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　２月２２日は猫の日、ということで、空京でも、それにちなんだ催しが幾つか開かれるようです。

　その一つが、海京で人気の猫カフェ『キトゥン・ベル』が開く期間限定の大型店舗。まだまだパラミタでは少ない「猫カフェ」を気軽に、身近に楽しんでもらおうという企画のもと、海京の店をしばらく休んで店員・“猫店員”総出で空京に出張し、臨時店舗を開店するそうです。




　その「期間限定『キトゥン・ベル』空京支店」の開店前日。



『に゛い゛ぃや゛あ゛あああああぁぐお゛おおぉぉうぉぉぉ〜〜〜ぉ゛』



　催事会場に建てられた、期間限定ものとはいえ結構きれいで広い店舗の中から、何とも名状しがたい、猫の鳴き声のような唸り声のようなものが、地を這うように響いてきました。



　たまたま近くを通りかかった幾人かの契約者は、その声を聞いたのです。
　――？　何の声……？
　それを考える暇もなく、何故か、ゆっくりと気が遠くなっていき……



「――っ！！！？」


　なんと、謎の声を聞いた契約者たちは、気が付くと猫の姿になって、いつの間にか見知らぬ部屋の中にいたのです！！
「にゃ、にゃ、にゃあっ！？（これはいったいどういうことだ！？）」
　慌てて叫んでも、口から出るのは正真正銘、猫の鳴き声ばかり。
　どうやら、猫の姿になった契約者たちは、人の言葉も、身に着けたはずのスキルも何も、使えなくなっているようです。
　驚きが醒めないまま、しかし途方に暮れて、辺りを見回すと、中は綺麗な内装の広々とした部屋で、クッションや小さなジャングルジムっぽい遊具、鈴や玩具つきの猫じゃらしなど、猫が遊ぶためのものがいろいろ揃っています。
「ここは『キトゥン・ベル』の中だよ」
　一匹の茶色の猫が、物知り顔で、どこか憐れむように、契約者が姿を変えた猫たちをじっと見つめています。
「可哀想に、厄介なことに巻き込まれてしまったみたいだね、君たちも」
「一体何が起きてるんだ！？　どうしたら元に戻れるんだ！？」

「残念だけど、僕にも君たち自身にも、この呪詛を打ち破ることはできない。

　この術のポイントは、『見破れば無効化、教えれば一生破れない』だよ。

　つまり、君たちの正体を誰かが見破れば、その人は猫の姿から解放される。

　君たちは契約者だろう？　契約のパートナーとの絆は特別だって聞いたことがある。その人がここに来たら、君たちのことが分かるかもね。

　――でも、『見破る』んじゃなく『他の誰かが教えてそうと知る』んじゃあ、ダメ。それじゃ元に戻れなくなるよ』


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　一方、『キトゥン・ベル』のバックヤードは、準備に大わらわでした。
　何故か、明日開店だというのに、食材がほとんど使えない状態になっているのです。急遽、業者に依頼して大急ぎで追加の食材を搬入してはもらいましたが……。
　業者の人々は、呆気に取られる光景を目にします。――厨房は調理に失敗してもはや食べ物と思えぬシロモノで溢れているし、制服を着た店員たちは、皿やコップを乗せた盆を持って歩く練習をしていますが、至る所でそれをひっくり返して途方に暮れています。
「む、難しいですにゃあ〜……」
「…がないと、バランスが取れないですにゃあ、シルクさん……」
　猫カフェの店員だから、語尾を「にゃあ」に統一しているのでしょうか（何故か、いい年の男性の店員までその言葉遣いなのは些か気持ち悪いですが）……
「むぅ……情けないのう。…を出さないと二足歩行もできないとは……」
　業者の出しだす納入書にサインしていたこの店のオーナー・シルクは、よたよたと盆を持って覚束なく歩く店員たちを渋い表情で見ています。
「開店は明日だというのに……今宵は特訓じゃのう。まぁ最悪の場合は、外部から幾人か雇うか……」
　サインした書類を返し、店員たちの方へ向かって歩き出した、プロポーション抜群の美女オーナーの後ろ姿に見とれながら、業者の連中は「毎度どうもー」と言って出ていきましたが、出しなにそのうちの一人、昨日も納品にきた者が不思議そうに呟きました。
「あんな美人がオーナーだったのか。俺ぁてっきり、昨日会ったダミ声のオッサンがオーナーなのかと思ってたんだが」


　この数時間後、『キトゥン・ベル』は「急募・ホール・キッチン補助　若干名」の貼り紙を出すことに。

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「待てよ！　契約者はパートナーに助けてもらえるかもしらんが、俺らぁどうなるんだ！」
　可愛い姿に似ぬ胴間声のぶち猫が、先程から助言をくれるリネンという名の茶色の猫に食ってかかります。
　どうやら、契約者以外にも人間から猫になった者が、何人（匹）かいるようです。
　リネンは彼らをじろりと見て、静かに言いました。
「君らはまぁ、契約者と同じやり方じゃ無理だろうね」
　意気消沈する彼らを見やり、誰にも聞こえないくらいの声でぼそりと呟きます。
「……“元凶”が気を変えるのを、待つしかないだろうね。どのみち、僕じゃどうにもできないさ」


