水は特殊なもので、機械類や紙類などに影響を及ぼさないようです。
ギターなどを弾いて音を鳴らすことも出来ます。

そういった状況を利用して、水中遊泳を楽しむ者、売店を出す者、パフォーマンスを行う者が現れています。
またいつも通りに部活や補習を行おうとする者もいます。


装置停止隊

装置がある棟は、モンスターが発生しているために封鎖されています。
停止隊はモンスターを退けながら、停止装置のある部屋に向かいます。
ただし生け捕りにしてあげれば、飼育担当者の人が喜ぶでしょう。

モンスターは魚型、軟体動物型、甲殻類型などがおり、水中での戦闘になります。
普段よりも動作は鈍くなりますが、飛行能力や装備などが無くても、泳いで上空（実際には水中ですが）に移動が可能です。
また特殊な水であるため、銃や雷系の魔法などを通常通りに使うことが出来ます。

装置の停止に成功すると学園を覆っている水は緩やかに減って、消え去ります。

シズルとレティーシアは、装置停止隊に参加する予定で日中は適当に過ごしています。

・学園遊泳ー！

・バイト三昧ーー！

・部活だよ

・装置停止隊に参加