クリスマスが終わり、もういくつ寝たらやってきたましたお正月。
空京に建立されている空京神社は、初詣に訪れた多くの人たちで賑わっています。
境内には出店や屋台がズラリと並び、パラミタや地球からやってきた多くの参拝客たちは始まったばかりの新しい年を楽しく過していました。
そんな中、不機嫌そうな目つきをしたひとりのゆる族がいます。
彼の名前はもっくん。鋭い目つきは生まれつき(?)です。
可愛いマスコットを日夜目指している彼なのですが、そんな目つきの鋭さと熊のような外見をしているため子供たちには怖がられる日々。
そんなわけで、マスコットとしての仕事のオファーはあまりありません。
神にもすがる思いでここにやってきたもっくんは、お金を賽銭箱に投げ入れて強く願います。
(今年こそは仕事が上手くいきますように! 子供に好かれますように! あと彼女が出来ますように! それと持病の腰痛が治りますように! あとは、ええーっと……)
「おまえ、バカだろ?」
と、もっくんの心の声を聞いたかのように誰かが言いました。
驚いたもっくんは周りを見ますが自分に話しかけている人は誰もいません。首をかしげながらお参りを終え、今度は新年最初の運試し。
もっくんは気合十分でおみくじを引きました。
(よし、どうだ!)
勢いよくおみくじを開けるとそこにはなんと大凶の文字。もっくんは口をあんぐりとあけてその場で固まってしまいました。
そんなもっくんの横にカップルがやってきておみくじを引きました。彼氏の方が大吉を引いたらしく二人はとても喜んでいます。
(おっ、おのれぇ――リア充のくせに! 運くらい悪くなれよ!!)
「おまえ、バカだし可哀想な奴だな」
と、またもやもっくんの心の声に応じる声。
すごい形相でもっくんは辺りを見ますが、やはり誰もいません。
「こら、うつけ者! どこを見ておる!」
「いてッ!?」
脚に激痛が走りもっくんが膝を折ると、目の前に魔女の姿をしたちっこい女の子がひとり立っているのがようやくわかりました。
「くそっ、なにすんだよぉ……!」
「なぁーに、おまえのその卑屈な心にちと用があっての」
そのちっこい魔女はそういって”ミストラル・アリエティ”と名乗るともっくんにあるモノを差し出しました。
「なんだよ、これ?」
「見てわからんのか? これは甘酒だ」
「甘酒?」
「そう、しかも普通とは違う特製の甘酒だ。ちなみにいま流行のノンアルコールだぞ! さあ、そうとわかれば遠慮はいらんだろ? ぐっと飲め!」
「いや、いまはそういう気分じゃ……」
「いいから飲まんかッ!!」
「フゴーッ!?」
アリエティに無理矢理甘酒を飲まされたもっくん。
少しだけ変な味がしたので眉をひそめます。
「おい、なんかこの甘酒変な味がぁ――って、あれッ!?」
と、もっくんの身体に異変が起きました。
ノンアルコールの甘酒を飲まされたはずなのになぜか視界がグルグルと回りだしたのです。
そしてその酔いが回っていくのに合わせて、もっくんの身体は何倍にも膨れ上がっていきます。
「チクショーっ! 俺の何が悪いってんだ! べらんべーッ!!」
アリエティの魔法の甘酒を飲んでなぜか巨大化し、完全に酔っ払ってしまったもっくん。
日頃心の奥底に溜め込んでいた色々な感情を爆発させ、見境なく暴れだしました。
こうなると神社は大パニック。楽しい雰囲気は一変してしまいます。
「ええっ! こんなはずではなかったのに!?」
アリエティは青い顔でもっくんを見上げます。
そしてキョロキョロと周りを見ると、持っていた魔法の甘酒を本物の甘酒が置いてある場所にそっと置き、逃げ惑う人に紛れて自分もどこに逃げていきます。
さあ、みなさん。巨大酔っ払いゆる族と化したもっくんの暴走をなんとか止めて、楽しいお正月を取り戻してください!