「長かった夏合宿も、そろそろ終わりかあ」
沈みゆく夕日を見ながら、海パン姿の学生が、しみじみといいました。
「そこ、何をしている。集合時間はとっくに過ぎているぞ!」
「は、はい!」
のんびりしているところをガイドさんたちに見つかって、学生たちはあわてて砂浜に集合していきました。
「今回も、もう終わりだねえ」
「ほんっと、川下りから始まったときは、どうなるかと思ったけど」
「まあ、謎の海底遺跡も探検できて、お宝みたいな物も見学できたしい」
「いやいや、凶悪な海の主を退治したことを忘れてはいけないであります」
「それより、空から降りし者ってなんだったの?」
「今ごろは海の藻屑じゃないの?」
「いずれにしたって、もう終わり……」
学生たちがざわざわと私語に興じていると、案の定、引率のジェイス・銀霞の雷が落ちました。
「まだ終わらんよ。最終日、お楽しみの肝試し大会が残っているぞ。これから、二人一組で、海岸の洞窟の奥に、名前を書いた貝殻をおいてきてもらう。いろいろと趣向を凝らしている者もいるようだから、じっくりと楽しんでこい」
というわけで、夏合宿最後の夜、海岸の洞窟目指して肝試しに行くことになりました。
「よっしゃあ、あの子と二人きり。これは千載一遇のチャンスだ」
「いや、まだペアになれるって決まったわけじゃないでしょ。だいたい、相手にも拒否権っていうものがあるでしょうに」
血気に逸る男子に、おいおいとパートナーが突っ込みを入れます。
「ははははは……、世の中のバカップルは、この私が殲滅してくれる。真の恐怖というものを味合わせてやろう」
何やら、野望だか復讐だか妄想に燃えるシングルさんもいるようです。
「おばおばお化けなんて、こ、怖くなんてないんだからね。だから、一緒に行こ。行くよね。行かないなんて言わさないんだから」
何やら、脅迫紛いにパートナーを引きずり込んでいる者もいるようです。
さてさて、いったい、何が起こるのでしょうか。