ヒラニプラには、多くの大型工場が存在しています。
そのひとつに天井がなく、異様なまでに入り組んでいる奇妙な建物がありました。
上空から見れば巨大なバームクーヘンのような造りをしており、
内部は迷路のように……というより迷路そのものの構造をしていました。
一体なんの工場かという話ですが。なにかしらの機材が存在する部屋は両手で数えるほどしかなく。
本当にただ迷路としての建物としか思えず。実際それはここにいる住人の趣味が強く出ているのでした。
「さて。ゴーレムの準備は整ったな」
「博士、うち思うんやけど」
そんな迷路工場の一室で、
くたびれた白衣を着た青年と、なぜかメイド服を着た機晶姫の娘がいて。
ふたりの目の前に、赤青黄緑とやけにカラフルな人型ゴーレムが多数置かれていました。
「なんでわざわざゴーレムなんか使て、こんなゲームやろうとするん? イロイロ機能までプラスして」
「いいじゃないか。私はゴーレムの良さをアピールしたいんだよ」
博士と呼ばれた人物の思惑は、生徒達の戦闘訓練になれば……という建て前で。
昨今、すっかり需要の減ったゴーレムという存在を今一度持ち直そうということなのでした。
「そもそも誰かに操縦されないと動けないイコンとかより、ゴーレムのほうが凄いと思うんだがな」
「でもやっぱゴーレムって、鈍重で使い勝手も悪いし。すぐやられるイメージやん」
「む。私の改造ゴーレムは、そう簡単には倒せない耐久性がウリだぞ」
「でもかなーり条件つきになってるんやけど」
助手の発言は聞かない振をりして、博士は鼻歌交じりになり。
「さ、さて。優勝の賞品は、なにか奇抜な称号でも与えるとしようかな」
「称号? 協力して勝ち取るにしてはなんか疑問がある賞品やないですか?」
「称号を笑う者は称号に泣くぜ、助手」
「はぁ」
「詳しいルールは、ここに書いてある。適当に各学校に送っといてくれ」
「はいはい」
文句をいいながら助手が立ち去っていったのを横目に見つつ、
博士はゴーレムの『核』となる、野球ボール大の鉄球を掌でもてあそびながらつぶやきました。
「さあ。皆様がた。存分にゲームを楽しんでくれ」