蒼空学園

――私は、諦めない！


　２０２１年５月。
　ウクライナでの独立武装勢力対策軍「Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．（フラッグ）」との共闘、及びシャンバラでの学校勢力共同による鏖殺寺院制圧戦から二ヶ月が過ぎた。
　シミュレーター訓練を通じて、Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．のイコン、クルキアータは恐るべき強さを誇ることが、天御柱学院の生徒達にとっても明らかとなった。
　パイロットの技量は上がっているものの、学院は第一世代機の限界を感じている。
　現存する次世代機は、未だ危険性をはらむ第一．五世代機『レイヴン』、そして『ナイチンゲール』を元に造られた防御特化の第二世代機『ブルースロート』
　そして間もなく、第二世代機開発プロジェクトによる新たな機体が完成しようとしている。

　しかしこの二ヶ月の間、海京及び天御柱学院では不穏な事件が頻発。まるで大きな何かが起こる前兆のように。
　
　そしてシャンバラの最後の女王器、ゾディアックが世界を消滅させんと地球へと降り立った。
　戦いの末、ゾディアックは停止。危機は去ったかに思われたが――

「世界同時配信！？」
　ゾディアックが停止して間もなく、ヴァチカンから世界に向けてそれは行われました。

『――我々Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．は地球を脅かしたシャンバラ王国に対し、軍事的制裁を行うことをここに宣言する！』

　マヌエル枢機卿による宣戦布告の映像は、同じ地球上に存在する海京に、リアルタイムで流れています。
「やはりそうきたか……」
　パイロット科長イズミ・サトーは画面を睨みました。
　ゾディアックが地球に降り立ったとき、彼女が危惧していたのはＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．の存在でした。
　欧州同時多発テロ直後の聖戦宣言により、Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．は正当な理由さえあれば、いつでもシャンバラ王国に宣戦布告出来る状態にありました。
　そしてゾディアックの力が、世界を脅かすものだというのは事実です。また、それが原因で地球上で激しい戦いが繰り広げられたことも。
「交渉は難しそうだな。こっちは前もって釘を刺されてるんだ。俺達だけじゃどうしようもなかったとはいえ、結果的にパラミタでの争いを地球に持ち込んでしまった」
　教官長五月田　真治が声を漏らします。
「パラミタと地球を分断出来ると知れば、Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．はゾディアックを支援するだろう。が、シャンバラ政府がそれを望むようには思えない。どちらにせよ、戦いは避けられそうにない」
　Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．の目的は「地球の平和」です。
　地球とパラミタを分断し元の世界に戻すことでそれを成せるなら、そちらを支持することでしょう。
「五月田、パイロット科所属の教官、生徒で出撃可能な者を全員招集してくれ」
　科長の指示により、天沼矛のイコンベースに関係者が集められました。



「第二世代機……完成したのか？」
　辻永　翔（つじなが・しょう）がその機体を見上げて、息を飲みました。
「開発は難航していると聞いていたが、どうやら実戦に投入出来る水準には達したようだ」
　アリサ・ダリン（ありさ・だりん）が翔を見遣ります。
　シャンバラ王国全学校向けの次世代機「プラヴァー」は量産体制も確立され、配備間近ですが、天御柱学院の第二世代機はようやく試作機が完成した、といった状況でした。
「開発コード名：Ｅａｇｌｅｔ Ｎｅｘｔ。正式名称はまだ決まってないみたいだ」
「この機体なら、性能をフルに引き出せればＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．のクルキアータさえも圧倒出来るはずだ。スペック上ではな」
　とはいえ、そのためには高い操縦技量が必要なようです。

「これが、例のトリニティ・システムを積んだ聖像ね」
　ニュクス・ナイチンゲール（にゅくす・ないちんげーる）がその機体へと視線を移しました。
「あなた達がこの子に乗るのかしら？」
　翔達が静かに頷きます。
「このまま本格的に戦争に突入するか、それとも停戦協定が結ばれるかはまだ分からない。だけど、Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．を止められるのは、天御柱学院のイコン部隊だけだ」
　だから、足止めのためだけでもいい。今はこの新しい力が必要だと翔が告げました。
「今、こっちに向かってるのはＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．第一部隊。ウクライナで一緒に戦ったっていう人達と同じみたい」
　ヴェロニカ・シュルツ（べろにか・しゅるつ）がそれを伝えます。
　そして、イコンハンガーの中にある白金の【ナイチンゲール】を見つめ、呟きました。

「私は、確かめたい――『今の』Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．を」

　学院のみんなを守る。その想いとともに、今のＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．の姿をこの目で確かめたい。
　かつての『Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．』を知る彼女は、そう心に決めました。



