「この場所に機動要塞を据えてから幾星霜。戦闘らしい戦闘もなく。司令室で緑茶を啜る日々……」
「そうは言いますが、司令官閣下、本来の機動要塞は拠点ですので、長距離移動は想定されておりません。要塞が移動したら、最終決戦以外のなにものでもありませんので」
「だが、副官よ。こちらから仕掛けないのであれば、せめて攻め込んでくるぐらいの気概のある敵はいないのかね」
「遮蔽は完璧ですので、この場所は誰にも知られていないかと」
「ううむ、痛し痒しじゃのう。一度、この主砲をぶっ放してみたいものなのだが」
「各地をふらついている機動要塞もあるにはあると聞きおよびますが。なんでも、その一部はニルヴァーナまで行ったとか行かなかったとか」
「よし、そいつらを襲うというのはどうだ?」
「だから、超低速でしか動けないんですから、機動要塞同士が会敵して戦闘するというのは、ほとんど無理なんですったらあ」
「ほら、要塞に要塞をぶつけるというのは、意外とよくあるパターン……」
「共倒れしたいんですか?」
「いやだ、まだ死にたくはない」
「そういうふうにチキンだから……。んっ?」
ピッ、ピッ。
「なんだ、携帯に借金取りからメールかね。それなら留守だと……」
「何かの広告のようですね。スパムメールでしょうか。何々……、機動要塞大決戦、最強機動要塞決定トーナメント開催……」
「なんだと、それは……」
「ええっと、空京でのシミュレーションバトルで、要塞戦をやるようですね。さすがに、本気の戦闘はいろいろと問題ありと言うことでしょうか。だいたい、空京に機動要塞が10も20も集まったら、御近所迷惑ですから」
「よし、決めた、参加だ!」
「ええっと、参加者は、要塞のデータを持ち寄ってくださいと言うことのようですね。それを元に、バーチャル空間で機動要塞やイコンを構築して、その空間内で各指令官やパイロットがリアルそっくりにシミュレータで操作できるようになるらしいです。当日は、レンタル要塞もあるとか」
「とにかく、空京へむかうぞ!」