蒼空学園

　蒼空学園と空京大学の間で起こっていた、御神楽　環菜（みかぐら・かんな）亡き後の蒼空学園の運営権問題。
　両校の校長、山葉　涼司（やまは・りょうじ）とアクリト・シーカー（あくりと・しーかー）がそれについて大学で数日前に会談を行った結果、
「最初はアクリトに学園の補佐をしてもらい、その後学園生だけで運営が出来ると示せれば自立を認める」
　という結論で合意に至りました。

　とりあえず大学側との問題が一段落し、蒼空学園に戻った涼司。
　学園内で起きていた女生徒失踪事件も、被害者をさらっていた者がアンデッドだと判明し、
　あとはアンデッドを操っていた者の発見を果たせば、学園の当面の問題は解決だ。涼司はそう思っていました。
　そんな中、不意に彼は五月葉　終夏（さつきば・おりが）から告白を受け、驚きのあまり頭が真っ白になってしまいます。
　混乱しかけた頭をどうにか戻し、雑念を振り払うかのように涼司は事件の調査に没頭しました。
「被害者は流行に敏感な女性でタガザ・ネヴェスタというモデルのファン。そしてタガザの周りのモデルも失踪している……確かに、このタガザってモデルは怪しいな」
　これまで学生たちが調べてくれたデータを整理した涼司は、同じように集められたタガザに関する噂や推測にも目を通します。
「『ベル』って店によく出没するって噂と、店の地下に被害者が運ばれたって話……あとは、皆の予測の中で何か決定打があれば」
　そう、既にさらわれた生徒の所在地を涼司は生徒たちから伝えられていたのです。そこに生徒が向かっていることも。
　ただその他の予想――彼女が吸血鬼か魔女ではないかということや、失踪者の若さを吸い取っているのではないかということなどについては、どれも確証がありません。

　がしかし、そこに以前幽霊船でアンデッドを使う魔女を見たという小谷　愛美（こたに・まなみ）とその周りの生徒たちから新しい情報がもたらされたことで、彼らはひとつの仮定を出しました。
　愛美が見た魔女とタガザが、瓜二つだったこと。
　失踪事件にはアンデッドが絡んでいて、魔女が使うしもべもアンデッドであったこと。
「タガザが、その魔女なのでは？」
　涼司だけでなく、事件を調べていた多くの者がそう感じました。そこで涼司が思い浮かべたのは、大学のことです。
「そういや、タガザが大学で講演会をやるらしいな……。もしタガザがその魔女なら、何を狙ってる？」
　念のため涼司がアクリトに電話を入れると、彼は訝しがりながらも危険性の排除に乗り出しました。
「仮にその予想通りだとして、契約者が大勢いる講演会場で何かが出来るとは到底思えないが……まあ、念のため警備員の配置と、接触が出来ないようステージと席との間に仕切りを設けておこう」
　通話を終えた彼には、もうひとつ気がかりがありました。コミュニティサイト「cnps-town」（通称センピースタウン）です。
「失踪者はアレをよく使ってたらしいしな。それに俺らが争うって噂も流れてたみたいだし……」
　何か事件と関係があるのではないか。そう思った涼司が校長室のパソコンからタウンにログインしたその時でした。
　けたたましい警戒音と共に、画面が赤く点滅し出したのです。
「っ！？」
　慌ててログアウトする涼司でしたが、彼がそこで見た画面は背筋を凍らせるに充分なものでした。
　タウン内の蒼空学園から、購買や各施設のデータが次々と流出しているのです。このままでは勝手に学内の備品や商品が取られていくだけでなく、学内の情報も漏洩してしまいます。
「ウイルスか！？　誰がこんなこと……！！」
　直後、たとえるならば地震と共に火事が起こるように、次々と災いが蒼空学園を襲います。
　そしてそれは奇しくも、涼司の負担を減らすためつくられた新生徒会の会長など役職を決める選挙の投票日当日のことでした。
「み、みんな大変だ！　学園に向かって、アンデッドの大群が押し寄せてる！！」
　学外にいた生徒たちが血相を変えながら、そう叫んだのです。その襲撃者の数は、優に500を超えています。
　まるで様々なことが重なる日を狙ったような、先日のアンデッドは小手調べだとでも言うような、そんなタイミングと数でした。
　報告を受けた涼司は、血が滲むほど歯ぎしりをし、生徒たちに告げました。
「頼む、どうか、どうにか皆で学園を守ってくれ！　俺は……俺も、蒼空学園を守る！　俺が使える力で！！」
　プログラミング能力を持つ涼司は一刻も早くバグを直すため、タウンの暗号パスワードを見つけだそうとしています。

