蒼空学園

「カンバス・ウォーカーが消えた？　空京駅で騒いでた奴！？　ちっ、そっちもかよ……ああ、空京大学の方もなんだっ！」

　空京中に散っている協力者達から、次々に寄せられる報告に、携帯電話を片手に皇彼方（はなぶさ・かなた）はバリバリと頭をかきむしりました。

　ＴＲＲＲＲＲＲＲＲＲＲ！

　彼方の目の前で、さらに別の携帯電話が鳴ります。

「はい、こちら彼方！　カンバス……ストリートの？　『取り押さえた』の間違いじゃないんだな？　了解……だけど……これで、三人とも消えちまったってことか？」
　彼方は眉根に皺を寄せて首を傾げました。

　そこへ――

「彼方！」

　こちらもやはり、複数の携帯電話を抱えたテティス・レジャ（ててぃす・れじゃ）が慌てた声をかけました。

「カンバス・ウォーカーさん、見つかったわ！」
「どこだ？」
「……建設中の宮殿の近く！　官庁街予定地……」
「なんだって！？」

　たった一人、その官庁街予定地に佇んだカンバス・ウォーカーは確認をするように自分の身体を眺め回しました。
「かき集めてやっと一人分……。まあもともと絵は一枚だし構わないけど、お人好しが多かったおかげで、『酔いどれアウグスト』の想いはだいぶ削られたみたいね」
　ロングの黒髪に、着ているものは全身黒一色という少女。
　空京大学にいたカンバス・ウォーカーに一番似ているでしょうか。
　しかし、表情は、三人のカンバス・ウォーカーの特徴を合わせたように絶えず変化し、どこかとらえどころがありません。
「とは言えわたしはそんな『想い』が引き起こす『現象』。……じゃあ、どこまでできるか……せいぜい世界を否定しなくちゃ」

　巨大なペインティングナイフを担ぎ、カンバス・ウォーカーはその口に自嘲的な笑みを浮かべました。

「『酔いどれアウグスト』の想い……厄介な想いを残してくれたものね。それから、わたしを呼び出してくれた天秤座のお嬢さんもね」

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「じゃ、じゃあ師匠の絵からその……『カンバス・ウォーカー』というのが現れて……空京が騒ぎになっているんですか！？」

　カンバス・ウォーカー出現のきっかけとなった絵を描いたという「酔いどれアウグスト」。その弟子であるナディアという少女は、そう言ってメガネの奥の目を見開きました。

「死後、評価が上がるというならまだしもこれじゃ師匠、もっと評判落としてしまいます！　確かに師匠はこの世界を否定するような絵ばかり遺していますけれど……わかりました！　わたしも絵を探しに行きます！」

　勢い込むナディア。

「それは確かにありがたいんだけど、君も絵描きなんだよね？　だったら、なんか絵描きならではの方法で、カンバス・ウォーカーを止められないかな？　それこそ……絵が見つかったら少し絵の内容を描きかえてみるとか」

　そんなナディアに絵の行方を追っていた一行から質問があがりました。

「む、無理です！　師匠の絵に筆を加えるなんて！　それに、わたしなんて！　え、絵は好きですけれど……わたしには師匠のような才能なんてありません！　少しは、あったなら、こんなことにはならなかったのかもしれませんが……」
　ナディアはスッと顔を伏せました。　

　こちらも何やら、少し事情がありそうです。

　空京に出現したカンバス・ウォーカー騒動の後編です。
　今回参加していただく皆さんには、大変動の続くシャンバラに余波のように起こったこの騒ぎの解決を目指していただければと思います。
　前編で出現した三人のカンバス・ウォーカーは一人にまとまり、今度は空京の中心部に向かったようです。
　カンバス・ウォーカー出現のきっかけとなった「酔いどれアウグスト」の作品は空京の街に持ち出されて、依然行方知れず。
　そしてアウグストの弟子だというナディアという少女にも、なにやら事情はありそうですが……。
　カンバス・ウォーカーあるいはナディアに絡んでの、はたまたひたすら事件解決を目指しての、皆さんのバラエティに富んだアクションをお待ちしています！

・カンバス・ウォーカーを止める

・官庁街で起こりそうな騒ぎを止める

・アウグストが描いた絵を探しに行く

・ナディアに話を聞いてみる