　その頃、聖カテリーナアカデミーでは。
『ついに言っちゃったわね、マヌエル君。まあ、あなたにとって、これほどまでに都合のいい状況はないでしょうけれど』
　校長のシスター・エルザは、ヴァチカンのマヌエル枢機卿と連絡を取っていました。
『既に、先発としてダリアちゃん達の第一部隊が出たわよ。第二部隊に関しては坊やに指揮権があるんだから、好きにすればいいでしょうけど……第三部隊は出せない。
　アカデミーの生徒を戦わせるには、まだ早いわ。もっとも、状況次第ではやむを得ないでしょうけど。現在の戦力を考えれば、第一部隊だけでも十分なくらいじゃないかしら？』
　話を終えると、エルザは白いドレスの女性と目を合わせました。
「はっきり言って、ダリアちゃん達だけで十分だと思うんだけど、『万が一』ってことがあるかもしれないわ。何かあったら第一部隊を助けてあげて、メアリー――いえ、ミス・アンブレラ」
　女性は仮面を被り、校長室を後にしました。

「ふふ、何やら面白いことになりそうね」



「クク、反応ありダ。『暴君』は太平洋に向かっていル」
　ヴィクター・ウェストは微笑を浮かべました。
　二ヶ月前に消息不明となった青いイコン――【サタン】の出現を確認したのです。
「カミロ・ベックマン、メニエス・レイン（めにえす・れいん）。機体の調整は完了しタ。すぐにでも出撃は可能ダ」
　カミロの【ベルゼブブ】、メニエスの【ルシファー】はＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．の部隊長専用機『七つの大罪』のシリーズとして造られたものです。
「最優先は『暴君』の破壊ダ。あれはもう止められなイ、回収は諦めるとしよウ」
　その残念そうな言葉とは裏腹に、ヴィクターの顔からは不気味な笑みがこぼれたままでした。


　――太平洋上空。
「なあ、相棒。楽しいことが起こってるぜ？」
　『暴君』と呼ばれる青いイコンのパイロットはＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．と天御柱学院との戦いの場へと向かっていました。

「さあ、オレが全部まとめてぶっ壊してやるよ。はは、あはははは！！！」


※マスターコメントの注意事項をよくお読み下さい

　識上　蒼です。
　お待たせ致しました、天御柱学院キャンペーンシナリオの第二部「転生編」の第３回をお届けします。
　転生編は、
　「聖戦のオラトリオ　～転生～」（通称『無印』。イコン参加可。イコン搭乗前提のバトルサイド。天学の教官達、Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．関連ＮＰＣが登場予定）
　「聖戦のオラトリオ　～転生～　―Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ―」（通称『Ａｐ』、イコン参加不可。研究・開発・超能力サイド。ホワイトスノー博士ら極東新大陸研究所組、風間、ノヴァ等が登場予定）
　の２分割構成になっており、こちらの『無印』第３回に参加された方は７月上旬公開予定の『Ａｐｏｃａｌｙｐｓｅ』第３回にはご参加頂けません。ご了承下さい。

　非常にシリアスな要素を含んでおり、場合によっては辛い展開（俗に言う鬱展開）が待ち受けることになるかもしれません。
　参加される場合、その点も覚悟の上でお願いいたします。

【アクション上の注意】
　基本的にイコン搭乗が前提となります。例外は「機体整備」及び下記に示すものとなります。
・前回の無印、またはＡｐにてＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．および聖アカデミーとの接触フラグを立てたＰＣ、既にＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．やアカデミーで活動しているＰＣはその限りではありません。
　またこの二つの組織やカミロ関連のアクションを掛ける場合、Ａｐ第３回ではなくこちら無印第３回となります。ご了承下さい。（アクションの内容に関わらず、アカデミーが直接登場するのはこちら無印のみとなります）

　他、イコン開発や強化人間等のＡｐ関連のアクションをかけられても、こちらでは採用出来ませんのでご了承ください。
　また、ダブルアクションにはご注意下さい。

　なお、ゾディアックおよびマヌエル枢機卿に関しては、６月２５日発表予定のグランドシナリオ「戦乱の絆　第二部　第五回」の方で扱われます。こちらでは登場しませんので、併せてご了承下さい。

■イコンについて
　他校生に関しては、所有されているイコンもしくは第二世代機「プラヴァー」を選択出来ます。
　主な仕様としては、
・デフォルトで飛行可能
・銃剣付ビームアサルトライフルが基本装備
・現行の天学イコンより若干小型化されている（Ｓサイズまではいかない）
・イーグリットより装甲が厚く、クェイルより機動力がある。
・パイロットサポートシステムが実装
・下記の装備パックから武装を選択可（後々増える予定）

１．機動型（追加ブースター、滑空翼、射出型ワイヤー×２、実体剣）
２．重火力型（大型ビームキャノン×２、エネルギーカートリッジ、プラズマキャノン）
３．マジックセット（マジックカノン×２、マジックソード、マジックシールド）

　天学生は所持イコンの他にイーグリット、コームラントが選択可能です。その場合の追加オプションは以下の通りです（どちらの機体でも使用可。ビーム・実弾とあるものはどちらか一方を選択）

・ビームシールド
・アサルトライフル（ビーム・実弾）
・実体剣
・汎用機関銃（ビーム式・実弾式）
・ビームランス
・長距離射程スナイパーライフル（ビーム・実弾）
・射出型ワイヤー（拘束可）