　一方、タガザが魔女だとほぼ確信を得た愛美は、その彼女が大学に来ると知り、
　衰えきった肌を取り戻すべく大学へと向かっていました。もちろん、他の生徒たちからの情報も聞いた上で、です。
「人を一瞬で石化させるなんて強い術を使える上に、若さを吸い取ることも出来るなんて、そんなこと出来るのかな……？」
　愛美は、これまで何度か魔女という種族と関わってきたからか、その特性に気づいていました。
　それは、「いくら魔女でも、何でも出来る超人的存在ではない」ということです。
「もしそれに近いことが出来るとしても、もっと何か制約があったりしないかな。それかそもそも、吸い取るとは違った方法とか」
　もちろん愛美がいくら考えても、答えは出ませんでした。彼女はその答えを求めるため、大学へ赴くのです。
　そしてその大学の学長室では、涼司からの電話を切ったアクリトがたった一言、短く呟くのでした。
「……パルメーラ、私は……」
　それは確かに、ここ最近姿を見せていない彼のパートナー、パルメーラ・アガスティア（ぱるめーら・あがすてぃあ）の名でした。

　そして、渦中のタガザはというと。
　自身に付着する数々の推測や噂を意に介した様子もなく、空京大学の一室で講演会の時間を待っていました。
　そのしなやかな指で側頭部を包むと、ステージで歌を披露するつもりのなのか、小声でメロディに乗せて歌詞を口ずさんでいます。
「あなたの一番が欲しい　欲しい　
　欲しがるだけじゃ叶わないなら　私もあなたに与えるから
　この細胞は　あぁ　私以外を求めてる」

マスターの萩栄一です。
空京大学（及び蒼空学園）のキャンペーン「それを弱さと名付けた」の第３回目、最終回となります。
舞台は空京大学や蒼空学園がメインですが、
学校の制限はありませんので、所属学校関係なくどこに所属している方でも遠慮なくご参加ください。
過去に出たシナリオについてガイドで多少触れてはいますが、参加していない方、内容を知らない方でも全く問題ありません。
該当シナリオ参加、という点だけで判定が特に有利に働くということもありません。

アクション投稿の際の注意点ですが、
時系列的にこの出来事はナラカエクスプレスで環菜を助けに行っている最中の出来事です。
ですのでそちらのシナリオで得た情報などをこちらに持ち込むことは出来ません。ご了承ください。

【コミュニティサイト「cnps-town」について】
通称「センピースタウン」と呼ばれるこのコミュニティサイトは、現実世界とほぼ同じつくりの街をフィールドに、
作成したアバターでログインし仮想空間の住人となることで、ショッピングや交流が出来るサイトです。
街の掲示板で情報交換なども出来るほか、シアターと呼ばれる場所では動画・音楽の視聴も楽しめます。
また、街には蒼空学園や空京大学などのアイコンがあり、現実世界のそれらと提携を結んでいるため、
アバターがそこに入ると買い物や施設見学などが可能です。

【時系列について】
タウンでバグが起きた日、アンデッド急襲の日、選挙の投票が行われた日、タガザの講演会が行われる日、
これらはすべて同じ日に起こっています。アクション投稿の際はその点にご注意ください。
LCを参加させる場合は、LC（MC）が監禁されている場合を除き基本的に同じ場所で行動するようお願いします。
なお、選挙についてですが、新生徒会の会長・副会長になりたい方は掲示板で立候補し、演説コメントをしてください。
参加者の方々は、それを見てアクション内で「○○に投票」と最後に記入してください。記入なしは無効票となります。
リアクション内で誰が誰に投票したかは公開しませんが、その得票数により役職が決定します。
なお、「掲示板での演説＝この投票日の数日前に行われたこと」と捉えるとイメージしやすいと思われます。
アクションで投票に関することは書く必要はありませんが、
立候補者が「投票当日に演説しているアクションをしたい」と思いそれを書くことは構いません。
（ただしもちろん投票はアクション投稿時に行われるため得票数には影響せず、キャラロールのための演説となります）

【急襲したアンデッドについて】
数は多い分、一体一体のパワーはそんなに強くありません。
ちょっとふざけた攻撃でも倒せるかもしれません。倒し方は発想の数だけあります。
ただ、５００体の中にほんの少数、アンデッド以外のちょっと強めなモンスターも紛れていますのでご注意ください。

今回もシリアス要素強めでいきたいと思っていますが、
もちろんコメディーアクションが集まれば多少そちらの方に傾くこともありえます。

・涼司と共にセンピースタウンでバグを直す

・学園を襲うアンデッドを迎え撃つ

・愛美と共にタガザの元へ行く

・アクリトの元を訪ねる

・タガザの講演会を見に行く