蒼空学園

　御神楽　環菜（みかぐら・かんな）のもとに、一つのビデオレターが届けられました。その内容はある人物が、環菜に資金提供を呼びかけるものでした。

　わざと画質を落としたような映像。
　荒野に無数の金属製のポールが立てられ、その先端には、赤い旗が風に揺れています。
　画面の中心には、一人の青年が立っています。彼の閉じたままの右目の上に、真新しい傷があるのが見て取れます。
　青年は、真新しい拘束服を着せられています。フレームの外から、黒髪の女性が現れます。彼女は青年に近づき、手を触れます。
　すると、青年の身体は二回り以上も大きくなり、真新しい拘束服は盛り上がった筋肉の圧力に耐えきれず内側から弾け飛びます。
　返り血に濡れたようなその姿は、伝説のドージェ・カイラスそのものです。
　女性は青年の身体の変異を見届けると、フレームの外へと去っていきます。女生徒入れ替わるように、六人のオークの子供たちが偽ドージェに駆け寄ります。
　オークの子供たちは、みな手に粘土のようなものを持っています。オークの子供は、偽ドージェのすぐそばまで来ると、それを頭の上に掲げます。
　次の瞬間、偽ドージェの目の前で、オークの子供たちは爆発します。偽ドージェは、まるでオークの子供たちを抱き留めようとするかのような姿勢のまま、爆発に巻き込まれます。
　爆煙が風邪によって吹き払われたあとには、オークの子供達だった炭化した肉片と、高温に晒されアスファルトのように固まった返り血に染まった偽ドージェが写っていました。

　画面に大きくノイズが走り、場面が切り替わります。今度は金髪碧眼の若い男と、先ほどの女性が写っています。
「はーい、というワケで！　波羅蜜多実業高等学校改造科教諭のジョシュア　クロールです。人類の発展のため、ドージェ・カイラスをエミュレートしているわけですけれどもっ!」
　金髪碧眼の男ジョシュア　クロールは、かなりのオーバーアクションで話し始めます。
「エミュレーションドージェの性能試験に協力して頂きたい、というわけでして。奴と来たら、もう五回もこうしてオークの人間爆弾をけしかけてもいっこうに学習しないのですよ……まったく、これだから劣等は……やや、失敬失敬！　選良たる我々に協力できるビッグチャンスです！　ここで我々に恩を売っておくと、いろいろとランクアップできるかも知れません！」
　男は画面の向こうで手を振ります。
「環菜さん、あなたはアーリア人ぽいので特別に我々に資金提供する機会さえ与えます。振込先はコチラ！」
　男はどこからかフリップを取り出します。そこには、タックスヘイブンとして知られるとある国の銀行の口座番号が書かれています。
　男の傍らに立つ女性は、最後まで瞬きもせずカメラを見つめていました。

　ルミーナ・レバレッジ（るみーな・ればれっじ）は、低く笑う環菜を心配そうに見つめています。
「……精神的安定を得られるというのは、十分なメリットね？」
「はい――」
　ルミーナは、静かに頷く。
「わたしは経済面で支援するつもりはないし――あなたもやる気のようね」
　環菜の視線の先には、純白の頭巾をキリリと締めハタキを背負った彩祢　ひびき（あやね・ひびき）が立っています。
　ひびきは、先日のファーストキス泥棒事件のあとから、自発的にボランティアとして学園を掃除してまわっているのです。たまたま理事長室の掃除をしていて、ビデオレターの上映に居合わせたようです。
「子供をあんな風にするなんて絶対に許せないよ！　ボクの純潔が悪を許すなって叫んでる！」
　ハタキを構えて宣言するひびきですが、本当に大丈夫でしょうか。
　ルミーナは、学生達の中から協力者を募ることを検討し始めるのでした。

溝尾富田レイディオです。
いやはや、悪い奴もいたものです。
ジョシュア　クロールの居場所ですが、送られてきたビデオレターに写り込んでいた背景から、ルミーナが候補地を割り出しました。
男は半地下にある遺跡を改造して使用しているようです。遺跡にはトラップや、キメラ、オークの子供達などがいるそうです。
オークの子供達は、知らない人間に対しては抱きついてきて自爆しようとします。そうするように生まれた時から教育されているようです。
爆発物に関する知識と、爆弾だけを切断する何らかの方法があれば、自爆攻撃は封じることが出来るかも知れません。
遺跡の中に、偽ドージェとして改造（？）された青年もいるようです。

蒼空学園関係者は、彩祢ひびきから話を聞いた、あるいは自発的に協力を申し出たなどの理由で参加して頂けると思います。
それ以外の学園は、噂を仕入れたとか、友達の友達から聞いた、などの理由付で参加して頂ければと思います。

・ジョシュア　クロールを殴りに行く

・偽ドージェを救出

・パラ実改造科のさまざまな技術に関わりたい