※新規武装
・銃剣付きアサルトライフル（ビーム・実弾）

　ただし、所持イコンで参加した場合にオプションを使いたい場合は、装備欄を追加オプション分空けた状態にして下さい。
　武装（ウェポン）は最大四点までとなります。
　所持イコンではなく学院イコンを使う場合は、デフォルト装備＋オプション二点となります。
　イーグリットのデフォルト武装はビームライフルとビームサーベル。
　コームラントのデフォルト武装は大型ビームキャノンとミサイルポッド。
　となっております（ミサイルに関してはオラトリオ第一部からの流れで搭載されてます）

　また今回も、レイヴンに搭乗可能です。
「レイヴンってなんぞ？」って方に一言で表すと、超能力者用のイコンです。
　シンクロ率は基本的に３０％で固定されています。
　しかし、称号『完全適合体候補』を所持しているＬＣを搭乗させた場合、リミッターは解除され上限のない状態になります。
　また、武装はベースになっている機体のデフォルト武装＋上記オプション二点まで選択可能です。
　特徴として、サイコキネシスなどの超能力スキルを一部機体に搭乗したまま使用可能というのがあります（どのパーセンテージでどの程度まで使えるかの目安は、前回までのリアクションを参照）

　さらに、天学生は第二世代機にも搭乗可能です。
　上記のプラヴァー以外に、前回のブルースロートも選択出来ます（仕様については無印第２回のガイドを参照）
　そして今回、試作機である「イーグリット・ネクスト」に乗ることも出来ます（あくまで開発コード名であり、正式名称はまだ決まっていません）
　現時点での仕様は、
・新式プラズマライフル（ライフルモード、ショットガンモードで切り替え可）
・新式ビームサーベル
・トリニティ・システム
→加工した浮遊機晶石による新型フロートユニット、通常の機晶石を利用した補助動力、そして機体の動力炉と三つの機晶石が使用されたシステム。
・背部にメインスラスター、腰部、脚部に補助スラスターを搭載
・エナジーウィング（パイロット次第では最高速度のまま安定飛行を維持することも可能）
　また、ブルースロートの機体干渉、エネルギーシールド形成が合わさることで、エナジーウィングがそのまま強固な盾ともなる。
・最高速度はＭ２．０。これは現在のイコンの構造における限界速度。

　ただし、乗りこなすには最低でもメインパイロットのパイロットランク１６以上相当の操縦技量が必要となります（翔やアリサは登録上ではランク１０ですが、実際はプラス１０～１５くらいはあります）

※所有されているイコン以外のイコン（プラヴァー、イーグリット・ネクスト等）に搭乗する場合も、イコンを設定して下さい。
　その場合、搭乗するパイロットの組み合わせで設定して頂きますようお願いいたします。

※天学第二世代機の名前を募集致します。何かアイディアがありましたら、アクション欄に「次世代機：（名称）」とお書き添え下さい。


　これらに加えて、天学生は『覚醒』が使用可能です。ロボットミッションのアクティブアビリティのようなものです。使用する事で格段に性能が向上しますが、その分上手くコントロールするのが難しくなります。
　非常に強力ですが、覚醒状態に移行すると稼働時間が約３０分～４０分程度となります（エネルギーの消費が早くなるため）

■稼動時間
　イコンの稼動時間の目安としては、
　・通常状態で約２４時間程度
　・戦闘時で約２～３時間程度

※ポータラカでの技術研修により、飛躍的に延びました。

■Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ（フラッグ）
　最初は太平洋上での戦いから始まることになります。
　今回のＦ．Ｒ．Ａ．Ｇ．第一部隊の戦力は、
　クルキアータ（一般機）×２４　アサルトライフル、シールド装備
　クルキアータ（指揮官機）×５　ランス、シールド装備
　『七つの大罪』【マモン】　実体剣×２、シールド装備

　の計三十機となります。

　一見すると少ないようですが、一般機のパイロットで天学の教官と同等以上の実力はあります。相当厳しい戦いになることでしょう。

■七つの大罪
　クルキアータの部隊長専用カスタム機です。
　現在確認されているのは、
　【ルシファー】パイロット：メニエス・レイン　魔術回路搭載機
　【ベルゼブブ】パイロット：カミロ・ベックマン　不明
　【サタン】パイロット：０８号　超能力特化機
　【マモン】パイロット：ダリア・エルナージ　実体剣×２、シールド装備
　【アスモデウス】パイロット：ミス・アンブレラ　レイピア、シールド装備

　の五機です。
　が、いずれもまだその真の強さはベールに包まれたままです。
　そして、今回この五機が全て集結します。


　それでは今回も宜しくお願い致します。


2011年6月24日：追記
パイロットランク、所有されているイコン以外のイコンに搭乗する場合の補足を追記しました。

・Ｆ．Ｒ．Ａ．Ｇ．第一部隊と戦う

・第二世代機に搭乗して戦う。

・『暴君』を止める。