蒼空学園

　シャンバラの北東部、エリュシオンの南西部に位置する国、カナン。

　約束の地といわれるこの国は「世界樹セフィロトの化身であり豊穣と戦の女神イナンナ」とそれを補佐する神官の力により、国は緑にあふれる豊かな国、でした。


　砂に埋もれた岬の先で、この国の領主であるドン・マルドゥークは10歳前後の褐色の肌の少女に一礼をしました。
「それでは、行って参ります」
「ねぇマルドゥーク、やっぱり……」
　少女が歩み寄るのをマルドゥークは首を振って制して、
「良いのです。妻も……娘もきっと分かってくれます」
　マルドゥークの恰幅の良い体が乗り込むと、パラミタラクダの足はズッと砂に沈み込みました。
「東西シャンバラへの応援要請は密使にて通達済みです。カナンの現状を話せばきっと……いや、何としても協力して貰えるよう説得します」
「でも……」
「女神様」
　彼は真っ直ぐに褐色の肌の少女の瞳を見つめると、
「この国を、救いましょう」
　彼はパラミタの地を目指して一人、歩んで行きました。

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　―――蒼空学園、校長室。

一匹狼の女空賊フリューネ・ロスヴァイセ（ふりゅーね・ろすう゛ぁいせ）は山葉　涼司（やまは・りょうじ）、マルドゥークと共に机上に広げられた地図を覗いていましたが、携帯の振動を感じて、顔を上げました。
「はい」
　それはフリューネの5000年前の先祖、ユーフォリア・ロスヴァイセが古代戦艦ルミナスヴァルキリーの出向準備が整ったことを報告するものでした。
　征服王ネルガルからカナンを奪還するべく、マルドゥークはシャンバラの各校を回り、有志を募りました。フリューネはマルドゥークに協力する事に加えて、彼女が所有する戦艦を提供すると名乗り出たのでした。
「ルミナスヴァルキリーの準備が整ったみたい。いつでも行けるわ」
「おっ、何だ、だいぶ早かったな」
　山葉は室内の壁時計を見上げました。時刻は１６時、予定時刻より２時間をさしています
「集まりはどうだ？　各校揃ってるのか？」
「百合園女学院がまだ。他は揃ってるみたいだけど」
「ん、まぁ、まだ時間もあるし、待ってれば―――」
「仕方がないわね、置いてゆきましょう」
「おぃおぃ焦るなって、バラで来る奴も居るかもしれねぇんだ。時間まで待つべきだろ」
「そうして頂けると助かりますわ」
　机上のモニター越しに、百合園女学院のラズィーヤ・ヴァイシャリー（らずぃーや・う゛ぁいしゃりー）が冷笑を浮かべて言いました。「我が一団も直に到着するでしょう。それでも待ってはいただけないでしょうか」
「到着を待つに決まってんだろ、テメェで戦力を落とすようなマネはしねぇよ。フリューネ、待つんだ、焦るな」
「………………」
　船の様子を見てくる、そう言ってフリューネは部屋を出てゆきました。久々の大仕事に気負っているのでしょうか。ギラギラと揺れる彼女の瞳は、すでに戦うべき相手を見据えているようでした。その姿に、
「何とも頼もしい事か」
　マルドゥークは心押される思いがしました。
　今回の敵は「一国」。イナンナの力を手に入れた征服王ネルガルに、彼に従う神官たち、更にはカナンの各地に放たれたモンスターとも戦うことになるでしょう。
　東西シャンバラの協力を得られたこと、そしてフリューネの様な生徒が多く集まってくれているとなれば。カナンの地で待つイナンナにも、また今もモンスター達とのゲリラ戦を繰り広げている民たちにも良い報告ができることでしょう。
「待っていてください、女神様」
　マルドゥークは改めてカナン奪回を心に誓うのでした。

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「何？　マルドゥークがシャンバラに？」
　カナンの中央、神聖都キシュの宮内にて、征服王ネルガルは黒水晶に目を剥きました。
　水晶に映る人影は、怯むことなく報告を続けます。マルドゥークが蒼空学園を訪れた事、東西シャンバラがカナン奪還の協力要請に応じた事、更にはフリューネのルミナスヴァルキリーにて西カナンの岬を目指している事も含まれていました。
「マルドゥーク……。奴のところは妻の他に娘も捕えてあったな。見せしめに砕いてくれようか」
　ネルガルが部下を呼びつけようとした時、背後でヘルハウンドの咆哮が幾つもに上がりました。
「何じゃ、お前等も奴の裏切りが許せぬか」
　頭上では首輪を付けられたワイバーンが、応えるように翼を羽ばたかせて寄声を上げています。
「よかろう、共に駄民をついばみに行くとするか。向かい来るシャンバラの者共々にのう」
　裂けるように口端を上げると、蔑むように黒水晶を見下ろしたのでした。

　こんにちは。ゲームマスターの古戝正規です。

　今作よりペリフェラルエピソード【カナン再生記】がスタート致します。
　これまで多くを語られることのなかったカナン地方を舞台としたシナリオになります。

　カナンは、西にシャンバラ、北にコンロン、東にエリュシオンと隣接する国です。
　豊穣と戦の女神イナンナが治める緑あふれる豊かな国でした。しかし神官ネルガルの裏切りが全てを変えてしまいました。
　イナンナを封印してその力を我がものにしてしたネルガルは、自らを征服王と名乗りカナンを支配すると、女神の力やモンスターを操って各地の弾圧を行ったのです。
　カナン各地を統治する諸侯達も妻子や姉妹を人質に取られてしまった為に、ネルガルに従うしかありませんでした。
　そんな中、シャンバラ王国に隣接している西カナン・ウヌグの領主、ドン・マルドゥークが征服王を裏切り、東西シャンバラ王国に助けを求めてきたことから物語が始まります。
　（ちなみに、ウヌグの地は以前に『キャラクタークエスト「再生の荒野」』の舞台として登場しましたが、今回は物語の始まりの地となります）

　西カナンの岬へは、フリューネの「空飛ぶ古代戦艦ルミナスヴァルキリー」に乗船して向かいます。大人数での移動のリスクを考え、２００名強を乗せることが出来る巨大戦艦で一度に上陸を済ませることが目的です。個人で上陸することも可能ですが、イコンで向かって即バレなどというお約束は避けていただければと思います。
　　
　また、後程【カナン再生記】の特設ページが開設される予定です。
　カナンの設定や現状の説明を始め、キャラクタークエストや掲示板と連動して、再生してゆくカナンの様子を楽しめる企画もご用意しております。マスターシナリオと共にお楽しみいただければと思います。

　既存のＮＰＣに加え、新規ＮＰＣも多数登場致します。
　新たな仲間たちと共に、みなさまの力でカナンを再生の路を作ってゆきましょう。

・ネルガル軍と戦う

・西カナンの現状確認をする

・戦艦の中で待機する