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　そんなこんなで、「期間限定『キトゥン・ベル』空京支店」は開店日を迎えました。

「猫カフェだって〜。猫ちゃんを思いっきりもふもふしたい♪」
「ふ〜ん、軽食も取れるんだ。『お茶を飲みながら可愛い猫ちゃんをガラス越しに存分に眺めるもよし』ねぇ」
　そんなことを言いながら期待して店に向かう客に混じって、

「おかしいなぁ、うちのパートナー、何で帰ってこないんだ？
　……ゆうべ、この辺りに行くって、言ってたと思ったんだが……」

　怪訝そうに呟きながら、うろうろと歩き回る契約者たちも何人かいました。

　ちょっとだけご無沙汰しておりました、ＹＡＭです。こんにちは。
　９作目のシナリオは、猫宮烈マスターご提唱の『猫の日』企画に乗っからせていただきました。
　よろしくお願いいたします。


【猫カフェ『キトゥン・ベル』】
　空京の市街地の一角に仮店舗を作り、そこで営業しています。
　仮店舗とはいえ店はかなり広いです。
　猫のいるスペースには、猫じゃらしやネズミのぬいぐるみから、猫が上れるジャングルジム、寝床ボックスなどいろいろあり、そこに入ってお気に入りの猫と戯れることができます。
　店員に言えば、猫のおやつ（猫用クッキー）を貰うこともできるようです（初回無料）。
　店内には飲食スペースもあります。メニューはごく一般的な軽食、スイーツ、ドリンクといったところです。
　衛生上、猫のいるスペースとは完全に隔てられていますが、猫部屋との間は大きなガラスの壁になっているので、それ越しに飲食中でも猫を鑑賞することはできます。
　飲食スペースで頼んだものを、猫部屋に持ち込むことは禁止されています。もちろん、飲食スペースに猫を入れてはいけません。

　従業員は何故か揃いも揃って、接客も調理も不慣れな様子で、当日は「手伝い募集」が掲げられています。
　不器用な店員たちは皆語尾に「にゃあ」を付けて喋るという、変なところだけは徹底しています。
　オーナーの「シルク」は、喋り方は老人っぽいですが、若い、グラマラスな女性で、開店中は基本的にバックヤードの一室にいるようです。
　滅多なことがない限り表に出てこないようです。彼女と接触を図るなら、一番手っ取り早い方法は店の手伝いとして雇われることでしょう。
　店員たちとは、客として来店すれば普通に接触できます。


【猫にされた契約者たちが元に戻る方法】
　謎の訳知り猫「リネン」の言葉通り、猫にされた契約者を前に、そのパートナーが「自分のパートナーだ」と気付けば、謎の呪術が解けて元に戻れます。
　但し、リネンの言葉「『見破る』んじゃなく『他の誰かが教えてそうと知る』んじゃあ、ダメ」の通り、先に人間に戻った契約者が他の猫の正体を別の人間（その猫のパートナー含む）に教えたりすると、その猫は（この方法では）元に戻れなくなってしまいます。あくまで、パートナーが見破らなくてはいけません。
　注意していただきたいのは、猫になった契約者は、スキルはおろか人間の言葉も使えません。全く普通の猫と同じになっています。言葉で訴えかけることもできず、テレパシーも通じません。どのようにパートナーに訴えかけ、そのサインをどのようにパートナーが読み取るか、スキルや人語に頼らずに工夫してみてください。
　ちなみに、猫同士は不都合なく会話できます。


　猫にされるのは、地球人でも、パラミタのどの種族でも結構です。
　パートナーを登場させない、もしくはパートナーと一緒に猫になってしまった、というアクションも可ですが、その場合は元に戻るためにはこの「見破ってもらう」以外の手段を模索する必要があります。猫のまま呑気にごろごろしていたい、というのもアリですが（笑）。


　ガイドにもあるように、猫の中には、契約者以外に猫にされてしまった人間がいるようです。
　彼らに聞き込みをしてこの事態の打開を図る手ももちろんありますが、彼らがすべてを把握しているとは限りません。
　謎の猫リネンは、契約者に対しては決して非協力的ではなく、事態に関しても何か知っているようですが、仔細はあまり語りたがらない様子です。



※※アクション判定について※※
　「客として猫カフェに入り、パートナーを探す」「店員として店に入り、内部を調査する」等、『店に入る手段』とは別に『店に入る目的』があるアクションは、ダブルアクションにはあたりません。ですが、「単純に客として猫との戯れを楽しむ」「他意はなく店を手伝いに行く」というアクションの方よりは、当然ながら「客」「店員」としてのアクション描写が浅くなります。ご了承ください。

・「うちのパートナーどこ行った？」『ニャー（気付いて）！』

・客として猫カフェを楽しむ

・従業員として店の手伝い