なし

「兵士諸君、いよいよ我々が全種族に対して反旗を翻すときがきた」
　地平線から日の出が昇る少し前、暗闇の中で重く渋い声が聞こえます。
　姿は暗闇に紛れて見えないが、その声を黙って聞いている人数は百にも達しようかという大軍団でした。
「我々という種に『悪』がほとんどいないと考えている馬鹿者どもは今も世間の大半を占めている。故に奴らは我らと対峙する時に隙が生じる。そこを突いて、我々は空京を占拠し世界征服の第一歩を踏みしめるのだ！」
「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお！」」
　兵士達はその言葉に腹の底から声を出し、応えてみせます。
　その中で一人の兵士が演説をしていた隊長に声を投げかけました。
「隊長殿！　一つ、懸念がございます」
「なんだ？」
「空京に奇襲をかけたとしても、これだけの軍隊が動けば迎撃されるのではないでしょうか？」
「ふふふ、そんなことを心配していたのか……。無用な心配だ！　我々には自慢の肉体がある。我々にはどんな剣の一振りも銃弾の一発も届かない！」
　隊長の声は自信に満ち溢れていました。
「隊長、なぜそんなことが言い切れるのですか？」
「これだけ言ってもまだ理解出来ぬか……ならば教えてやろう……それは……」
　隊長の自信に答えるように隊長に、兵士達に地平線から昇った日の光が当たります。
「我々が──可愛い、ゆる族だからだ！」
　一頭身のひよこ隊長は、自分を大きく見せるように太陽に背を向けると、羽毛を膨らませて高々と叫びました。
　その言葉を聞いている兵士たちもやはり一頭身から二頭身ばかりのゆる族であったが、隊長の言葉に感銘を受けたのか、おおお、と納得しているようです。
「他種族は小さくてふわふわしている生き物に弱い傾向がある。その弱点を突き、我々は世界征服の悲願を達成し、可愛いは正義であることを世に知らしめるのだ！」
「おおおおお！　可愛いは正義！」
「可愛いは正義！」
「可愛いは正義！」
　兵士たちは小さい身体を弾ませて言葉を繰り返し、己と仲間を鼓舞しました。
　
　
　彼らが向かおうとしているのは、空京スタジアムでした。
　現在、空京スタジアムでは、ニルヴァーナの物産と観光のアピールのため、
　ニルヴァーナ・フェアが行われています。
　
　悪いゆる族たちの狙いは、フェアのイベントに参加している
　空京　たいむちゃん（くうきょう・たいむちゃん）（ラクシュミ）でした。
　元々、「ゆる族」として空京万博などのマスコットを務めた、たいむちゃんに、
　『うさぎの着ぐるみ』を被せてエターナル接着剤で脱げないようにし、
　仲間に引き込むことで、自分たちの組織にカリスマを得るつもりなのです。
　
　更に、彼らは、ニルヴァーナ・フェアに展示されている
　『ゆる族専用スーパー鳥人型ギフト』の略奪も狙っていました。

　
　隊長が、もっふもふの拳を天にかざして見せます。
「行くぞ！　我が同胞達よ！　正義は我らにあり！」
「「おおおおおおおおおおおおお！」」
　兵士達もそれぞれ武器を掲げ、隊長を先頭にして小さい足を動かしながら空京スタジアムへと向かったのでした。

　初めましての方は初めまして。
　そうでない方はお久しぶりです。
　ゲームマスターの西里田篤史です。
　今回のシナリオの目的は世界征服を目論む悪いゆる族の撃退です。
　舞台は空京ですが、どの学校の生徒も気軽に参加してください。

　どうぞよろしくお願いします。


■悪いゆる族
　一頭身から二頭身までで更正された戦闘集団です。
　数こそ百匹と多いですが、戦闘能力は対したことはありません。ですが、全員が小さい背丈にふわふわの体毛、つぶらな瞳を搭載しており、何人かのＰＣにとっては戦いにくい相手となるかも知れません。
　兵士達は隊長の無茶苦茶な言い分を鵜呑みにしてしまうほど純粋なので説得も可能です。

　隊長は元公務員です。

■空京たいむちゃん
　ニルヴァーナ人の女の子ですが、
　以前は、うさぎの着ぐるみを着て「ゆる族」として暮らしていました。
　一昨年、空京で行われた大イベント「空京万博」のマスコットをしていたり、
　現在は、ニルヴァーナ創世学園の校長先生だったります。

■ゆる族専用スーパー鳥人型ギフト
　ニルヴァーナ創世学園に居座っている鳥人型のギフトです。
　性格はウザめですが、色々あって、ゆる族専用の超強力な兵器となっています。

＜鳥人型ギフトの軌跡＞
・特別な光条兵器「ブライドオブヴァラーウォンド（杖）」を尻にぶっ刺され、
　その衝撃で『大きなタマゴ』になる。
・そのタマゴがドージェにバットでブッ飛ばされる。
・その後、色々あって、ゆる族専用のスーパー鳥人型ギフトとなる。

・　リーダーと直接戦闘。

・　ゆる族と戯れるＭＣが見たい。

・　情け容赦なく全力で戦う。

・　ゆる族と交渉する。