なし

　白昼夢でも見そうな夏の日。
　霧深いタシガンですら、今年は残暑が厳しい様子です。
　空調のきいた室内ならばともかく、外はじっとりと汗ばむような陽気が続いていました。
「ふわぁ……」
　レモ・タシガン（れも・たしがん）は思わず欠伸をもらしました。
「寝不足か？」
　カールハインツ・ベッケンバウワー（かーるはいんつ・べっけんばうわー）が尋ねると、うんと小さく頷き。
「ここのとこ、寝苦しいでしょ。だからなんとなく寝不足気味で。……花魄さんに会う前に、しゃんとしないとね」
　ぺちんとレモは自分の両手で頬を叩きました。今日は、タシガンをタングートの料理人　花魄（たんぐーとのりょうりにん・かはく）に案内する予定でした。ちょうど、そろそろ、待ち合わせ場所に迎えに行く時間です。
「カルマは？」
「それが、カルマもこのところ寝不足でさ……おかげで珍しく機嫌が悪いんだよ、ここのところ」
　レモが眉根をよせ、ため息をつきました。
　カルマ・タシガン（かるま・たしがん）は、基本的にいつも眠いタイプで昼寝も大好きなのですが、この暑さではそれを楽しんでもいられません。
「ちょっと熱っぽいみたいな感じもしたから、今保健室に行ってるんだけど……」
「そうか」
　そりゃ心配だな、とカールハインツも顔をしかめた時でした。
　
　ぐにゃ、と。
　
　一瞬、視界が歪んだことに、二人はすぐに気づきました。

「……今の、なに？」
「わからねぇ。けど、また妙なことになってるんじゃないか？」
「妙なことって？」
「わからないから、妙なんだろ」
　カールハインツの返答に、「まぁ、そっか」とこれまた妙に納得しつつ、レモはカールハインツと連れ立って部屋を出ました。
「…え？」
　廊下を歩いていて、異変はすぐにわかりました。
　間取りが、おかしいのです。
　おまけに窓の外には、いつもの薔薇だけではなく、桜やら水仙が、いっぱいに咲き誇っています。
「な、なにこれ？？」
「ヤバい雰囲気はしねぇが、注意するにこしたこともねぇな」
　ちっとカールハインツが舌打ちした途端、むこうから、「やー、ごめんごめん！」とやって来たのは、白衣の{b}アステラ・ヴァンシ{/b}でした。
「アステラさん？」
「やー。たまたま保健室にいたら、カルマくんが来たからさぁ。ちょっと栄養剤ってお薬飲ませたら、こんなことになっちゃって。すごいねぇ、カルマくんの能力って」
「ちょ……カルマになにを！？」

　アステラが言うには、【隣で寝てるあの子の夢に入って遊べちゃうお薬】だったそうなのですが（それもどうか）、それがカルマの能力のせいで、今やタシガン全域を巻き込む勢いに拡大しているというのです。
　つまり彼らは、タシガンでありながら、タシガンではない空間――カルマの夢の中に、閉じ込められてしまったわけです。
「じゃあこれが、カルマの見てる夢？」
「んー、それだけとも言えなくてねぇ。夢っていうのは、根本では繋がってるという説もあって。そのせいか、みんなの夢が混じっちゃってるような感じで」
　すごいよねー、とアステラはあっけらかんと笑っていますが、笑ってる場合ではありません。
「どうしたら元に戻るんだ。おい」
　鋭い目つきでカールハインツが詰問すると、アステラはあっさりと。
「カルマくんが目を覚ましたら、普通に戻るよ。だからそれまでは、楽しんで過ごせばいいんじゃないかなー」
「カルマがいつ目が覚めるかなんて、わかったもんじゃないよ。ああもう……」
　頭を抱えながら、レモはひとまず、頭を整理することにしました。
「アステラさんは、ルドルフ校長に事情を伝えて。それで、出来るだけ事情が広まるように手配してね。僕は、カールハインツと、カルマを起こしにいくよ。保健室だよね？」
「そうだけど……でも、保健室って今はどうなってるかな」
　アステラが言うとおりでした。
　再び、廊下は今度は、どことも知れぬ森のなかに変化していました。
「……どうしよう」
「レモ、落ち着け。とにかくさがすっきゃ、ねぇだろ」
「そう、だよね」
　カールハインツの言葉に深呼吸をして、レモはとりあえず、カルマの気配を頼りに歩き出したのでした。

　今回は、【夢の中】ということで、最自由な感じです。
　ＭＣやＬＣは、現在の状況については把握済みということでＯＫです。
　一応の目的としては、カルマを見つけて起こすことですが、それだけに限らず、自由にやりたいことをやっていただければいいなぁと思います。

　登場ＮＰＣは、公式ＮＰＣと、私のＮＰＣ（マスターページをご参照ください）が可能です。
　ですが、夢の中のことですので、タシガンに通常存在しないＮＰＣは【夢の中の人物】でしかありません。そこで起こった言動は、現実とは一切関係なく、また、相手に変化を起こすこともありません。
　薔薇学関連ＮＰＣと、私のＮＰＣに関しては、アクション内で【夢】相手パターンと【本人】相手パターンのどちらでも設定可です。

　また、夢の中のことなので、ＭＣ、ＬＣ共に姿（性別含む）を変化させることも可能です。
　なお、【夢】相手パターンを、ＮＰＣではなく、ＭＣの○○さんと、という場合は、必ずＧＡでお願いします。
（例：自分は○○さんに告白したが、それはあくまで夢の中の○○さんであって、本人ではない。そのため、夢が終われば、消えてしまう告白だった）




以下は、ご注意とお願いです。

・ほのぼのシナリオですので、政治や戦闘関係のアクションをいただいても、不満足な結果になるかと思われます。
・ダブルアクションはご遠慮ください。必ずひとつの行動で、アプローチをお願いします。
・このシナリオでは、同性愛描写がある場合があります。ご了承ください。

・カルマを探す

・自由に遊ぶ